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<まえがき>コロナ前後で、人の考え方は変わりました。「何を面白いと思うか」も大きく変わりました。今、新しい世界観に合った”新しいエンターテイメント”が求められています。今回はドラマ・映画・舞台など、様々なシーンで活躍するシナリオライターに、お話をお聞きしました。

●世界観をアップデートするべし
●舞台公演を中止に追い込んだ本当の原因
●「ピンチはチャンス」にできるか

―どんなお仕事をされていますか。
舞台、映画、ドラマ、ゲームアプリ、アニメなどのシナリオを書いています。一口に「シナリオライター」と言っても色々です。たとえばドラマなら、原作のあるなし、どこの枠か、尺はどれくらいか、シリーズなのか単発なのか、一人でやるのか複数で書くのか?で、やることは変わってきます。「脚本」だけではなく、その前段階の「プロット」と呼ばれるあらすじを書くこともあります。「脚本協力」としてサポートに入ることもあれば、複数でやる場合の「取りまとめ」をすることもあります。

私はドラマや舞台、映画など、色んな媒体からの仕事を受けていますが、その中でも最近、需要があり、お金が稼げるのはスマホのゲームアプリです。「このキャラクターに合ったセリフで、こういうことを言ってほしい」とか「ストーリーを作ってほしい」とか「設定から考えてほしい」などのオーダーに答えています。

シナリオライターは事務所に所属する場合もありますが、基本的に事務所は自分でとってきた仕事でも報酬から3割持っていかれるため、私の場合は完全フリーランスです。なんでもできるよりも特定の得意分野があると、プロデューサーから忘れられずに声をかけてもらいやすいと思います。

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―コロナによって、具体的にどのような影響を受けましたか。
4月下旬に下北沢の小劇場で舞台公演を予定していました。私は脚本として参加していましたが、残念ながらコロナの影響で延期になりました。しかし、仮に緊急事態宣言が出ず、自粛要請だけだったとしてもほぼ客席は埋まらず、中止をした際と同様の結果になっていたと思います。

舞台の場合、出演者がSNSやブログを通じてファンに向けてアピールすることが、一番の宣伝になります。それを地道にやっていかなければなりません。しかし、自粛要請下ではそれができません。役者がSNSに公演情報をアップすると「こんな時にこんなことやるのか!?」と批判がおき、彼らのイメージがダウンしてしまうからです。その結果、当然、お客さんとなる層の方々に情報がいきわたらず、チケットも売れません。主催者は損害を被ってしまいます。“何故自粛しないんだ”という雰囲気が続く限りは、実質公演不可能です。緊急事態宣言が解除された今は、慎重を期しながら、舞台公演を始めるところが出てきています。東京アラートなどもあり、私達もまだ様子見をしている状態ですが、事態が収まったら、再度公演を行う予定です。

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―コロナ以前と比べて、働き方の面でどんな変化がありましたか。
自粛期間中の打ち合わせは基本zoomでやっていました。zoomは複数人が参加できる、とても便利なツールです。ただ、提案されたものに対し、議論をするという内容だとやりやすいのですが、方向性が決まっていないものを吟味してその場で一緒に作っていくやり方には正直向いていない気がします。

4月、進めていた映画の脚本の件でプロデューサーから連絡があり、「もっとしっかり構成を固めておきたい」という話になりました。オンラインでは埒が明かないため、結局、事務所に集まることになりました。脚本は脚本家が一人で書くものではなく、監督、プロデューサーと打ち合わせを重ねながら練られていくもの。打ち合わせに集まるのは珍しいことではありません。ただし、それはコロナ以前の話です。事態は緊急事態宣言の真っただ中です。

結局、プロデューサーの事務所の窓を全開にして開け放ち、適度な距離をとって、感染リスクを避けながらの打ち合わせになりました。そのおかげでうまく進みまして、今はプロットをどんどん書いているところです。最近、テレビや映画などの現場の撮影が再開され始めましたが、厳しいガイドラインが引かれ、以前と同じようにはいかないようです。私たちの作品の撮影は来年以降ですが、どうなるかまだ不安が残っています。

―これから業界(世界)は、どう変わっていくと思いますか。
コロナ前後で世界が変わることは間違いありません。人との距離感とか、考え方とか、思想とか。コロナ前後で“世界観”もはっきり分かれるようになると思います。これからドラマや舞台などを手掛ける際には、そういうのをきちんと意識しないといけないし、既に作っている最中であれば手を加えないといけません。せっかく作っても「あ、これは古い時代の話だな」と思われてしまいます。

それから、扱うジャンルやテーマも慎重に選ばないといけません。以前であれば殺人ウイルスが大流行するパニックムービーなどがありましたが、これからは受けないと思います。だって、今の世の中には、それ以上に怖いウイルスが出回っているわけですから。新しい生活様式が具体的にどう受け入れられ、どんな風に定着していくのかは分かりませんが、しっかり対応して、上手く取り入れていきたいです。

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―クリエイターとしては、コロナをどうとらえていますか。
コロナはビジネス的にはしんどい部分もあります。でも、新しいことが大好きな自分のような人間にとっては、不謹慎な言い方になるかもしれませんが、チャンスでもあると思います。たとえば、オンラインの演劇やオンラインでのミニシアターなどが普及し、主催や配給会社も新たな収益モデルが試せたと思います。さらにはトークイベントを開催する際もオンラインであれば、場所に制限がなく、あまり役者やタレントのスケジュールを気にせずに行えます。様々な俳優や演出家などが、自粛期間中にできることを模索し、試しているさまを見ることによって「こんなこともできるんだ」と刺激にもなったし、この語の勉強にもなりました。そして、これからどうやって脚本という仕事を続けていこうかと考えるきっかけにもなりました。私も負けずに、コロナをばねにして、この先、色んな新しいことにチャレンジしていきたいです。

マスクの向こう側では取材対象者を募集しています。
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masukunomukougawa-2020@yahoo.co.jp
コロナ前後で大きく世界は変わると思います。1年後、5年後、10年後、「あの時、何があったのか」をしっかり振り返ることができるように書き残していきたいと考えています。フォローしてもらえるとすごく嬉しいです。twitterもやっています。

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