見出し画像

詩・短歌・俳句 2019

身近みじかなこと


音はなく
波もなく
リズムなく
れる

野卑やひ
なめらかな
沼の踊りの
ぬめらんとする
そのままに

坂の下への
浸食しんしょくを待ちながら

2019.11.26.

短歌 1


ちがえた姿すがたに見えるそのかたち
人という字のもつれあうさま

残りかすで入れたcoffeeコーヒーすする様な
そんな心地ここちで本を読むよる

薄手うすでの pantsパンツ 今季こんきかないものないか
妻が問えども決断できず 

2019.11.2

fall


せみの声はんだ
ツクツクボウシが1匹
とり残されて泣いている
すずしい風が
肩の熱気にふれる
あつい季節が
僕の中で続いている

子供はさわぎ
走りじゃれる
いつも通り母達ははたち
立ち話のまわりで
みなの行きつけの店は
なくなったけれど
僕の空腹は
蕎麦そばと親子丼で
みたたされたけれども

2019.9.28

足場あしば


かわる
ふれる
ゆれる
わらう
いとしたことでなく
ふとしたことで
しんからはなれた
ぬかるむ足場で

ぱたりと横たわる
ゆらめく
3つのの花
目を閉じる
パニックの中に
上品じょうひんさをさがしながら

2019.8.31

川辺かわべにて


升目ますめの上で
自然はからまり
虫のように
ふる、ふるると
窮屈きゅうくつそうにれた

風はり下がり
ずしりとして
ゆら、ゆらと動く
きりはゆったりと満ちて
じきぎた 
いろを持たぬままに

2019.8.17

ひも


紐をといていく
そっと
ゆるやかに
いつでも
はじまりのように
どこでも
はじめてのように
方々ほうぼうらばる
ちりのように

2019.7.28

ちから


き出る熱の
流れを辿たど
静かな
あまりに静かな力

突然とつぜん噴火ふんか
やがておさまり
うずくまる
大地ににじ挿絵さしえを残して

うるおいを求め
うろたえるままに

2019.7.24

かごの中


さざ波の上
交わされた和睦わぼく
寝転ねころがる
むごい発熱と
り合いをつけながら

虫が転んでも笑う
一寸いっすん先はかす
一寸後ろはおぼろげだ
くずれゆく石垣いしがき
苔むすひまもないままに

籠の中の
遠吠とおぼえが聞こえる

2019.7.14

短歌 2


ぎこちなく日々常々ひびつねづねをうろついて
ぬかるむかわのナマズの思い

うるわしいハーモニーからのやさしさを
れてほっと喧騒けんそうなか

2019.6.11

楼閣ろうかく


別れをげる
すべての人に
夢の中でも運命は
のろまなのだから

ほこらは取り壊され
何も残らない
ろくな事は起こらない
瓦礫がれきの上の
こんなまちには

2019.5.31

短歌 3


明日でなく明後日あさってだったと気が付いて
ただ1日をありがたく思う

2019.5.28

なみだしてまた涙して手をえる
くずれれゆくのをどうにも出来ずに

だまるのが何の不都合ふつごうもない会話は
不思議ふしぎなほどの心地ここちよさあり

2019.5.21

下水管げすいかんの中 走り行くねずみくさ
猫のごとくに太ったそいつ

浮浪者ふろうしゃはいい呼び名だとふと思う
子供ごころしたいし人達

突きけず乗りえもせずそのままに
みすぼらしさを身にみながら

やりきれぬ日々ひび上辺うわべに転がって
べそをかいたり手を合わせたり

すれ違う言葉のたば気圧けおされて
だまるるつもりでついほとばしる

2049.5.8.

