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ジャズ・コントラスツ/ケニー・ドーハム

 トランペッター、ケニー・ドーハム1957年録音リーダー作『ジャズ・コントラスツ』を取り上げましょう。

録音:1957年5月21, 27日
スタジオ:リーヴス・サウンド・スタジオ、ニューヨーク
レコーディング・エンジニア:ジャック・ヒギンズ
プロデューサー:オリン・キープニュース
レーベル:リヴァーサイド RLP12-239

(tp)ケニー・ドーハム  (ts)ソニー・ロリンズ  (p)ハンク・ジョーンズ  (b)オスカー・ペティフォード  (ds)マックス・ローチ  (harp)ベティ・グラマン

(1)フォーリング・ラヴ・ウイズ・ラヴ  (2)アイル・リメンバー・エイプリル  (3)ラルー  (4)マイ・オールド・フレーム  (5)バット・ビューティフル  (6)ラ・ヴィラ

ジャズ・コントラスツ/ケニー・ドーハム

 ハードバップ最盛期の57年制作、ケニー・ドーハム第5作目のリーダー・アルバムです。
 アルバム・ジャケットで何やらツーポーズを決めたドーハム、意味するところはラフな雰囲気のいつものジャズ演奏と、ジャズでは珍しい楽器、ハープを交えたフォーマルなプレイとのコントラストを表現した、と言うところでしょうか。
 実際にテナーと2管でのクインテットで3曲、ドーハムのワンホーン演奏にハープがオーケストレーションの如くに加わった編成で2曲、全員参加で1曲を演奏しています。
 ドーハムのリヴァーサイド・レーベル移籍第一弾という事で、ハーピスト起用はプロデューサーのオリン・キープニュースがアイデアを提供したのかも知れませんし、自身の作品に意外性のあるアイデアを織り込むドーハムです、自らの企画とも考えられます。

 ドーハムは53年12月録音初リーダー作『ケニー・ドーハム・クインテット』をリリース、チャーリー・パーカーのバンドにも在籍したビ・バッパー振りを披露します。この頃から既にマイルス・デイヴィスにも通じるイーヴン気味の8分音符とシングル・タンギング、付帯音豊富なトーンを聴かせます。

ケニー・ドーハム・クインテット

 第2作目は一転してラテンに挑戦します。55年1, 3月録音その名も『アフロ・キューバン』はブルーノート・レーベルから、レコードA面がラテン・サイドでアート・ブレイキー、ホレス・シルヴァー、ハンク・モブレーたち、ドーハムも在団したジャズ・メッセンジャーズ勢を中心に、J. J. ジョンソン、セシル・ペインら低音域管楽器を加えアンサンブルを強化、所謂いわゆる”ジャズ屋のラテン”を楽しげにプレイしますが、キューバ出身のコンガ奏者、名手カルロス”ポテト”ヴァルデスやカウベルにリッチー・ゴールドバーグを迎え、リズムを強化します。
 B面はコンガとカウベル抜きでトランペット、テナー、バリトンの3管編成にて、外連見なくハードバップをプレイしています。

アフロ・キューバン/ケニー・ドーハム

 因みに"ジャズ屋のラテン"とは、本来イーヴンであるべき8分音符が徹底し切れず、ジャズプレーヤーゆえに微妙に音符がバウンスし、タイトさを心情とすべきリズムがルーズ、良く言えば味わいのあるグルーヴを表出するラテン・プレイの事です。
 その真逆に位置するラテンの端正なグルーヴ、リズムの顕著な例として、同じくブルーノートからリリースされた異色作57年4月録音『サブー・パロ・コンゴ』が挙げられます。

 コンガ奏者(スペイン語でコンゲーロと言います)、ニューヨーク出身のサブー・マルティネス率いるコンガ・アンサンブルを中心に、ラテンの本場キューバから盲目のトレス(キューバ独自のギター)、コンガ奏者、ヴォーカリスト、名手アルセニオ・ロドリゲスを迎え、最大5人のコンガ奏者、加えてギター、ベース、コーラスが繰り出す、各々異なったリズム・フィギュアを同時に演奏しているにも関わらず綴れ織の如く組み合わさり、一つのタイトで強固、且つスピード感溢れるグルーヴに昇華した、ピュア・アフロ・キューバン・ミュージックです。
極上のグルーヴ感には誰もが思わず身体でリズムを取りはじめてしまいます。

