スクリーンショット_2020-01-08_13

野球少年を襲う病魔〜痛くない野球肘がある?part2〜


前回に引き続き上腕骨小頭部離断性骨軟骨炎についてお伝えしたいと思います。今回は症状・病態についてです。前回をお読み頂き、次に進まれると理解しやすいかと思います。↓をクリックください。良ければフォローくださると幸いです!

※離断性骨軟骨炎は疾病です!病院で経過をしっかり診てもらいましょう!(整骨院の先生やトレーナーの方々は、発見したら病院と連携をとり対応しなければなりません。スポーツ障害ではなく、疾病ということを理解してください。)

症状・病態〜3つの期分け〜

症状・病態〜3つの期分け〜
透亮期(外側期・中央期)
分離期(前期・後期)
遊離期(病巣内期・病巣外期)

初期(透亮外側期)
上腕骨小頭部の軟骨下骨に骨の吸収(壊死)がはじまります。原因は明確にはなっておりませんが、現在のところ、日常生活、スポーツ活動によって繰り返されるメカニカルストレスによって末端部に微細損傷が生じ、末端部へ栄養を供給するシステム破綻が起き、血管を通じて得られる栄養が届かなくなってしまったことにより壊死が引き起こされると考えられています。また、現在、発症していなくても1ヶ月後に発症している場合もあります。第二次性徴期がはじまるまでは3−4ヶ月に1度の定期的なチェックをお勧め致します。
筆者は多くの選手に対応してきましたが、この透亮外側期で痛みを訴えた選手は1人もいません。また、肘の可動域制限や腫れ、熱感を含め目立った所見もありません。(※内側型野球肘、筋のタイトネスによって可動域制限が出ている選手は多くいます。別として評価しなければなりません)
↓資料のように左は良い方、右は透亮外側期になってしまったものになります。

スクリーンショット 2020-01-08 11.08.29

エコー画像(初期ではエコーが重要な情報となることが多いです)
1枚目エコー画像(上腕骨小頭部の長軸像)
2枚目エコー画像(上腕骨小頭部の短軸像)

スクリーンショット 2020-01-08 14.05.04

↑左は良い方は綺麗な半円となりますが、右は初期(透亮外側期)になるため白い半円は形を変え凹んでいるように観察することが出来ます。

スクリーンショット 2020-01-08 14.05.13

↑短軸(横軸)で観察すると小頭部の外側壁が二重線に見えると思います。この線と線の間が骨が吸収(壊死)された病巣部となります。この画像を描出するためには症状・病態を理解しエコーを上手く操作しなければ描出することが出来ません。確かなる知識と技術が必要になります。

初期(透亮中央期)
透亮外側期から数週間〜数ヶ月の時間が経過すると病巣は大きくなり外側壁から小頭部中央まで壊死が広がります。これは骨の成長に伴い中央部に移行しているのではないか?といった見解をとられる医師もいます。また最初から中央ややや後方、内側と病巣部も多岐にわたりますが、多くは外側期→中央期へと病巣部が変容します。

スクリーンショット 2020-01-08 11.08.41

エコー画像
1枚目エコー画像(上腕骨小頭部の長軸像)
2枚目エコー画像(上腕骨小頭部の短軸像)

スクリーンショット 2020-01-08 14.06.32

↑先ほどの写真と比べ病巣部が大きくなっているのがわかるかと思います。

スクリーンショット 2020-01-08 14.05.24

↑短軸像です。外側壁から中央にかけて大きく凹んでいるのがわかるかと思います。

初期(透亮外側期・中央期)のまとめ
上腕骨小頭部離断性骨軟骨炎の初期では、多くは小頭部外側壁より発症し、徐々に中央へ移行していきます。この時点で痛みや可動域制限、腫れや熱感などはほとんどなく、10ー11歳頃に発症することが多いです。指導者の皆様が理解している少年野球に起こる野球肘は痛みが出やすい内側障害であり、この上腕骨小頭部離断性骨軟骨炎ではありません。野球肘が日本の少年野球界にも少しずつ浸透していると感じつつも、「痛みがない野球肘」があることを知り、野球肘検診の参加や医療機関との連携をとることをお勧め致します。

※出来るだけ早く発症している選手を発見し、適切な治療・施術を受けることをお勧め致します。

宜しければ拡散をしてくださると幸いです!!

次回は中期(分離期前期・後期)について書いていこうと思います。

野球長期育成研究家 吉田干城

参考資料


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?