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テレワークゆり物語 (148)大災害とテレワーク

大きな災害が発生したら、テレワークどころではない

確かにその通りだ。まずは人命最優先、ライフラインの復旧、日々の生活の確保、そして社会復興。
「在宅勤務をしましょう」なんて呑気な話ではない。

今日は、東日本大震災から12年が経った、2023年3月11日。
災害とテレワークについて、あらためて考えてみる。

東日本大震災でのテレワーク

2011年3月11日に発生した東日本大震災。多くの会社や工場が被災し、多くの人が、仕事を失ってしまった。やむなく、仕事と生活の場所を求めて、故郷を離れる人が少なくなかった。

私にでも、できることは無いだろうか。
「被災地に住みながら、当面の生活費をテレワークで稼げるのではないか」
そんな考えに至った私は、震災後、都市部の企業や行政と情報交換をし、模索しながらも事業を計画し、何度も東北を訪れた。

しかし、私の考えは「浅はか」だった。
別の仕事(テレワークやITとは無縁)をしていた人たちが、急にテレワークでお金を稼ぐのは現実的ではなかった。仕事のスキルを習得する期間が必要だが、その間の生活はどうするのか。
いくつかテレワークでの仕事を用意したが、しょせん業務委託。業務内容が限られることもあり、低報酬のものがほとんどだった。
一方、国からの支援がある現地での復興業務は時給も高く、テレワークを希望する被災者は、ごく一部しかいない。

自分の力の無さを感じずにはいられなかった。

大きな災害は、これからも起こる。
「その時、テレワークが役に立つためには何をすればいいのか」

これまでの失敗も含む経験をもとに、考え続けている。

『事業継続としてのテレワーク』

災害時におけるテレワークのメリットは、「事業継続」である。
地震に限らず、台風、大雪など、交通トラブルが発生すと、会社に行くことができなくなる。大きな災害だと、それが長期に渡って続き、事業の継続が困難になるケースも少ない。

たとえ、突然の災害があっても、社員が出社しなくても、たとえ最小限でも業務を回すためのテレワーク環境を整備しておくことが求められる。

「大きな災害で停電したりしたら、テレワークなんて意味ないですよ」
と言われたことがある。いろんなケースはあると思うが、その答えは、以下の記事をご覧いただきたい。

『防災』としてのテレワーク

災害発生時、災害を回避したり、被害を最小限にするための『防災』という視点からは、テレワークの中でも「在宅勤務」が重要になる。

都市部に多くの人が集まっている状態で大地震が発生したら、被害はより大きくなるだろう。
また、東日本大震災の際、東京都心で働く多くの人が、「帰宅難民」となり、大混乱となった。

日常的に、自宅で仕事をする『在宅勤務』人口が増えれば、万が一の災害時の被災人数を減らすことができるはず。

そして、災害発生時の「帰宅難民」を減らすこともできるだろう。

『命を守る』テレワーク

コロナ禍も、長期に渡る「大きな災害」である。
新型コロナウイルスの感染防止策として、テレワーク(在宅勤務)が大きく貢献したのは、どなたも否定しないだろう。

しかし、テレワークができない職種や、テレワークをしようにも方法がわからず、できなかった中小企業が少なくなかった。

高齢者や基礎疾患者が命の危険にさらされる中、ひとりでも多くの人の感染リスクを減らしたい。

そんな思いから、コロナ感染で死者が増えていた2021年末、企業に向けて、「コストをかけずに、とにかく、すぐにテレワークをする方法」を発信した。

リスキリングとテレワーク

コロナ禍の収束が見えてきた今、多くの企業が出社に戻っている。

喉元が過ぎたからといって、熱さを忘れてはいけない。
収束が見えてきた今だからこそ、できることがたくさんある

東日本大震災の際、私が学んだこと。

テレワークができる企業が少ないと、被災者が就ける仕事も少ない。
被災者にデジタルスキルがないと、テレワークで働けない。

大きな災害は、必ずやってくる。
そして、すべての人が被災者になる危険歳がある。

適切にテレワークを実施する企業を増やし、より多くの人が、テレワークができるスキルを身に付けること。

国は、生産性の向上、賃金の向上、労働市場の流動化などを目的に、「リスキリング」に力をいれようとしている。

もちろん、その目的も重要であるが、大災害に備えて「テレワークができるようにするためのリスキリング」という視点も持ってほしいと思う。

※冒頭の写真は、2013年気仙沼を訪問したときに撮影。打ち上げられた大型漁船のそばに咲いていたシロツメグサ。船はその後、解体された。


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