 ブルーノートはハードバップ・エラ57年によくぞこの作品をリリースしました。内容的に非ブルーノート・レーベルの極みとも言えましょう、プロデューサー、アルフレッド・ライオンの手腕を再認識させられます。

サブ・パロ・コンゴ

 第3作目は幻のテナーサックス名手J. R.モンテローズ、ギターにケニー・バレルを迎えたセクステットでの『ラウンド・アバウト・ミッドナイト・アット・ザ・カフェ・ボヘミア』、56年5月ニューヨークでのライヴレコーディングです。総じてかなりラフなプレイで、ジャムセッション的な演奏内容になります。

ラウンド・アバウト・ミッドナイト
アット・ザ・カフェ・ボヘミア/
ケニー・ドーハム

 第4作目は同様にモンテローズを起用したクインテット、ザ・ジャズ・プロフェッツでの作品56年4月録音『ケニー・ドーハム・アンド・ザ・ジャズ・プロフェッツ Vol. 1』、因みにVol. 2は存在しません。

 ドーハムの良く練られたオリジナルをプレイし、メンバー人選や演奏手法にバンドの個性を表出しよう、従来のハードバップ・コンセプトから抜け出そうとする意欲が認められ、当時としては比較的新しさを発揮しますが、残念ながらジャズ預言者のレヴェルにまでは至っていません。

 モンテローズの8分音符もドーハムに通じるイーヴンな8分音符を有します。同じくシングル・タンギングによるアクセント付けを多用し、音色的にもハスキーな彼ら、二人のコンビネーションには好感が持てます。
 ドーハムはテナーサックス奏者とのコンビネーションに、自己を発揮する活路を見い出していたように思います。60年代ジョー・ヘンダーソンとのコンビにも同様のテイストを感じ、互いのリーダー作品だけで無く、サイドマン同志でも頻繁に共演します。ジョーヘン自身もドーハムを敬愛していたそうです。

 ザ・ジャズ・プロフェッツはバンド活動が短命に終わってしまったため、次作に漕ぎ着けなかったのでしょう。

ケニー・ドーハム・アンド・ザ・ジャズ・プロフェッツ vol.1

 そして第5作目、本作『ジャズ・コントラスツ』に至ります。作品にはレーベルのカラーもあるのでしょうが、前4作に比較して多少都会的で、幾分垢抜けたテイストを感じます。

 参加メンバーは当時飛ぶ鳥を落とす勢い、絶好調であったテナーサックス奏者ソニー・ロリンズをフィーチャーし、ピアニスト、ハンク・ジョーンズ、ベーシスト、オスカー・ペティフォード、ドラマー、マックス・ローチのクインテットそして3曲ハープ奏者ベティ・グラマンが参加します。

 本作のトピックスの一つとして、アルバム曲中のロリンズのソロフレーズの断片をジョン・コルトレーンがピックアップし、モチーフとして膨らませて一つの楽曲として作り上げました。後ほど紹介したいと思います。

ケニー・ドーハム

 1曲目フォーリング・ラヴ・ウイズ・ラヴ、ペティフォードのアカペラによる8小節イントロから始まり、直後徐にバンド全員が演奏を開始します。
 味わい深いドーハムの独奏によるテーマ、ピアノのリリカルなバッキング、3連符を多用したドラムのフィルイン、ステディなベースワーク、テーマからソロに入る際ドラムはブレークせずともピアノは打鍵の手を休め、ベースは裏拍のシンコペーションを用いて対応します。

 そのままドーハムのソロへ、いつに無く音数多く、攻めの姿勢で開始します。リズム隊は静観しますがソロが落ち着いたところで各々対応を始めます。
本人のプレイが次第にいつもの間を活かしたドーハムのペースへ、言わばクワイエット・ケニーを発揮します。

 続くテナーソロ開始と同時に曲のキーが全音上がり、AフラットからBフラットに変わります。
 転調する際に必要なコード進行を敢えて設けず、いきなりのキーチェンジと同時にソロイストの交替による変化、加えてキーが上がる事でサウンドに明るさを感じさせる狙いもあるでしょう、音場が刷新されます。