行こう


ふれると伝わる
生々なまなましく
ふるえ
にじみ出すもの
正体しょうたいつかめない
でも分かる

退けてもからみつく 
鈍感どんかんな力
だまり、眠り
黙り、眠ろう
目覚めざめたら行こう
ぬかるんだ道を
さわおとの方へと

2019.4.21

短歌 4


いとなみの波紋はもん無遠慮ぶえんりょに重なって
たくらみなどは跡形あとかたもなく

港湾こうわんでストライキがあったという
Ericエリック Hofferホッファーの動画をた日に

Eric Hofferの映像

2019.4.17

すずしげにどうでもいいよな顔をして
居座いすわっている庭のじょっぱり

びついてくさびは今にもこぼれそう
逃すも逃げるもてんでんこにて

仕方なく暮らしの中でからびた
ミミズのような野性をいだ

切り替えて頭の中の汗までも
そっとぬぐってほころんでみる

女郎じょろうや屋の並びし姿すがた 今はなく
みちまつられしほこらも消えた

めずらしい事はたくさんあるけれど
特別な事は何一つない

命とははかないいものと思うゆえ
学ぶ事をこそ優先ゆうせんしたい

2019.4.7

なんとなくパサパサとしたメッセージ
不快ふかいなほどではないのだけれど

ひやややかなイモリのような肌をして
ヤモリのごとくギョロリとしたい

2019.3.23

じっとてふるえ覚えた橋の下を
いま見ても何の感慨かんがいもなく

何一つ間違ってはないけれど
全てにおいてややずれている

「新しい」というひびきにはり返し
人をまどわす強さを感じる

残されたしるしゆえに遠ざける
かれるものを目にした時には

2019.3.17

ぶら下がりかんどころ得て持ちこたえ
どっちつかずでいられたらなあ

みるまで3回続けて読み通し
分からぬ事は10さつ読むのか

今からでも遅くないよというけれど
40数年これで来ちゃった

2019.3.12

雲行くもゆきがあやしいのならやめましょう
またの機会にいたしましょうよ

ほのぬるい安らぐガスがき出され
部屋にいるのもままならぬよる

早々そうそうに自由が欲しい心持ち
左手にあるペットボトルから

2019.3.10

地下暮らし終えて地上に出てみれば
以外と動けるわれであるかな

身を寄せてよだれのごとく影が似る
あぁあらえぬこそばゆくとも

2019.3.6

わらわらと子どもらてて逃げまど
2年開かずの机のゴキブリ

年老としおいた日々にかべからおどり出る
着替きがえられない衣装いしょうをまとい

なぜ逃げた追いかけて来るはずもない
エレベーターにうんこ見付けて

2019.3.3

まち


ほそい坂道の多い
港町みなとまちに育ったので
たいらな土地は落ち着かない
同じように
古い街並まちなみにも馴染なじめない
空襲くうしゅうがあった街に
生まれたからだろうか

青森で生まれ育った父は
敗戦はいせんの少し前
いっとき平塚ひらつかにいて
そこで空襲を受けた
豪傑ごうけつで遊び人だった祖父は
どうせ助からぬ
街がかれるのを見ながら死のうと
父をかかえて屋根にのぼった
父は見た
街の外縁がいえんを焼いて
逃げ道をふさいでから
徹底的てっていてき爆撃ばくげきするそのさま
父と祖父そふのいた家は
その円周えんしゅうの少しだけ外にあり
2人は助かった

長崎のみなと近くには坂が多い
横浜に生まれ育った僕は
故郷ふるさとのような心地良ここちよさを
おとずれた時に感じた
でもそれだけではない
いきづく共通のもの
きっとそうだ 

