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これからの小売りは「信念」と「行動」

前回、情報小売業について語りましたが、そのシンボルと言えるのが、ユニクロです。正確に言うと「情報製造小売業」というコンセプトで、お客さまがほしいと思う商品をすぐに商品化できる、情報を中心とした新しいサプライチェーンへと、業態を変革。究極の目的を、「無駄なものをつくらない、無駄なものを運ばない、無駄なものを売らない」こととしています。

つまりは商品を製造し、販売することに対し、顧客とコミュニケーションをしているということです。前回の私の話では、発信の部分にフォーカスしましたが、ユニクロのこの事例は、受発信です。「受」が加わっています。

平たく言えば、マーケティング&プロダクトということなのですが、ユニクロの情報製造小売業はより先進的なことが分かるでしょう。旧来のモノ売りということではなく、情報売りになっています。

ちなみに、5月20日のプレジデントオンラインの記事なのですが、日本では緊急事態宣言の真っ只中にありましたが、ユニクロは業績が悪いのに株価が上昇したそうです。

業績の悪化について、4月の月次動向では、既存店売上高は前年同月比56.5%減、客数が60.6%の減少となり大幅な減少という状況でした。

それでも株価が上昇したのは、ユニクロに期待(共感)があったからです。1つは柳井社長のメッセージの強さだと言われています。コロナによるピンチで、世界は「自国ファースト」「自社ファースト」「自分ファースト」に陥りましたが、柳井社長は「こういう時だからこそ、冷静に、理性的に事態を認識し、『何が本当に正しいことなのか』を常に考え対応」すると述べています(カッコイイ!)。

そして、もう1つ。情報製造小売業となり、古い概念を壊し、新しい小売りのあり方を築き上げていることに期待が集まっているのです。

もちろん、まだまだ要因はあるとは思いますが、この2つに共通しているのは、「信念」と「行動」があり、それを世にしっかりと伝えています。株価が上昇した理由は、実店舗でモノが売れない時に、情報がちゃんと売れていたということです。

他にも、世界に目を向けると、「バイコット運動」という事例がありました(Forbes JAPAN 6月25日の記事)。アメリカで黒人差別によるデモ運動があったことは記憶に新しいですが、その際、企業は消費者から「信念」と「行動」を求められました。

いち早く、ツイッターやナイキなど大手企業が次々と抗議運動を擁護する声明を出しましたが、メッセージだけでは不十分だ、行動を示せと消費者は迫ったのです。

そこで、消費者は「信念」と「行動」を示した企業に賛辞を送るための「バイコット運動」を展開したのです。「買い物は投票だ」と、買うことによって、好意を示そうと。

米スーパーマーケット大手ターゲットは、デモで休業した店舗の従業員に賃金を支払ったり、デモで傷つく人たちへ救急医療セットや薬などを配布。さらには、複数のアフリカ系アメリカ人の人権団体へ1000万円を寄付と黒人経営の中小企業へ無償の相談サービスを開始しました。

他にも、近年はサステイナブルファッションで注目されるH&Mやリーバイス、グッチなどを傘下に持つケリング・グループも、それぞれ人権団体への多額の寄付を発表しました。

インスタグラム上では消費者が「#blackowned」「#BuyBlack」といったハッシュタグをつけて投稿。黒人経営のブランドや店舗をリストで示した投稿につけられることが多く、このような店やブランドで買い物をして支援をしようという動きが見られました。

トランプ大統領の差別的発言を容認したフェイスブックに対し、各企業が広告出稿を控えたボイコット運動は有名ですが、実はバイコット運動も展開されていたのです。

日本でも大きなトピックスがないので、こういった動きが顕在化されてないだけで、潜在的なボイコット運動やバイコット運動は存在すると思います。モノの売り買いと越えた、消費者とのコミュニケーションデザインが求められる時代。いち早く小売業から「情報小売業」へ、変革できるといいですね。




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