小説『海風』僕の話(1)【第一章を無料公開中】
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風を浴びたい。
僕らの間を吹き抜ける海風を。
そして全ては命を取り戻すだろう。
重荷もきれいに、風と共に去っていく。
沈んで。波にのまれて。太陽に届いて。
最後はどこへ行きつくでもなく、ただ海風として。
僕の話一
生きることは死ぬことを内包している。出会いは別れを孕んでいて、幸せもどこか悲しげな顔をしている。
「君を、愛していないんだ」
正確にはその時、愛がどういうものなのか、僕にはわからなかった。そんな高尚なものがこの世にあるのかすら