 申し分の無い王者ロリンズの豊かなテナーサックスの音色、タイム感、節回しの妙、確実にメロディの延長線上にあるインプロヴィゼーション、加えてここではドーハムのソロとの対比を試みたかのプレイを繰り広げますが、自身の個性を発揮するだけでは無く、リーダーの表現との違いを表出する余裕も見せます。
 本録音はロリンズ・リーダー作、名盤『ソニー・ロリンズ Vol.2』レコーディングの1ヶ月後、ここでの歌心の発露がしっかりと継続しています。

ソニー・ロリンズ Vol.2

 ピアノソロに続きます。幾多のハードバップ・ピアニストとは根本が異なるコンセプトでのソロアプローチは、ジョーンズならではのもの、この事はバッキングの際にも言えます。ソロイストのフレージングに対するレスポンスには付かず離れずと同時に、絶妙な寄り添い感を発揮します。
 言わばおうむ返しの真逆、人の話を良く聴き、内容を踏まえた上で気の利いた、捻りのある返答や対応を行う、巧みな話術を有する聴き上手の如しです。

ハンク・ジョーンズ

 ペティフォードのソロへ、ポール・チェンバースがハードバップ期に台頭してファースト・コールになる、その前任者としてのモダン・ベーシスト第一人者です。
メロディアスにして闊達なフレージング、豊富なアイデア、ビート感、骨太の音色には風格を感じさせます。
翌58年ニューヨークを引き払い、コペンハーゲンに新天地を見いだす事になります。

オスカー・ペティフォード

 ローチの短くとも主張あるブラシを用いた半コーラス16小節のソロが続き、ドーハムによるラストテーマへ、曲のキーが再度転調し元のキーに戻ります。初めのテーマでは聴かれなかったロリンズのオブリガートが、メロディラインを効果的に彩ります。

 2曲目アイル・リメンバー・エイプリル、牧歌的なベースの重音によるピチカート・ソロから始まります。半分のテンポでのイントロであったため、いきなりのアップテンポ感を出しながらドーハムによるテーマ奏が始まります。
 曲のサビ・メロディをロリンズが担当、ドーハムに比して朗々と大きくリズムに乗るのが印象的です。

 ソロは引き続きドーハムから、いきなりリズムのラッシュ感は否めません。何かにせっつかれているかの慌てぶり、それでもリズム隊は確実にサポートします。
ジョーンズが「ケニーの奴何をテンパっているんだ?」と打鍵しながら呟く声が聴こえて来そうです。彼は日頃からジョークやダジャレ、シニカルな言葉を発していましたから。

 ロリンズはスネークインしながら、ここでもドーハムと敢えて対比するかのように、悠然とプレイし始めます。タイムを大きく取るとはまさしくこの事、理想のグルーヴ感を提示し始めます。恰もあたかもジャズに於けるアドリブソロはフレージングよりも、タイムやスピード感が最優先される事をレクチャーしています。
 次第にフレーズが細分化され、リズミックな要素がふんだんに込められます。
ピアノトリオを牽引しながら様々なアイデアを提供し、リズム隊はレスポンスに際しその取捨選択を迫られますが、いずれをキャッチしても良いでしょう、実に楽しい事この上無き状態、恐らく全員がニコニコしながら、瞬間瞬間をエンジョイしています。
 引き続きロリンズは唄心溢れ、遊び心に至っては満点以上の表出、サキソフォン・コロッサス(サキコロ)の面目躍如です。テナーサックスと言うメロディ楽器がリズム楽器になり得る事を身を持って実証しています。
 50年代にインプロヴァイザーとしての一つのピークを迎えたロリンズの、ある日の一コマを捉えたプレイですが、さぞかし連日連夜猛烈な演奏を行なっていたのだろうと想像させます。

 ドーハムはモンテローズやジョーヘンらテナー奏者とのコンビネーションに自己を発揮する活路を見出していたのではないか、と前述しました。
ロリンズとはローチ・クインテットでも共演が継続しましたが、寧ろロリンズの圧倒的なスイング感を前に良好な関係性を築けなかった、もしくは孤高のサキコロの方が一人で自己完結しているため、パートナーを必要としなかったとも捉えています。

