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テレワークゆり物語 (127)『リスキリング』と『テレワーク』の関係

「リスキリング」と「テレワーク」って、どう関係しているの?

多くの方が、タイトルをみて、そう思われただろう。

令和4年10月3日 第二百十回国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説において、岸田総理は「五年間で一兆円」という具体的な数字を出して、リスキリングに取り組む強い意志を示した。

ニュース番組等では、『リスキリング』という新しい言葉について、さまざまな説明がなされた。
『リスキリング』をわかりやすく「学びなおし」とするところもある。
しかし、従来から「学びなおし」と言われている『リカレント教育』とは違う。私の認識で説明してみる。

『リスキリング』を解説してみる

『リカレント教育』・・・学校教育を終え社会人になった人が、いったん仕事を離れ、大学などで学びなおしてから再度仕事に就くための教育。リカレント(recurrent)には、「循環」や「繰り返す」という意味であり、人生100年時代において、重要な教育である

『リスキリング』・・・企業で働く人が、自分の仕事とは別の新しい仕事のスキル(技能)を身に着ける、社内教育。リスキリング(Reskilling)は、新しい「スキル(skill)」を身に着け、企業に貢献し、就業を継続するための、重要な教育である。

この2つの大きな違いは、『リカレント教育』が、個人の人生設計における「学び」であるのに対し、『リスキリング』は、企業の「経営戦略」である、という点だと私は考える。

オックスフォード大学のオズボーン准教授らの「AIで無くなる仕事」をもとに、日本の労働人口の約 49%が、技術的には人工知能やロボット等により代替できるようになる可能性が高いと野村総合研究所NRIが発表している。その割合は日本が非常に高い。

株式会社野村総合研究所のリリースより

つまり、日本は、企業はもちろん、国自体が、いま社会経済を大きく変化させないと、これからの時代を生き残れなくなる。
そのシフトを実施するのが『リスキリング』なのだ。

企業経営の視点に立ってみよう

デジタル化、AI技術やロボットテクノロジーの導入で、事務作業や機械操作などの業務に従事していた社員の仕事が無くなる。
一方で、急速にDXが進み、企業の進展には、デジタルに長けた人材が不可欠になる。

日本の労働基準法では、簡単には社員を解雇できない。また、これから日本は「大労働力不足」の時代に入り、簡単には新規採用ができない。

「社員にデジタルのスキルを身に着けてもらうことで、これからの時代を生き抜く企業にしよう」と考えるのは自然だ。

社員の視点に立ってみよう

「私は、学校を卒業して、この会社で定年まで働く覚悟で入社した。だからつらい仕事も耐えてきた。会社のために頑張ってきた。それなのに、ロボットやコンピュータが仕事をするようになったら、私はクビになるのだろうか。」

「自分には、新しい技術などない。しかし、会社が私に別の仕事ができるようにするため、デジタルに関するスキルを学ぶ研修を実施し、再教育してくれるという。お給料をもらいながら!」

「新しくデジタルのスキルを身につけて、これからも会社のために働こう」と、社員が考えたら、企業にとっても働く人にとっても、これからの道が見えてくる。

テレワークの視点から考えてみよう

「テレワークができる仕事がない」
「テレワークできない社員が不公平だ」

テレワークのコンサルティングをしていると、テレワークの有用性を理解してはいるものの、なかなか実施できない企業が少なくない。

これに対し、私はこうお答えするようにしてきたし、コロナ禍を経た今も、同様の話をしている。

個々の社員を「この仕事だけをする人」と決めてかかっていては、その社員は、ずっとテレワークができません。不公平感も存在し続けます。
その仕事はいつまでもあるとは限りません。これからの時代は、デジタルを使った新しい仕事が増えていきます。
より多くの社員がテレワークを実施できるよう、仕事をデジタル化すると共に、社員のデジタルスキルを高めることが重要です。

「テレワークができない」という悩みへの田澤由利のアドバイス

そう。まさに『リスキリング』ではないか。

テレワーク人材を育成しよう

2022年10月、北海道北見市で「テレワーク合宿 in 北見」が開催される。
都市部の企業の経営戦略や働き方のキーパーソンが、参加する。

今年のテーマは、「テレワークを推進する、デジタル人材の育成」

今後、国の『リスキリング』施策により、企業において「デジタル教育」や「デジタル関連の研修」が頻繁に行われることになるだろう。

しかし、新しい道具(スキル)を手に入れ、それを使いこなす(新しい仕事にする)だけでは、真の『リスキリング』とは言えない。

『リスキング』は、テクノロジーの大きな変化に対応するための、働く人、企業、社会に不可欠なステップである。

新しい仕事が「自分の未来にどんな変化をもたらすのか」「その先に、どんな世の中が待っているのか」。そこまで想像してはじめて、社員は真剣に『リスキリング』に向かい合えるのではないだろうか。

デジタル人材の『リスキリング』の先には、『テレワーク』があたり前の社会が待っている。

ゆえに「テレワーク人材」とは、企業における「デジタル人材」を、未来の働き方へ適切にナビゲートするために、不可欠な社内案内人だと、私は考える。

「テレワーク合宿 in 北見」では、私もスピーカーを担当する。「テレワーク人材」の必要性と、求められる要素について、参加者とディスカッションする。その結果は、あらためてご報告したい。
(「ナキウサギ」がみれたかどうかも。笑)



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