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スマホ決済はもう時代遅れ!?顏認証の時代へ


中国版Twitter“微博(ウェイボー)”で話題になっているホット検索ワード“热搜(rè sōu)”をもとに、「中国の今」を紹介していきます。今回のホット検索ワードは「顏認証」です。

日本は昨年の消費税増税を機にキャッシュレス化へと大きく動き出し、スマホ決済が広く普及しつつあります。その一方で今、中国には買い物にスマホすらいらなくなる時代が来ようとしています。

その鍵を握るのは「顏認証」による決済です。


中国で広がる顏認証

最近中国のコンビニの会計カウンターでは、このようなタブレット端末をよく目にします。

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(中国のセブンイレブンに置かれた顔認証端末  搜狐より)

このタブレットには顔認証用のカメラが付いており、このカメラが利用者の顔を認識することでその人の決済システムにアクセスし、支払いができるという仕組みです。現在のQRコードによる決済よりもさらに手間が省け、すばやく決済をすることができます。

実はコンビニだけでなく、スーパーやファストフード店でも顏認証決済は始まっています。このため、私の場合中国の大型スーパーやファストフード店に行って列に並ぶということは滅多にありません。

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(スーパーにある顏認証精算機   无水晚报より)


江蘇省の江蘇省大学にある食堂でも、昨年から顏認証による決済システムが導入されました。近年このように顔認証システムを積極的に導入する大学が増えています。

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(大学食堂の顏認証システム  視覚中国より)


他にも例があります。まずは自動販売機です。最近は顏認証のある自販機でコンビニのように軽食や飲料水を買うことができます。

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(顏認証による自動販売機  搜狐より)

次に地下鉄の改札口です。中国広州市では昨年顏認証の改札システムが始まりました。中国では今、交通カードよりもスマホのQRコードによる乗車が主流となっています。ですが、これらも顏認証による改札にいずれは取って代わられるでしょう。

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(広州地下鉄の顏認証改札口  中国青年報より)

この顔認証の技術はお金の決済だけでなく、街のセキュリティのためにも活用されています。


AIによる顏認証技術の応用

昨年より、私が住む南京市内の大学では、校内へ入る際に顏認証のゲートを通ることが必要となりました。このゲートは校内の安全を考慮し、大学関係者でない人が大学構内に入って来られないようにするために設置されたものです。 このようなセキュリティシステムは、南京市内の学校だけでなく全国各地の学校にも設置されています。

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(南京大学校門前の顏認証ゲート  撮影作成者)

交通安全のためにも実用されています。大都市の人や車の通行量が多い横断歩道には、監視カメラと大型モニターがあり、信号無視をした人はそのモニターに顔が表示され、警告が与えられます。

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(南京市内の道路に設置されたモニター  人民网より)

深圳市などの都市では交通ルールの違反者に対して顏認証で個人情報を特定してしまいます。少しやりすぎでは?と思われる方法ですが、多くの都市ではこうした方法で信号無視を減らしています。

私が住む南京市内では、昨年からこうした監視カメラを利用した罰金制度も始まっています。

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(人民网より)


市民やネットの反応

市民から顏認証による監視システムに対して、反対の声が少ないのが現状です。理由はとても簡単で治安がよくなるからだと言います。確かに、こうした顏認証技術によって治安が良くなるのは間違いないでしょう。実際に私が中国で生活していても治安に関して安心感があります。
しかし、ネットユーザーからは安全を心配する声も上がっています。自分のプライバシーの情報を国家や企業にゆだねるため「もし自分の顏や個人情報が悪用されたらどうしよう・・・」といった声です。

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(环球人物网より)


安全面の問題は?日本の取り組み

中国で生活しているとシェアバイク、スマホ決済やデリバリーなど日常生活において日本よりも便利だと感じることがあります。

中国の社会はまずは試してやってみる、ダメならやめるといったトライアンドエラーを繰り返すことにとても慣れています。このように実際に技術を社会で活用し、問題点が出てきた後から規制をして解決しようとする中国に対し、日本ではまずは問題点を考え、規制をつくってから技術を活用しようとします。

そのため、中国とはイノベーションの面で社会が異なっています。日本だと安全面やプライバシーの問題が大きな障害となり、新たな技術を推し進めることはなかなか難しいでしょう。

中国では新しい技術を広く活用することで、治安の維持や利便性を上げること成功しています。このような現状において、自身のプライバシーを守ることよりも治安維持や利便性を優先する人が多いのも現状なのです。

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(人民网より)

少し前まではQRコードで世界をリードしてきた中国。今では既に顏認証による時代に突入し、その技術がどんどん生活の中に浸透しているのが今の中国なのです。

この技術が中国にさらなる変革をもたらすのか?まだまだ中国の変化を見守っていきたいと思います。


(記事作成 竹内亮・飯塚真央)

竹内亮
ドキュメンタリー監督 番組プロデューサー(株)ワノユメ代表
2005年にディレクターデビュー。以来、NHK「長江 天と地の大紀行」「世界遺産」、テレビ東京「未来世紀ジパング」などで、中国関連のドキュメンタリーを作り続ける。2013年、中国人の妻と共に中国·南京市に移住し、番組制作会社ワノユメを設立。
2015年、中国最大手の動画サイトで、日本文化を紹介するドキュメンタリー紀行番組「我住在这里的理由(私がここに住む理由)」の放送を開始し、3年で総再生回数、5億回を突破。また中国最大のSNS・微博(ウェイボー)で2017から年3年連続で「影響力のある十大旅行番組」に選ばれている。
日本人と中国人の「庶民の生活」を描き、「面白いリアルな日本・中国」を日中の若い人に伝えていきたいと考えている。