今日から使える建築雑学#1「逓減率」
これからは定期的に、旅行や観光の際に使える「小ネタ」を紹介したいと思います。
第1回目は…
「五重塔」を鑑賞する際の小ネタです。
五重塔といえば皆さんどの塔が最初に思い浮かぶでしょうか。
あの有名な現存する日本最古の塔「法隆寺五重塔」でしょうか。
私は「瑠璃光寺五重塔」が好きです。
塔に限らず、今まで見た古今東西の建築の中でも好きな建築ベスト3に入ります。
ちなみに、あと2つは、「キンベル美術館」と「エル・エスコリアル」。訪れたことがない建築が世界中にはまだまだたくさんあるので、このベスト3が変わる可能性は大いにありますが。
さて、五重塔に関する「小ネタ」についてです。
五重塔には「逓減率(ていげんりつ)」というものがあります。
逓減率とは、塔の初層と最上層を比べて、幅の大きさがどのくらいの差があるかということ。
全国には様々な五重塔がありますが、それぞれ印象は違いますよね。
安定感のあるどっしりした塔から、高く伸びやかな印象がある塔まで。
この印象を私たちに与える要素の大きな一つが「逓減率」なのです。
塔は上層に上がるにつれ、屋根や塔身の幅が順に小さくなっていきます。これを「逓減」といい、初層に対する最上層の幅の割合のことを「逓減率」といいます。
ちなみに、法隆寺五重塔の逓減率は「0.5」です。
つまり、最上層の大きさが初層に比べて、半分の大きさであるということです。
初層から最上層にかけて5層に重なり、徐々に幅が小さくなっているので、初層と最上層にこれだけの差があることに意外に気づかないかもしれません。
そして、様々な塔を鑑賞する際に、
【ポイント】
この逓減率の大きさによって、ある程度建てられた時代が新しいのか、古いのか、判断材料として使えます。
一般的には、「古い時代の塔ほど、逓減率が大きい」傾向にあります。
この事を知れば、観光の際に「ウンチク」としても使えることはもちろんのこと、さらに面白くなるのは、この一般傾向「古い時代の塔ほど、逓減率が大きい」に当てはまらない塔に出会った時です。
時代が比較的古い塔なのに、なぜ逓減率が小さいのか。
その理由は、地域差があるためか、造った当時の大工やお寺の嗜好か、あるいは、時代の変遷の中で改変履歴があるのか。
様々な推理を巡らせることができます。
答えを知る前に自分で考えてみると、より面白味が増すと思います。
読んでくださった方々。
今日はぜひ、この「逓減率」を頭の片隅にでも置いていただいて、塔を訪れる機会がありましたら、使ってみてください。
「瑠璃光寺五重塔」(山口県)は本当におすすめです。
こんな感じで、使える「建築小ネタ」を定期的に書いていきたいと思います。楽しみにしていてください!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?