2019.2.25

俳句 1


節々ふしぶしにたまり来たるは春のおり

芽吹めぶくかな芽吹くかなとて待ちぼうけ

双葉ふたば見て昨日の雪を思い出す

梅の花 先を行くものだまるもの

2019.2.24

短歌 5


「にどわらし」父の故郷こきょうではそう呼んだ
け」「認知症にんちしょう」とわれる前は

向いてない仕事をやってジタバタし
そのまま終わるのでもいいかな

コジキとは乞食こじきとは知らず呼び
Homelessホームレスという横文字よこもじになり

頭の中かすみがかかった様子でも
口先だけは動くものだな 

2019.2.23

立ちのぼけむりのごときいきどお
においも消えてあぁ力なく

はじを知らずよみがえり来る力あり
今はとにかくありがたく思う

2019.2.22

くだけてもしずむ事のない船なので
あらしが来ても知るすべがなく

血管けっかんの中でおぼれる虫粒むさつぶが
流れにさからうゆえのさびしさ

なんとなしにやくに立たない事ばかり
思いつくままやってみたくなり

息苦しい夢を観るたび目覚めれば
滑稽こっけいな程まるまる気持ち

頑張がんばるとうその裏の縁側えんがわ
うずくまるのは怠ける心

団欒だんらんのその真ん中にとぐろ
へびがときおり舌を出すよる

終わるかと思えばどうも続きそう
何とも云えずふるえる思い

2019.2.20

病院で尻を出して横たわると
目線に同じ姿勢しせいの絵があり

片言かたことの私の前であらそいし
友の英語が分からぬりで

2019.2.17

なみだぐむそのうるおいはあふれずに
壮年そうねんほほふるわす

人事で思わず涙流したのは
思い出すたびつとこそばゆい

2019.2.13

何があれ生延いきのびるぞとこのごろ
呪文じゅもんのようにとなえてみれども

たかぶるほどにくいと思う人とでも
しんから笑いあった年月としつき

間違まちがえて笑われたとて仕方しかたない
ざわりとれる跡遺あとのこしたく

2019.1.26

はたらくと残酷ざんこくになるとTolstoy
われしかりかそっと目を閉じ

いざという時に豹変ひょうへん出来るかな
今はあらまし決めずにおこう

掃除そうじなどた子をおこす事だよと
言いわけすれどやればみ良し

2019.1.20

俳句 2


断水だんすいでくそしに出かける冬の空

2019.1.18

短歌 6


虫ですか?茶毒蛾ちゃどくがですか?とうれ
軟膏なんこうわた薬剤師やくざいしさん

黄昏たそがれて落ちて行くのを眺めやり
短い春を思い知る冬

何もかもわずらわしいと感じる日の
うまい牛丼はありがたきかな

ちょっとした事の裏にも暴力を
ぎとる我の臭覚しゅうかくくせ

どうしてか分からぬけれどどうしても
今日は気乗りがしないのだもの

2019.1.17

ももとせの時が今へとなだれ込み
先の方からこぼれ落ちるさま

いくさよりももとせの世が過ぎるまで
生きびて見てみたいと思う

しげる草を殺してみたところで
はびこるものは消えるはずなし

うずもれて本の間にはさまれた
ヤモリのようにからびた僕

たぶらかしたぶらかされて時を経て
あぶらかだぶらなどと言ってみる

辛抱しんぼうなく誰かが注意しやがった
普通の人になってしまったよ

八重山やえやまでせみこえ めずらしく
名人芸めいじんげいだとうなづく2人ふたり

らかって何が何やら分からずに
夕焼けながやみつつまれ

美しさみにくあわせ持ちながら
ぬらり明日もきっとあらわ

2019.1.13

十分じゅうぶんに楽しんだからさよならと
おきなは言いし最期さいごに問われ

戦争は日々ひび狭間はざまみ込んで
身内みうちまりふと流れ出す

戦友せんゆうより送られて来た昆布こんぶから
祖父そふはしゃぶれとひと切れくれた

何1つ覚えていない旅もあり
うつろなにて写真もらず

2019.1.6

落葉おちばのごとくあつまりて
あらしが来ればりてるなり

美しい海はいくつも見たけれど
にごった海がわれの海なり

配管はいかんとトタンを見るとほっとする
工場のあるまちに育てば

2019.1.1

(詩・短歌87〜122+俳句、日付はinstagram (philosophysflattail)投稿日)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?