碧空戦士アマガサ　第1話「邂逅」 part2（初版）

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加筆・修正・リライトを施した再放送版が配信中です。
再放送版のほうがアマガサの世界への理解が深まると思いますので、そちらを読んでもらえると嬉しいです。
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- 1.邂逅(後編) -

　数分後。

『姐さんちょっと！　病み上がりなんスから！』

「リハビリだ！」

　イヤホンマイクから聞こえてくるタキの声に応えながら、晴香は走る。
　集団食い逃げ犯たちはスクーターを店の前に停めていたようだ。300メートルほど先に、信号無視して走り去る姿が見える。

「乾！　例のシステムの試運転だ！　対象は──」

　指示を出しながら、晴香は大通りを駆け抜ける。遠くから響くエンジン音を頼りに最短ルートを推測し、路地裏へと飛び込み、ゴミの山を飛び越えて走る。

『乾です。捕捉しました。対象は三丁目交差点付近まできています』

「オーケー、すぐそこだ」

　晴香は不敵な笑みと共に答えた。

『姐さんシステム関係ないじゃないッスか……』

　タキの声は無視して、晴香は立ち止まる。そして目の前の路地を見据えた。幅は2mほど。雑居ビルに挟まれ、正面には高さ3ｍほどのフェンスがある袋小路。だが……その先に目的の"三丁目交差点"がある。

　晴香は加速した。全力で踏み込んだ彼女は壁を三角飛びで蹴り登り、フェンスの上に着地する。さらに間髪入れずに足場を蹴ると、大通りへと文字通り"飛び出した"。

『三丁目交差点に他に車両はいません。イケます！』

　空中で晴香が対象を捕捉したのと同じタイミングで、イヤホンマイクから声が聞こえた。よくできた部下だ、と晴香は笑った。

「どぉおおりゃああっ！」

「うおおおっ！？」

　ガシャン！！

　晴香は、前を走っていた二人乗りスクーターに飛び蹴りを見舞った。悲鳴をあげながら、食い逃げ犯の二人が車道に投げ出される。晴香は地面に転がって衝撃を殺すと即座に立ちあがった。部下からの連絡通り、周囲に車両はなかった。

「な、なんだテメェ！？」

　後続のスクーターが急ブレーキをかけ、二人が降りてくる。

「なぁに、正義の焼肉好きだ」

　その言葉を聞いて、二人は察したらしい。

「お前あの店から追っかけてきたのか！？」

「当たり前だ。白昼堂々、食い逃げ、原付二人乗り、信号無視。いい度胸してるな」

「うるせぇ！」

　男達は二人同時に晴香に飛びかかる。

「遅せぇ！」

　晴香の後ろ回し蹴りが、片方の腹部を捉えた。さらに反動を利用して繰り出された掌底が、もう片方の胸部を強かに打ち付ける。声すらあげられないまま、二人の男が倒れ伏した。

「よしよし、全然動ける。完治だな」

晴香は上着を正しながら呟いた。と──

「こ、この女化け物じゃねぇか！」「逃げろ！」

　先刻スクーターごと吹っ飛ばされた二人が、フラフラしながらも対向車線に逃げていく。

「あ！？　死んでなかったのかあいつら！？」

『姐さんそれ完全に悪役のセリフです』タキの言葉は無視した。

　道を渡ろうとするも、通りかかる車に阻まれてしまう。舌打ちした晴香の視線の先、犯人たちはヨタヨタと通りを歩いて行く。その進路上に人影。

「……ん？」

　晴香は一瞬、それが見間違いかと思った。

「邪魔だオラ！　どけ！」「おっと」

　突き飛ばそうとした犯人をひょいと避け、足を払って転倒させたその男は──白い雨合羽を着て、左手に番傘を携えていた。

「お、おい……乾」

『はい、見えてます。あれは……』

　晴香の言葉に、監視カメラ越しに状況を見ていた乾が同意した。その男は右手に持った扇子をパタパタと扇いでいる。そして、犯人のもうひとりが繰り出してきた拳をその扇子でパシリと防いだ。

「んなっ！？」

「こら、危ないでしょ」

　彼は扇子を素早く畳むと、犯人の手首を打ち付けた。その体制が崩れた隙をついて、彼は見事なハイキックで相手を昏倒させたのだった。

　一部始終を眺めながら、晴香はイヤホンマイクに呟いた。

「あれ……"アマガサ"だよな」

- 次回予告 -

"アマガサ"とのまさかの邂逅。晴香は彼を捉えようとするが……？
そして降り出す天気雨──ケース02"殴り合いの街"。
暴徒化した人々から少女を救うべく、晴香は立ち上がる！
「こないだは世話になったな」
『湊斗を離せこの大男！』
「この暴力ゴリラ！」
「やっと会えた──"原初の雨狐"」

次回、碧空戦士アマガサ

『暴徒』

（作者注）
　第二話からはニチアサ風にAパートとBパートに分割しました。単純に1ノートあたりの文字数が多かったのが理由です。ごりょうしょうください。