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SaMDの動向と課題について勉強会に参加してみた その1

11/2 ANCHOR神戸で「プログラム医療機器(SaMD)に関する国内外の動向と開発上の課題」についてセミナーがあったので、急遽こちらに参加してきました。

アンカーKOBEは、神戸市が開設し神戸新聞とトーマツが運営する会員制ビジネススクエア。阪急三宮駅直結のビル15Fにあって、神戸を一望できるとっても素晴らしい場所でした。

プログラム医療機器とは

厚生労働省の「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」には、こう書かれています。

医薬品医療機器等法に基づき規制される医療機器プログラムは、疾病の
診断、治療、予防に寄与するなど、医療機器としての目的性を有しており、
かつ、意図したとおりに機能しない場合に患者(又は使用者)の生命及び
健康に影響を与えるおそれがあるプログラム(ソフトウェア機能)である。

厚生労働省 プログラムの医療機器該当生に関するガイドライン

まぁなんとなくわかる感じの説明ですね。

今回は、このような説明がありました。
1)医療機器で得られたデータ(画像を含む)を加工・処理し、診断または治療に用いるための指標、画像、グラフなどを作成するプログラム
2)治療計画・方法の決定を支援するためのプログラム(シミュレーションを含む)
なるほどね。

そういえば、SaMDと非プログラム医療機器を分けるものは、
機能の障害などが生じた場合でも人の生命及び健康に影響を与える恐れがほとんどないもの ということです。例えば、症状別の一般的な対応情報を提供する医療機器のアプリのように、健康チェックを目的に作られたものがあります。

医療・健康分野のデジタル化が求められる理由

こちらは統計局にある人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)結果の要約に記載がある人口減少率の推移です。
2021年には-0.6%となっており、世界の主要国と比べても減少率は高いといえます。米国、カナダ(0.5%)英国(0.3%)フランス(0.1%)イタリア(-0.4%)

人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)結果の要約

さらに医療従事者の減少も進むと予測されており、健康寿命延伸を追求するヘルスケア産業の強化が求められている一面があります。

デジタルの医療に与える価値

医療におけるデジタル化の価値は大きく4つあります。

  1. 個別化

  2. 最適化

  3. 簡易化

  4. 省力化

これをケアサイクルに当てはめると、各フェーズで様々な医療が考えられます。

ケアサイクルにデジタル化された医療を当てはめた事例

デジタルヘルスの市場は拡大傾向

数字で見る デジタルヘルス投資 世界で440億ドルに(月刊構想2022年4月)

そして新型コロナをきっかけにデジタル化はさらに加速する見込みです。

Adjust調査:ヘルス・フィットネスアプリの利用急増 コロナ禍のロックダウンによりインストールが67%増加

新型コロナの影響もあり、身近でもヘルスケアに注意する人が増加したのではないでしょうか。

医療・ヘルスケア業界における大きな潮流

今回のセミナーでは、大きな潮流の解説がありました。

  1. アウトカム中心医療

  2. 医療の主戦場はより「前」に

    1. 予防医用の重要性

    2. 早期発見の重要性

  3. 薬以外の治療法の多様化

  4. 個別化治療/予防が可能となる技術発展

  5. 疾患ではない体調不良ケアの重要性への気づき

ここで僕が気になったのは、アウトカム中心医療です。

アウトカム中心医療とは

よく似た言葉としてアウトプットがありますね、これは出力結果。医療や福祉ではアウトカムが重要視されます。アウトカムとは、出力結果を元にして獲得した”成果・効果”と考えられます。定義としては、検査値の改善度や合併症の発生率、再発率や死亡率など、治療や予防による臨床上の成果を指しますが、わかりにくいので「病気が治ったか」と考えるといいかもしれません。

元々何らかの疾病が認められた人は、治療を受けて、改善・回復して行く流れになります。このフローの中で、患者が医療に対してどのような評価を下すかといえば、結果がどうだったのか、その後の体験を通じて判断するはずです。治療を受ければ治癒すると考えるのが当然で、その後に元の生活に戻れているかなどです。

これから考える医療サービスは、このアウトカムを中心に考えられて行くべきですが、これらはUXの概念とも同じものですね。治すだけではない体験を生み出すことが大切になります。

プログラム医療機器で期待されるアウトカム

個人的にサービスにおけるアウトカムは体験としてとらえていたのですが、このように分解してみるとわかりやすいと考えます。

アウトカム = 有効性・安全性 × 社会的必要性 × 経済性・効率性

例えば、撮影支援プログラムを例にとると・・・

有効性:画質向上 → 診断精度UP
安全性:最適簡易よる被曝低減
社会的必要性:技師の負荷低減、質の均てん化
経済性・効率性:追加検査の削減の可能性

これらの要素をサービスの中で検討して行く必要がありますね。個人的には、技師の負荷低減など医療従事者が少し楽になるような機能だけだと、社会実装が難しい印象です。

これからプログラム医療機器を考える人に

2021年3月31日付でプログラム医療機器該当性に関するガイドラインが発出されました。

https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000764274.pdf

このPDFの別紙に、該当するかどうかをチェックできるフローがあります。

プログラム医療機器該当性に関するガイドライン

プログラム医療機器実用化促進パッケージ戦略

またプログラム医療機器の早期実用化を促進するために、厚生労働省からDASH for SaMD「プログラム医療機器実用化促進パッケージ戦略」が公表されています。

承認審査体制等の強化が実施され、早期に実現化するスキームがあるようです。相談窓口もありますので、相談するのもいいかもしれません。

プログラムの変更申請を簡素化する仕組み

https://www.pmda.go.jp/files/000244067.pdf

こちらは医療機器の特性に応じ、将来改良が見込まれている 医療機器について、その改良計画自体を承認する制度です。計画書通りの結果であれば、審査なし、手数料なしで変更が可能となります。

医療機器開発は、どうしても時間がかかってしまい、企業にも負担がかかります。開発が早く実現できることも大きな価値なので、このような制度は大変ありがたいことです。

今日はここまで。
その2で、SaMDの現状と開発課題について書きたいと思います。

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