佐藤達哉
永年に渡り演奏し続けているジャズプレイヤー、アルバムをこよなく愛すリスナー、二つの視点のクロスアングルから様々な作品の内容を分析し論じたブログをまとめています。これまでに無い切り口の作品紹介にしたいと思っています。
テナーサックス奏者ソニー・ロリンズ62年録音リリースのリーダー作『ザ・ブリッジ』を取り上げましょう。 1950年代後半、モダンジャズ最盛期に華々しくもクリエイティヴな音楽活動によりシーンにその名を轟かせ、リーダー作、サイドマンいずれに於いてもジャズ史に燦然と輝く数々の名盤、名演奏を残したソニー・ロリンズ、その名はテナーサックス奏者の代名詞となりました。 それは56年録音のリーダー作にしてモダンジャズのエヴァーグリーン『サキソフォン・コロッサス』の風格ある名演奏に負うところが
テナーサックス奏者ジョニー・グリフィンの1961, 62年録音『ザ・ケリー・ダンサーズ』を取り上げましょう。 アイルランド、スコットランド、イギリスの民謡を取り上げて演奏した、ジョニー・グリフィンの代表的な作品です。 ジャズミュージシャンが選ぶ題材はスタンダード・ナンバーやオリジナル作品が一般的ですが、本作のように欧州の楽曲、その中でもアイルランド、グレートブリテンに特化して当地の民謡をレコーディングしたのは異色と言えます。 レコード発売時のA面4曲がグリフィンのアレンジに
ギタリスト、ウェス・モンゴメリーのライヴ作品『フル・ハウス』を取り上げましょう。 斬新なスタイル、テクニカルな奏法を携えて50年代末ジャズシーンに現れたスーパーギタリスト、ウェス・モンゴメリーの代表作、リーダーのプレイは元よりサイドマンの素晴らしいサポートとオーディエンスのアプローズが渾然一体となり、ウェスの真髄を収めたライヴ作品となりました。 ハードバップ末期からジャズシーンには多くの個性的なミュージシャンが現れました。ウェスもその一人に該当します。 当時はモダンジャ
テナーサックス奏者ハンク・モブレーのリーダー作『ソウル・ステーション』を取り上げましょう。 ワン・ホーン・カルテットによるハンク・モブレーの作品、ブルーノート・レーベルから数多くの(後年発表されたアルバムも含め計26作)リーダー作をリリースしましたが、演奏内容、収録曲、参加メンバーいずれにも秀逸さが光り、彼の代表作に挙げられます。 次作に該当する同年録音にして、本作と同一メンバーに当時売り出し中のフレディ・ハバードを加えた作品『ロール・コール』は、双璧を成す出来栄えです。
トランペッター、リー・モーガンの63年録音作品『ザ・サイドワインダー』を取り上げましょう。 本作は全曲リー・モーガンのオリジナルから成り、表題曲の秀逸さを筆頭に異なったカラーを有する他曲とのブレンド感が、アルバムの魅力を生み出しています。 リーダーのブリリアントなブロウをはじめ、メンバー全員の素晴らしい演奏が作品のクオリティを向上させています。 ブルーノート専属ベーシストの感を呈するボブ・クランショウのオントップで的確なサポート、魅力的な音色のシンバル・レガートに加え、タ
エルヴィン・ジョーンズ1975年録音のリーダー作『オン・ザ・マウンテン』を取り上げましょう。 エルヴィンの音楽性を語る上で欠かす事の出来ない、60年代ジャズシーンを牽引したテナーサックス奏者ジョン・コルトレーン、彼とは約6年間演奏を共にし、その間に音楽的でダイナミックなドラミングを習得します。日々のギグや欧州ツアーで多大な影響を彼から受けました。 バンドを退団したのが65年末、そしてコルトレーンの逝去が67年7月、68年以降エルヴィンはコードレスでサックス奏者を複数擁した編
ギターリスト、ローランド・プリンスの76年初リーダー作品『カラー・ヴィジョンズ』を取り上げましょう。 プリンスは46年8月27日西インド諸島東部アンティグア島生まれ。幼少時にピアノ、ギターを始め、19歳の時にカナダのトロントに移住します。 69年にニューヨークに進出し、スタンリー・タレンタイン等と演奏活動を始めた模様で73年ニューポート・ジャズ・フェスティヴァルに出演しますが、詳しいデータが残されておらず、誰のバンドでのパフォーマンスなのかが分かりません。 翌74年7月にエ
ジョン・コルトレーンの1961年録音作品『オーレ!』を取り上げましょう。 『ジャイアント・ステップス』『マイ・フェイヴァリット・シングス』といったコルトレーンの代表作をリリースしたレーベル、アトランティックでの最後の録音に該当します。この後コルトレーンの音楽性を別次元にまで開花させたインパルス・レーベルに移籍しますが、最初のアルバム『アフリカ/ブラス』のレコーディングは本作の二日前に行われました。 契約をクリアーするために本作が録音されたとも言えますが、負のイメージは無く、
