見出し画像

ツナグ ツナゲル +hanaネットワーク GLOWER'S FILE ⑦〜稀少な国産のアンスリウムで本来の姿と美しさを広める、大佐和花卉園 前編〜

花びらのような葉っぱのような、つやつやと明るくトロピカルな雰囲気のアンスリウム。今回お届けした定期便の中に、入っていた方もいらっしゃると思います。これは、南房総の玄関口にある千葉県富津市の大佐和花卉園さんで育てられた、非常に珍しい国産のものです。
このアンスリウムがどのようなところでどのように育てられているのか、社長である平野圭祐さんに農園を案内していただきながらお話をうかがいました。


個性的な魅力を放つ、不思議な花


Q:切り花でアンスリウムは、葉っぱのように見えるハートの部分を鑑賞すると言われていますが。実はお花は軸みたいな部分なのですよね?
 
そうなんです。葉っぱのように見える部分は、花弁が変形した「仏炎苞(ぶつえんほう)」というもので、花はそこから突き出ている棒状の部分(肉穂花序:にくすいかじょ)に多数あります。ポツポツ見えるのが雌しべで、その周りに菱形の線が入っているところが花びらなんです。雌しべに対して、花びらが4つついています。

軸のように見える部分が花


Q:原産は熱帯のあたりと聞いたことがあります。
熱帯アメリカのコロンビアが原産で、熱帯に生息する植物です。
 
Q:種から育てるのですか?
いえ、オランダから苗を買って育てています。切り花のアンスリウム苗を取り扱っている会社は1社で、そこがずっと交配などをして新品種を出しているので。ハワイだけ、オリジナルブランドを作っています。
 
Q:熱帯植物なのに、苗はオランダで作っているのですね。
原種の生息域はシダ植物と同じジャングルや木の下で、他の木に着生したりしますが、組織培養で増やすとなると、花大国であるオランダの技術が必要なんです。
 
Q:アンスリウムの良さや魅力はどんなところですか?
基本的にのんびりな花なんですよね。1株からは2〜3ヵ月に1本採花できるくらいで。生産者としては、焦らずじっくり育てられるところは良いなと思います。いま何かこじらせると1ヵ月後に結果が出るので、そういうのんびりしたところも好きですね。
 
Q:オススメの品種はありますか?
淡いピンクの縁にうっすらグリーンがある、『プレミア』という品種です。色のニュアンスが美しくてオススメなんですけど、クセがあるので切るタイミングなど、育てる側としては気難しいです。

穏やかな気候の中で、ゆっくりじっくり育てる


Q:大佐和花卉園さんのはじまりを教えてください。
祖父はメロンやトマトを栽培していたんですけど、父が研修でJA豊橋のアンスリウム農家さんのところへ行ったことから、持ち帰って栽培しだしたのがはじまりです。私で2代目となります。
 
Q:平野さんが生産者になられたきっかけはありますか?
花の専門学校を卒業後、南房総にある組織培養をしている県の試験場へ1年くらい行きました。その後、国の海外研修プロジェクトに参加して、アメリカのバラ農園に行くことになっていたのが、不景気の影響でハワイのアンスリウム農家さんのところへ行くことになって。ブリーダーをされていたので、そこで品種のことや栽培について教えてもらっているうちに面白くなって興味を持ったのが、まずはきっかけです。そして帰国3日後に父が農協の役員になるタイミングだったので、いきなり私が後を継がざるを得なくなり生産者になりました。
 
Q:成育を始められたと同時に、農園も受け継がれたのですね。育てている花は、アンスリウムの他にありますか?
今はほぼアンスリウムのみですね。切り花だけでなく、葉も鑑賞用に出荷しています。
 
Q:農園の規模を教えてください。
2000坪です。そこにあるハウスの中で育てています。


広くて伝統のある大佐和花卉園のハウス

Q:販売状況はいかがでしょうか?
国の復興プロジェクトの一環で、福島でもアンスリウムを生産・出荷するようになって。その影響なのか国産のアンスリウムが伸びてきている感じで、需要が高まってきているように思います。主に花市場やお花屋さんに卸していますが、結婚式が多い時期だと足りなくなるので、豊橋のアンスリウム農園さんと連携して、作る品種を相談しながら育てています。
 
