銀座へ向かうおじさんをお乗せした時に聞こえてきた、不思議な現象の話。
タクシー運転手は、揶揄的表現であったり、
なぜか、異常なほど優しく見られたりする。
(“子供を見る”じゃないが、人としてあまり、、、という見方)
特徴的な運転手も多く、
芸能人もタクシー運転手に関するエピソードは多い。
しかし、タクシー運転手をしていると
お客様の方が特徴的だと感じることも多い。
“他人と密室で二人キリ”
という特殊な空間だから、
普通に会うのとはまた違う感覚なのかもしれないが
いつも楽しませてくれる。
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今回は、
ある大手企業でお乗せした50代ほどのおじさんが
街が変わると人格の変わった時の話。
勝手な想像をいれて遊ぶと楽しくなる。
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もう一般の企業であれば就業の時間も終わる夕方ごろ
そのお客様をお乗せした。
気のいい、ハキハキとした口調で
行き先を
「銀座まで、お願いします」
と申してきた。
年下と分かる私にも敬語で話す。
敬語で話すことを求めてはいないが
倍以上離れた方に敬語で来られると、
その人としての大きさに恐縮する。
銀座への道は、いつでも行けるほど頭に入っている。
「かしこまりました」そう言って、すぐに車を走らせた。
正直に言うと、そこから銀座への距離はほとんどない。
1,000円未満の距離だが、
年下にも敬語で接するという人としての大きさを感じると
値段云々は関係なくこちらも贔屓目に誠意をもって対応したくなる。
ほどなくして、銀座の地域へ入った。
銀座も1丁目と8丁目ではなかなかの距離があるため、
目的地によっては銀座内をまだ走り続ける。
銀座の地域に入ってから、
後ろから音が聞こえてきた。
「クチャッ、クチャッ、クチャッ」
ガムを噛む音。
私「(案外口を開けて噛むタイプなんだ~)」
そう思いながら車を走らせる。
「クチャッ、クチャッ、クチャッ」
噛む音が車内に響く。
まもなく、目的地
私「お止めする場所はどちらにいたしましょうか?」
そう聞こうとすると
「お止めする場・・・」
くらいで、返事が返ってきた
「もう少し前行って」
「かしこまりました・・・(ん?)」
違和感を感じる。
最初に乗せた、あの人としての大きさを感じない。
もう少し、のスも、サと聞こえるような発音で
「もうサこし前行って」
ハキハキではなく、
口の開き方も、舌の使い方もいい加減な喋り方。
乗った時の
年下にも敬意をもって接する態度ではなく
横柄さが際立つ人間になっていた。
「もう少し前」
という、特定しきらない言葉のため
少し走らせた後、
私「まだ真っ直ぐで宜しいでしょうか?」
と伺うと、また
私「まだ真・・・」くらいで、
「まだ前!」
と、これまた早く、しかも特定できない言葉を掛けてきた。
私「(なんか変なんだよな~)」
そう思い、少し時間を遡ると、
銀座の地域へ入る前、、、
「・・・・。」
特に、変わった様子はなく静かにしていた。
しかし、銀座へ入ると、、、
「クチャッ、クチャッ、クチャッ」
ガムを噛む音が響きだした。。。
私「(あれ?銀座入って人変わった?)」
明らかに、銀座に入ってからそのお客様の様子は変わった。
これは興味深い。。。
私の頭のなかの妄想が始まった!
もしかしたら、
銀座でこれから会う人に舐められないために
人柄を変えたのかもしれない。
(男なら分からなくもない。。。)
いや、銀座のホステスさんと会うから、
カッコつけようとしたのかもしれない。
(格好良くはない。。。)
いや、銀座というこの街が、
この人のもう一人の自分を生む場所なのかもしれない。
(月をみて狼に変わるように。。。)
いや、そうじゃない。
あのガムが、横柄に変わるスイッチなのかもしれない。
ガムを噛むことによって人柄が変わるんだ。
(クチャッ、が気になる!)
あ!いや!分かった!
あの人はガムを噛んでいなかった。
なぜなら後ろでお客様がガムを噛むと、
大抵ガムの香りが漂ってくる。
でもそれがなかった!!
ということは!!!
「クチャッ」
という音はガムを噛む音ではなくて
あの人の
“銀座に入ると出してしまうクセ”なんだ!
これから人に会う、
その人に会う前に自分を高めることが必要、
もう一人の自分が生まれることで、
別人格として振舞うことができる。
銀座という場が、興奮を高め別人格へと変える。
それが思わず出てしまっていたんだ。。。
私はその不思議な生理現象を聞いてしまった。。。
まぁ、そんな訳なかろうけど、
銀座という街は面白い。
タクシーも面白い。
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