ピアニスト、フィニアス・ニューボーンJr.の代表作『ア・ワールド・オブ・ピアノ!』を取り上げましょう。 華麗なるピアノテクニック、卓越した音楽性、豊かなアイデアを引っ提げてジャズ界にデビューしたフィニアス、本作は彼のプレイの魅力を余すことなく表出した作品です。 アート・テイタムやバド・パウエルの流れを汲む伝統的スタイルに、洗練されたテイストを大胆に加味したプレイは他にはない爽快さ、スピード感を感じさせます。 ジャズに於けるピアノ演奏の先鋭的な側面を全て凝縮したかの彼のスタ
ケニー・バレルとジョン・コルトレーンの1958年共演作品『ケニー・バレル&ジョン・コルトレーン』を取り上げましょう。 ケニー・バレルとジョン・コルトレーン二人の名前を冠した作品ですが、当時のニュー・ジャズ〜プレスティッジがよく行っていた、レーベル所縁のミュージシャンを頭に掲げたセッションの一環、組み合わせの妙を提供しています。 バレルのカルテットにコルトレーンが加わった形と言えますが、ここではコルトレーンにとって肩の力の入らない、通り掛かり的に演奏を楽しんでいる風を感じます
トミー・フラナガンの57年リーダー作『オーヴァーシーズ』を取り上げましょう。 本作はフラナガンの初リーダーにして代表作、ピアノトリオのエヴァーグリーンとして広くジャズファンに愛聴されています。 ピアニストのアルバム紹介があれば十中八九ノミネートされる定番中の定番、モダンジャズの黄金期1957年に録音されたゆえ演奏内容はもちろん、メンバーや収録曲の素晴らしさ、秀逸なアルバムデザインも要因の一つ、シチュエーションが揃った名盤です。 フラナガン自身は自分の音楽性を前面に打ち出し
ハービー・ハンコックの76年録音ライヴ・アルバム『V.S.O.P.』を取り上げましょう。 多くの名作を世に送り出したハンコック、本作は彼の諸作中とりわけモニュメンタルなライヴ・アルバムです。 ここではそれまでの総決算として、3つのセッションを企画しました。 一つ目は60年代ブルー・ノート・レーベルから『テイキン・オフ』『処女航海』『スピーク・ライク・ア・チャイルド』と言ったモダンジャズのエヴァーグリーンを発表、これらをベースにしたストレート・アヘッドなアコースティック・ジャ
ベース奏者ニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセンの79年録音リーダー作、『ダンシング・オン・ザ・テーブルス』を取り上げましょう。 ペデルセンは1946年5月27日デンマーク、シェラン島生まれ、幼少期にピアノを学び、13歳でアップライト・ベースを習い始めます。 折しも60年代初頭は大勢の黒人ジャズマンが米国から仕事を求めてデンマークやフランスに移住し、その中にはジャズのレジェンドも多く、楽器を始めたばかりのペデルセンは欧州に居ながらにして米国第一線のミュージシャンと共演
サックス奏者グローヴァー・ワシントン・ジュニアの80年録音作品『ワインライト』を取り上げましょう。 グローヴァー・ワシントン・ジュニア、11作目のリーダー作に該当し当時のフュージョンブームもあり、アルバム自体空前の大ヒット、ビルボード・トップ・ジャズ・アルバム1位を記録します。 収録曲ジャスト・ザ・トゥ・オブ・アスも全米ポップチャート2位、そして82年のグラミー賞ベストR&Bソング賞を受賞する快挙を遂げます。 もともとグローヴァーの作品制作は、R&Bのテイストを基本にジャ
マッコイ・タイナー1976年録音の作品『フライ・ウイズ・ザ・ウインド』を取り上げてみましょう。 多作家マッコイ・タイナーは70年代、年に2作のペースでコンスタントにリーダー・アルバムを録音、リリースしていました。プレーヤーとして生涯活動していましたが、この頃は特に充実を感じます。 前後には75年2月に『トライデント』、翌76年6月『フォーカル・ポイント』をレコーディング、本作のようにストリングス・オーケストラを擁した大編成から『トライデント』でのエルヴィン・ジョーンズ、ロン
ピアニスト、コンポーザー、そしてアレンジャーでもあるジョージ・ラッセル、1961年録音リーダー作『エズセティックス』を取り上げましょう。 エリック・ドルフィー、スティーヴ・スワロー、ドン・エリス、デイヴ・ベイカー、ジョー・ハントら当時最先端のミュージシャンを擁した、ラッセル6作目のリーダーアルバムになります。 理知的で探究心に富んだ音楽を展開し、アグレッシヴな演奏を聴かせますが、リリカルでリラックスした側面も覗かせる、バランス感を有するミュージシャンと認識しています。 56