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笑顔は不意に訪れる

仕事で何をしてもつらかった時期がある。帰りの電車の中で気が付いたら泣いていたという事もあった。
その後しばらく仕事を休んでしまったのだが、復帰してだいぶ経ったある時、ふとその頃の写真を見て、おや?と思った。とても不思議な感じがした。意外と笑っている写真が多かったからだ。

仕事といっても写真に残っているのは普段の実務とは離れたイベントの時だから、少しリラックスしてみもれたのだと思うし、カメラを向ける側からすれば、その中でも特にいい表情をねらったのだろうとも思う。しかしそれにしても、僕の記憶に残るイメージとは随分と違う。もっと張り詰めてばかりいたように感じていた。こんな満面の笑みをしていたのかと、新しい発見でもしたような気持ちになった。

その辛かった時期に仲の悪かった2人は職場を離れた。ある時 2人とは仕事関係の勉強会で再会したのだが、思わず近寄って「おー!元気?」と声をかけた。向こうも笑顔で迎えてくれ、話がはずんだ。
めて喧嘩けんかばかりした仲なのになつかしさしかなかった。僕はこの時 笑顔だったはずだ。写真の頃の僕もこんな風に笑ったのかもしれない。思わず笑顔になる瞬間は不意ふいに訪れる。それだけに記憶にも残らないのかもしれない。


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