ソニー・ロリンズ

 その後ロリンズの締めのフレーズを拾いながらジョーンズがピアノソロを開始、テナーソロの勢いそのままに、1コーラスソロを行います。
 ドーハムが再登場し、ドラムとの8小節交換をロリンズとシェアしながら行います。ドーハムのつんのめり気味で1拍の短いフレージングと、リズムのスイートスポットを的確に押さえ、たっぷりした1拍を有するロリンズのグルーヴが交互に行われる最中、真逆な両者への対応から、リズム隊はカオス状態一歩手前を綱渡りします。

 ドラムソロに続きます。ローチはフレージングに際し比較的リックを用いますが、ここではクリエイティヴなアプローチも多く見られます。ペティフォードがコーラス・フォームの要所にバッキングを施しているのが印象的で、こちらにインスパイアされたとも想像しています。

マックス・ローチ

 今度はドーハムとロリンズ、フロントの8小節交換が始まります。リズムセクションは全くテンションが下がらず、二人のバトルをしっかりフォローしますが、「おいおい、これだけやっておいて、お前らこの先まだやるつもりなのか?」ボソッとジョーンズが呟いたと思います。
 ここでもペティフォードのバッキングに注目すべきユニークなアプローチ、ラインを見い出せます。
そして突っ込み気味のドーハムのソロの際にはビートの位置を少し前に置き、ロリンズの時には元に戻すを絶妙に繰り返しています。
 またロリンズはよくぞドーハムのタイム感に引き摺られず、自分のペースを確実にキープ出来たと、今更ながらに感心させられます。偏にひとえにサキコロの強力なリズム感の為せる技ですが。

 ラストテーマに続きます。冒頭のテーマではサビのメロディがロリンズに委ねられましたが、ここではドーハムが担当します。恐らく勢い余って吹いてしまったのでしょう。エンディングはベースパターンがグルーヴの核となり次第にFade outします。

 3曲目ラルーは本作録音前年56年7月、交通事故で夭逝した天才トランペッター、クリフォード・ブラウン(ブラウニー)のオリジナル、アルトサックス奏者ジジ・グライスがアレンジを担当します。
 曲のタイトルはブラウニー愛妻の名前、しかし作曲されながら録音は行われませんでした。
ブラウニーが交通事故で亡くなった当日が二人の2回目の結婚記念日、しかもラルー22歳の誕生日でもありました。
 二つの大切な記念行事を妻と共に祝福するため、ブラウニーが作ったナンバーなのでしょう、作曲者自身による演奏が成されなかったのは本当に残念です。
 ブラウニーの後釜でマックス・ローチ・クインテットに加入したドーハム、彼に対する思い入れは人一倍あったに違いありません。

クリフォード・ブラウン

 楽曲はリズムセクションとハープのアルペジオによるムーディなイントロから始まります。
やや速めのバラード故でしょう、ローチはスティックを用いて伴奏します。テーマ奏の際ハープの音色は優雅に響き、ブラウニーへの追悼ムードを高めます。
 続いてドーハムのソロ、朗々とメロディを歌いそのままソロに続きます。ローチ、ペティフォードはダブル・タイム・フィールで演奏し、ジョーンズの伴奏も彼らに追従します。
 ハープの伴奏が途中何度か挿入され、ジャズでは殆ど聴かれる機会の無い音色が演奏に加味される形になります。
そのままラストテーマへ、ドーハムのトランペットを全編フィーチャーしたテイクとなりました。

ベティ・グラマン

 ラルーは58年にカーティス・カウンスやハル・マクシックもレコーディングし、81年名手ボビー・シューもリーダー作『プレイ・ソング』で取り上げています。
ブラウニーと共演経験のあるヘレン・メリルは自身でラルーに歌詞を付け、ユア・アイズと言うタイトルで94年レコーディングしています。

プレイ・ソング/ボビー・シュー

 4曲目マイ・オールド・フレームはジャズマンが好んで取り上げる美しいバラード、こちらもグライスによるアレンジ・ナンバーです。
グラマンとロリンズの二人が加わり、本作中最も参加人数が多いテイクです。

