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【後編】NFT取引は本当に「電気通信利用役務の提供」なのか? ~国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて」の分析と検討~
(【前編】NFT取引は本当に「資産の譲渡」に該当しないのか?) FAQは「電気通信利用役務の提供」だとするFAQについて、より問題なのは、問11のようなNFTアートの取引(以下「NFTアート取引」という。)を「電気通信利用役務の提供」(消費税法2条1項8の3)に当たるとした部分である。 「電気通信利用役務の提供」とは、条文上、「資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物……の提供(当該著作物の利用の許諾に係る取引を含む)…(以下略)」をいう。 NFTアート取引
【前編】NFT取引は本当に「資産の譲渡」に該当しないのか? ~国税庁「NFTに関する税務上の取扱いについて」の分析と検討~
はじめに国税庁は、令和5年1月に『NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)』(以下「FAQ」)を公表した[※1]。これは、NFT(Non-Fungible Token)に関する税務上の一般的な取扱いについて国税庁の見解を示したものだが、その中で消費税の取扱いについては2問掲載されている。 本稿では、NFT取引に関する消費税の課税関係について、FAQの内容を紹介しつつ、若干の検討を試みる。 NFT取引の例NFTは非代替性があり、デジタルデータのオリジナル性を担保する手段
消費税における役務提供の内外判定 〜東京地裁平成22年10月13日判決(カーレーススポンサー事件)のロジックを追う【後編】〜
「連続型」なら直ちに6号が適用される(【前編】はこちら) 平成22年判決にしたがうと、「役務の提供が行われた場所が明らかでないもの」である「国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供」には、 ①役務の提供が国内と国外との間で連続して行われるもの(以下「連続型」)と、 ②(連続していないが)役務の提供場所が国内及び国内以外の地域にわたって行われるもののうち、その対価の額が合理的に区分されていないもの、 という2つの類型があることになる[※8]。 そうだとすると、①の連
消費税における役務提供の内外判定 〜東京地裁平成22年10月13日判決(カーレーススポンサー事件)のロジックを追う【前編】〜
国境を越える取引の内外判定日本の消費税は、国内で行われる取引に課される(消費税法(以下「法」という。)4条1項)ため、国境を越えた取引の場合、その取引が国内で行われたかを判定する必要がある。これを一般に「内外判定」という。 取引が役務の提供(サービス)を目的とする場合、内外判定は、「当該役務の提供が行われた場所」を基準とする(法4条3項2号)。これは、国際的競争中立性の観点から、「消費税は消費する地域で課税されるべき」という消費地主義(仕向地主義)を根拠とする[※1]。
個人事業主が同族会社に対して支払った外注費が必要経費と認められなかった事例(大阪地判H30.4.19/大阪高判H30.11.2)
事案の概要原告Xは、B商店の屋号でLPガス、重油、灯油等の燃料小売業を営む個人事業主であり、平成22~24年分まで(以下「本件各年分」という。)の所得税の確定申告において、Xが代表者を務める株式会社C(以下「本件会社」という。)にB商店の業務を委託したとして、その外注費(以下「本件外注費」という。)を事業所得の金額の計算上必要経費に算入した。 これに対し、税務署長が、本件外注費を必要経費に算入することはできないとして、本件各年分の所得税の更正(以下「本件各更正処分」という。)
使用貸借と実質所得者課税の原則について ~子は単なる名義人であり駐車場収益は土地所有者の親に帰属するとした大阪高裁令和4年7月20日判決の批判的検討~
事案の概要本件は、原告Xの子らの名義で賃貸された土地の賃料に係る収益が原告Xに帰属するか、子らに帰属するかが争われた事案である。 元々、原告Xは、自己所有の土地のいくつか(以下「本件各土地」という。)について、複数の個人・法人に対して、駐車場として賃貸し、収益を得ていた(以下「本件各駐車場収益」という。)。 原告Xは、平成26年1月に、子の乙・丙との間で、本件各土地について使用貸借契約を締結し、さらに、土地上に敷設されたアスファルト舗装等を子に贈与する契約を締結した(以下、そ