Q:需要の多い時期は大変ですね。
アンスリウムは、1株から年間で4~5本くらいしか採れないんです。ゆっくり育って、2〜3ヵ月に1回花が咲くような感じ。だからまとまった本数を出荷するためには、それだけ多く育てる必要があるので大変です。
 
Q:アンスリウムの切花は、国内ではごくわずかの生産しかなく、ほとんどが輸入品だと聞きました。
割りに合わないですからね(笑)。オランダから苗が来て1年くらいじっくり育てて、2年目くらいからやっと採花できるようになるんです。それから出荷できるのは4〜5年間くらい。暖房の燃料代や管理費、次の苗代を考えたら…厳しいですよね。だから数軒しか成育農家はないようです。

夏だけじゃない。実は通年楽しめるアンスリウム


Q:アンスリウムは熱帯のもので、夏のイメージがあるのですが。やはり夏が見頃で出荷も多いですか?
需要も高く売り時なのは夏ですが、1月と2月の雪の日以外はだいたい出荷しています。
 
Q:そうなんですね。1年中あるとは思いませんでした。
年間ずっとあるんです。8月に暑すぎると蕾の生育が止まり気味にもなりますし、植え替えなどもあるので、うちは9〜11月は若干出荷が落ち着きますが。それでも通年で出荷しています。冬の方が小さめの品種があるので、飾るのにはオススメです。冬から5月くらいが、一番花があるんですよ。
 
Q:+hanaは箱に入れてお届けするので、小さめの品種もいいかもしれません。冬にアンスリウムがあると、新鮮さもあるように思います。
うちは1年を通じて皆さんに飾ってもらえるようにするにはどうしたらいいのかが課題なので、お届けしてもらえると嬉しいです。


定期便でも送りやすい小さなアンスリウム

Q:通年で採花するために、季節ごとの品質保持の方法など、何かあるのですか?
暑さ寒さというより光と水分に影響される花なので、そこはものすごく気をつけています。数年前に台風でハウスの屋根が剥がされたので新しくしたら、光の量が変わったみたいで。2月ごろに茎が全然伸びなかったので、光が強くなっていたのかもとシートを増やして二重遮光にしたら、普通に戻って伸びだしたんです。今度は6月くらいに天気が悪いのが続いて、蕾が動かなくなって。それで遮光シートを一枚剥がしてみたら成長が進んだということもありました。今年は天気が例年と違って不思議な感じだったので、それでも安定した成長ができるようどうするかが、今の課題です。
 
Q:そうやって細かい調整を加えながら成育されているんですね。
中の白い遮光60%くらいのシートは通年で貼っているんですけど、屋根に黒いネットをはって光を落とすか、内側にもう一枚遮光シートを貼るか貼らないかの調整を状況によって判断しています。私は栽培屋さんなので、上手く育てたいというのが基本にあって。あとはうちの温室の環境と合わせて、その中でどう栽培していくかと考えることは好きだし、そこを考えることは必要不可欠だと思っています。



 おだやかでゆったり優しい口調で話してくださる、平野社長。これまでのアンスリウムイメージを覆しそうなほどの多種多様な品種を、焦らずじっくりと育てています。根気も見極めも重要な、成育の難しい植物をうまく育てたいという職人気質のような気持ちで向き合う平野社長の視線の先には、大きな夢もあるようです。次回も引き続き平野社長の想いや夢などをご紹介いたします。

大佐和花卉園のFacebookはこちら
Instagram @osawakakien
 
+hana公式サイト https://tasuhana.com/

+hana クッキー(プロフィール)『あなたの楽しみは花のために、花の魅力はあなたのために』をコンセプトとし、季節に合わせた素敵な花を、手ごろな価格でご自宅のポストにお届けするサステナブルな花の定期便「+hana(タスハナ)」の、リーダー&立ち上げメンバー。実現したい思いや夢を中心に、花のあるくらしや魅力、花の世界にあるさまざまな情報をお伝えします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?