 ジョーンズのリリカルなピアノイントロから始まります。ここでもハープがストリングスの如く伴奏しますが、ストリングス・セクションよりも音のエッジが立つためにやや支配的に響きます。
 ドーハムのテーマ奏はフェイクをふんだんに施し、ロリンズのオブリガートを伴います。そのままテナーソロに続きます。
ロリンズの音色は音量を抑えめに吹いているためにサブトーン気味で含みを持たせ、ガサガサした付帯音が豊かに鳴ります。

 コルトレーンがロリンズに捧げたナンバー「ライク・ソニー」は、この曲でロリンズが吹いたフレーズから作曲されました。
 出典はCDカウント表示の3分22秒から30秒の2小節間に聴かれるフレーズ、コルトレーンはこちらを元に24小節の楽曲に拡大しました。リズムはラテン、メロディに配されたコード進行は中々ユニークなものです。
 収録アルバムが59年12月2日録音『コルトレーン・ジャズ』、自身の音楽を前進させるため試行錯誤を繰り返した時期に該当します。
 ロリンズの何気ないフレージングに着目し、膨らませて一つの楽曲に仕上げたコルトレーン、様々なものから音楽的インスピレーションを得ようとする貪欲な彼の姿勢を垣間見る事が出来ます。

 コルトレーンのライヴァルとしてのロリンズです、その彼に敬意を表し楽曲を捧げたと想像できますが、次の様にも考えられます。
たまたま「ライク・ソニー」は世の中にアップされました。水面下コルトレーンは同様な試みを行い、ロリンズに限らずサックス・プレーヤー、いやサックスにとどまらず、あらゆる器楽奏者のアドリブ・フレージングから楽曲を作り出す作業にトライしていたのではないかと。
 そして録音こそされずとも、せめてスケッチ風の楽曲譜面程度は存在するように推測しています。
 様々な未発表音源が発掘の専門家により日の光を浴びる現代です、コルトレーンの楽曲譜面が現れて、彼の音楽的発展プロセスのミッシングリンクが埋まる日が来るように考えています。

コルトレーン・ジャズ/
ジョン・コルトレーン

 5曲目バット・ビューティフルはドーハムがアレンジを施したバラード・ナンバー。
 アウフタクトの後にドーハムがキューを出したのでしょう、冒頭いきなりメロディが開始されます。ベースのアルコが響き、ハープがテーマの最中隈無くアルペジオを演奏します。ローチはブラシを用い、ペティフォードはピチカートに転じ、ジョーンズは各々の間隙をぬってバッキングをプレイします。
 テーマ後ベース、ドラムは3曲目ラルーと同様にダブルタイム・フィールへ、しかし短く半コーラスを演奏しエンディングに向かいます。
 こちらのテイクもドーハムのプレイのみをフィーチャーした形で演奏されました。

 6曲目アルバムのラスト曲、ラ・ヴィラはドーハムのオリジナル、ローチのドラムソロから始まるアップテンポのスイング・ナンバーです。
テーマの主題部を2管で演奏し、サビはテナーがメロディを奏でます。テーマ部分はメロディとリズム隊のコンビネーションによるアンサンブルが印象的、ソロに入ってからは全てスイング・ビートでプレイされます。

 先発ドーハムはグルーヴ感を一切放棄したかの、前のめりのタイム感でプレイし続け、終始落ち着きがありませんが、サキコロのどっしりとして安定感抜群、絶好調振りを遺憾無く発揮したソロで、全てが挽回されているように思えます。

 ピアノソロに変わり、ローチはシンバル・レガート中心にプレイします。50年代を代表するドラマーのひとり、場面が変わる際のカラーリングにも長けています。
 ピアノソロ終わりを見計らってドーハムがドラムと8小節交換を開始し、そこにロリンズも加わります。ピアノにソロを回すのかが明確ではなかったので、ロリンズはプレイを見合わせる瞬間もありました。
 ドラムソロになり、その後アイル・リメンバー・エイプリルと同じくフロント二人のバトルになります。同一アルバム収録なので、ここは是非とも異なる展開、場面を設けて貰いたかったです。
それこそドラムソロ後は、直ぐにラストテーマに入るのが潔い采配であったと思います。


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