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《楽曲紹介》I Am the Walrus(1967)/The Beatles

どんなに音楽に疎い人間でも知らない人はいないであろうバンド、ビートルズ

一部では、「彼らの音楽は現代のロックのベースになっている」だとかも言われている。

筆者がビートルズを知るきっかけになったのは父親だった。
父親は、ビートルズの限界オタクをしていたため2浪してしまったらしい。
黒歴史だったようで一度しか聞いた試しが無いため、今となっては定かではない。

そんな“ビートルズバカ”な父親は、もちろん私が生まれてからも変わらなかった。
物心ついた頃から家でも車内でも、流すのはいつもビートルズ。

当時の私はそれがビートルズというバンドの音楽だと認知しないまま流し聞いており、いつしか耳にこびりついてしまった。

それだけでビートルズを好きになったかというと、それは少し違う。

小さい頃は受動的に聞いていたわけだが、私はその後アニメにどハマりしたし、父親もビートルズ以外の音楽は聞くわけで、幼少期より父親のそばにいる時間も減っていった。

思春期を迎え、高校2年生の頃だ。私が自主的にビートルズを聞くようになったのは。

その頃の私は洋画にハマっていて、好きな映画の舞台となっていたのが60〜70年代の欧米だった。
当時の欧米で大流行していた音楽がビートルズだと気付くのにそう時間は掛からなかった。

幼少期の記憶を辿るようにビートルズの曲を聞いていた私は、その曲調の幅広さに驚かされたのをよく覚えている。

ビートルズが他のバンドと決定的に違うこと、それは8年という短い期間で200曲以上を生み出し、そのなかで目まぐるしく音楽のジャンルが変化したということ。

ビートルズ好きな友人と顔を合わせると度々交わされる「ビートルズで一番好きな曲は?」という話。

無論、一番なんて決められるはずはない。
その膨大な名曲の海に身を投じてしまうと、あれもこれも…と欲張りになってしまうのだ。

そんなわけで、これからは定期的にビートルズの好きな曲について記事にしていこうと思う。

今回は「私はセイウチ」というタイトルが衝撃的な【 I Am the Walrus 】という曲についてです。

① 開幕のグリッサンドからビートルズ・トリップは始まっている

この曲は、子供の合唱曲の伴奏のような愛らしいエレクトリックピアノの音色から始まります。

筆者は上記のように感じましたが、一方では「サイレンのようだ」と表現されている方もいて面白いなと思いました。
曲を聴いて自分なりに解釈してみると面白いと思います。

何が起こるんだろうと思っていると、突如現れるストリングスのグリッサンド
まるでトリップが始まってしまったかのような浮遊感を覚える音色です。

そして加わるのは、跳ねるようでいてどこか気怠げなドラム。

続けてジョンの歌声によって、物語は紡がれていきます。

(まるで怪しい宗教の宣教師にも見えるジョン)


そのジョンの歌声なんですが、ずっと聞いていると耳が痛くなってくるような歪んだ音が特徴です。
これは、ジョンが自分の声が嫌いでわざと加工したとか。

炭酸の抜けたコーラみたいな甘さを含みつつ、節々にエッジの効いたロックな歌い方がカッコいいです。

この曲には、叫び声なのか溜息なのか歓声なのか、そもそもこれは人の声なのか楽器なのか認識できないような音色さえあります。ゴージャスなオーケストラサウンドや意味不明な掛け声やラジオの音声なんかも加わって、

どうにも取り返しがつかないくらい膨張してしまうのですが、まるで潮の満ち引きのように、気付くと彼らの姿は消えています

② 言葉遊びに隠された都市伝説

この曲は特に歌詞が強烈で、和訳してしまうと

「僕はセイウチ!グーグー、グジューブ!」とか
「僕はエッグマン♪みんなエッグマン♪」とか

真面目に考察しようとすると頭がおかしくなりそうな言葉だらけなんですが、

“ goo goo g’ joob ”
“ I am the eggman, they are the eggmen ” など

耳馴染みがいい語呂であることは確かです。

じゃあ歌詞の全部が語呂合わせかというと、一概にそうとも言えなかったりします。

例えば、曲の中に登場する
“ Semolina pilchards, climbing up the Eiffel Tower ” という歌詞。

和訳すると
「セモリナ粉のイワシがエッフェル塔を登る」
というファンタジーな文章になるのですが、

一部ではこのSemolina pilchardsは実在する人物を元にしているのではないか?と一部マニアの間では話題になっていたり。

それがこの、ノーマン・ピッチャーという男です。

なんでもノーマンは、凄腕の麻薬捜査班

彼に逮捕されたアーティストはミック・ジャガードノヴァンエリック・クラプトンなど有名なアーティストばかり。

そして後に、ジョンも彼に捕まってしまいます

曲が発表されてからすぐの事でしたし、もしかするとジョンはノーマンに狙われていることを知っていたのではないか…という説がまことしやかに囁かれているのです。

しかし、捜査に入られた際のことについてジョンは

「僕とヨーコはまだベッドにいて下半身剥き出しだったし、彼女は服を探しにお風呂場へ行った」

と言っているそうなので、なんともいえないですね…。

③ 矢継ぎ早に襲ってくる怪奇な映像

ビートルズが作ったテレビ映画「マジカル・ミステリー・ツアー」にこの曲の演奏シーンが入っているのですが、これがまたヤバいです

(※ちなみにこの映画は、ポールが書き留めたアイデアメモを元にして脚本無しで撮影されたという驚愕の経緯を持つ)

ヒッピーな服装に身を纏い、楽器を演奏する4人。

…と思いきや、突如現れる宣教師。(違う)
頭に白い被り物をしていますが、どうやらこれは曲に登場する「エッグマン」のようです。

「フォァアウゥ↓……!」
という叫び声にも似たコーラスと共に登場する4人。
どつきたくなるようなジョンの表情が堪りません。

矢継ぎ早に登場するセイウチさん(モソモソしていて可愛い)に、

ふわふわ揺れるセイウチのお友達。(はっ!このズボンの色は…)

頭が追いつきません。

(ニコニコに抜粋されていました…)

常人には生み出せないブッ飛んだセンスの映像が渋滞していて、「ツッコミが追いつかない」状態になること請け合いです。

④ 複雑に重ねられたサイケデリック・サウンドに身を委ねよう

その奇妙な歌詞や、謎を呼ぶ映像が世界中のマニアを苦しめ様々な考察を生むに至ったわけですが、どんなに優れた考察でも憶測の域を出る事はないのだと思ってしまいます。

いわゆる、「考えるな、感じろ」です。

筆者は麻薬肯定者ではありませんが、そういった非日常的な体験に全くの憧れが無いかというと嘘になります(でも麻薬はダメ!絶対)。

I Am the Walrusは、日常に浸かった私達に一時的な甘い逃避行をさせてくれるツールのように思います。

ここまで読んで下さってありがとうございました!

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