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YouTuberの扉 ローカルタレントと呼ばれる人たち

筆者は今からおよそ30年前(90年代初頭)の4年間を、大学生として熊本県で過ごしました。

転勤族の家庭だったため、高校は香川県だったのですが、当時はまだインターネット社会の到来など一般レベルでは誰も予想しておらず、携帯電話をひとり一台所有する日がせまってきていることすら気付いていませんでした。

個人でなにかの情報を入手する手段といえば、本屋さん一択という時代であったため、四国の香川県にいた筆者から見た熊本県というのは、ほとんど予備知識も情報もなく、まったくの未知なる地、未知なる惑星に近いものがありました。

今なら熊本市街の外観や情報など、スマホ片手に即、簡単に入手出来てしまいますよね。

熊本市の中心地。震災によるダメージを修復中の熊本城。

「九州の熊本って、どんだけ田舎なんだろう?」

今思えば四国の田舎者がなにを言っとるんだ…という感じですが笑 これは熊本の大学に入学が決まり、熊本入りする直前に筆者が抱いていた、当時の嘘偽りない感情です。

ところが、

いざ熊本入りしてみると、ちょっとオシャレな雰囲気だなと感じました。「熊本は田舎」という勝手なネガティブイメージを抱いていた筆者がそう感じたのですから、この一転した第一印象もまた、紛れも無い率直な感想だったと思います。

中心地に行けば、広い広い幹線道路が熊本城に向かって一直線に伸びており、その真ん中を情緒ある路面電車が走り、左右には大きなアーケード街。

熊本の知り合いにいわせると「それだけしかないったい」とのことですが、それまで香川県の学食で、毎日毎日うどんをズルズルすすっていた筆者から見ると、香川県よりは「なんか良い雰囲気だな」と感じました。

まあ、到着早々ですから、半分観光しているような感覚に陥り、脳内補正が加味されていたのかもしれませんが。

そしてなにより香川県との違いを実感したのは、街行く高校生たちの姿でした。

当時の香川県では、男子高校生は制服のズボンの裾をいかに絞るかを競い合っていました。いわゆるツータック、スリータックと呼ばれていたズボンです。裾が絞れていればいるほど、カッコいいとされていたのです。

ところが、

香川県の高松市から特急に乗り、瀬戸大橋を渡って岡山から博多まで新幹線、そして博多からさらに特急に乗って到着した熊本では「バギー」と呼ばれる裾が思い切り広がったズボンが大流行していたのです。

のちの全国的な流行変遷からすると、熊本のほうが香川よりも一歩先を行っていたことになりますが、当時の筆者にとっては「流行って一体なんだろう?」と考えさせられる光景でした。小さなことではありますが、自身の中でカルチャーショックを受けたのです。

本当に不思議でした。

みんながバギーパンツを履いていたら、それがオシャレでカッコ良く見えてしまうのです。その年の春まで、いかにズボンの裾を絞るかということに全力を注いでいたというのに。

女子高生のほうはというと、香川県よりも明らかに垢抜けていたと思います。当時の香川県高松市内の高校では、熊本のようにブレザーで、胸元はリボン、そしてチェック柄のスカートを取り入れている学校は存在していませんでした。

さて、前置きが長くなりましたが、熊本県は、同じ地方であるにもかかわらず、俗に「ローカルタレント」と呼ばれている方々が、香川県よりも圧倒的に多く存在していました。

いたずらに多かったわけではありません。テレビを点ければローカル局が独自に制作している番組も多く、そのほかにもローカルCMやラジオ番組、そしてイベント等、活躍できるフィールドの数に比例していたと思います。とにかく彼らの姿や声をよく目にし、耳にしました。

筆者が熊本で過ごしたおよそ30年前に活躍されていた、印象に残っているタレントさんを挙げると、こちらの方々でした。

かなぶんや

藤本一精

うんばば中尾

市街地の路地で、かなぶんやさんと筆者がお互い自転車でぶつかりそうになったのは、良い思い出となっています笑。出会い頭だからお互いさまなのに、かなぶんやさんだけが「ごめんなさいね」と言ってロードバイクで走り去って行った姿は、今でもしっかり憶えています。筆者は「か、か、かなぶんやだ!」と偶然のいたずらに唖然とし、なにも言葉を発することが出来ませんでした。かなぶんやさん、あの時は、こちらこそすみませんでした (^_^;)

街にはバギーパンツをはじめ、香川県とは違うファッションに身を包んた若者たちが溢れ、テレビ・ラジオを点ければ、それまで見たことも聞いたこともなかったローカルタレントの方々が登場する…

こうした背景に徐々に溶けこんでいくに従い、当時の筆者の眼には年齢的なこともあったのでしょう。熊本という場所はこのように映りました。

ここは独立国家だ!!

これはあくまで個人的主観なのでご理解ください。熊本という土地柄は、他府県の成り行きには関知せず、外から入って来る者を拒みはしないが、大手を振って受け入れもしない… 良くも悪くも独自路線を突き進んでいる地域のように見えたのです。

上に挙げたローカルタレントのみなさんも、それぞれの思い・考えのもと、地域に密着した活動をされていたと思いますが、その姿は、面白いこと・楽しいことは、日本のどこにいたって出来るということを体現されている方々のようにも映りました。

こうしたローカルタレントのみなさんを、筆者はたまたま熊本という地で身近な存在として捉えましたが、ローカルタレントと呼ばれているかたは、もちろん熊本以外の他府県にもいらっしゃいます。

首都圏の動向なんて関係ない、面白いことは地方にいる自分たちだけでもやれる…

やがてその思考は、この人の登場によって全国的に認知されたのではないでしょうか?

北海道が誇る天パおじさん・大泉洋さんのローカル番組『水曜どうでしょう』は、中央集権型だった当時のエンタメ界に一石を投じましたよね。

時は流れ、時代は令和になりました。

この面白いことは日本のどこにいたって出来るというスタンスは、現代のある人たちにも共通していると筆者は考えます。

そのある人たちとは…

YouTuberと呼ばれる人たちです。

いまや誰もがインターネットを通じ、個人エンタメの事業主として、自身の考えや作品を発信できる時代になりました。

そのYouTuberと呼ばれる個人エンタメの源流にいたのは、やはりローカルタレントと呼ばれる人たちではないでしょうか?

面白いことはどこにいても出来るという個人エンタメの扉に、まずローカルタレントが手をかけ、その重い扉をついにこじ開けたのが北海道の天パおじさんであり、後続のYouTuberたちに繋がっていったように思えてならないのです。

ローカルタレントという形態がこの世に産声をあげたその時から、すでに個人エンタメというジャンルは縦へ横へと増殖し、細胞分裂を繰り返していたのかもしれません。

30年前の熊本で目にしたローカルタレントのみなさん、そして北海道の天パおじさんこそ、現代のYouTuberである!!

そんなことを勝手に思った2020年の秋でした。

熊本在住時、大好きでよく食べていた味千ラーメンも、今ではどこにいようとネット通販で取り寄せられるようになりました。

🍀

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