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日記;父母覚書

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脳内出血で倒れた父と認知症の母。もう亡くなりましたが、日記にしたためていたメモを後悔する事に意味を感じ公開します。
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2024年6月の記事一覧

かの地:夏

かの地:夏

夏が近付くと、記憶の地が心を占める。
一気に私は幼い少女に戻り、
祖父と登った石段、神社、緑に覆われた山の中、祖母の炊くご飯。タクワンだけで何杯もお代わりした小さな私。
それ程に、山で食べるご飯は美味しかったのだ。

兄は蝶を採り、昆虫採集という小学校の課題に、多くの蝶を出品し、評価されー
後、蝶を殺したことを知り、心病んだ。

杉の生い茂る山の中、有名なK大生物研究所があり、
そこにはホルマリン

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七夕の短冊

七夕の短冊

(父母生前の日記より)

七夕の短冊に願い事を書きました。

七夕は祖父の命日。

父よ、貴方は仰った。

「オヤジは良い人間だったから、誰も忘れぬ日に逝ったのぅ」と。

祖父が亡くなった日、私はバスで戻り、死に目に会えなかった事を

悲しみました。人生で初めて、号泣しました。

「美しく泣け!」と・・貴方に叱られましたけどw

兄は、結局、戻りませんでしたね。

死を受け入れがたかったのです。彼

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母と紫陽花

母と紫陽花

(母:生前)

天気予報より雨が遅れたみたい。

蒸し蒸しして、時折、小さな雨がポツリポツリと車の窓ガラスに跡をつけたけど、

帰宅まで、何とか持った。

明日から終日雨って予報。

今日も病院ツアー。(四ヶ所だから、ツアーとでも書かなきゃやってられんっ笑〉

母は少し顔色良し。元々真っ白な綺麗な肌の母が、手術後、免疫低下か薬の副作用か、

痛々しく荒れて色も蒼白になってたけど

ボチボチ、状態回

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情動

情動

とある小説を読み、ある情景に我が身を重ねてしまった。

老いたヒロインが、それ以上に老いた認知症の母を見舞う日々。
母は動けず言葉も発せず、13年もベッドに横たわっている。それでもヒロインは
母を見舞い続けるのだ。

あるとき、老いた母が突然、虚空に白い腕を伸ばし、何やら掴もうとする。
”何か”ではなく、”誰か”の手を捜しているのだと、ヒロインは察知し母の手を自分の両の手で包み込む。

母の口から

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事の推移:2

事の推移:2

施設の対応があまりに不誠実であり面談も平行線にて、

安全性重視、利用者の安寧求め、市の

福祉介護課に相談、報告。

○過去に真夜中、ベッドから落ち、そのまま朝まで床で転倒していたこと。

○脱走の一回目、二度と起きぬよう、措置を介護主任さん他と話したこと。

○今回の脱走にては、運よく打ち身、擦過傷で済んだものの、施設側が

 不親切極まりない対応であったこと。

○父の過去から今日に至るまで

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事の推移

事の推移

(過去日記覚え書き)

早朝、ホームより電話あり。

父が二度目の脱走図ったとのこと。

四年前の脳出血により、高次脳機能障害を発症した父は、

本来の性格に加え、時に、本来の父ではない無謀な(思考欠落した)行動を

起こす。

四年間の経緯:救急搬送>命取りとめ>リハビリ病院にて三ヶ月>後、帰宅、デイケア、

訪問看護、ヘルパーさんの体制で二年間>母の認知症悪化したため、現在、両親ともに

介護

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七つのお祝い:母思ふ

七つのお祝い:母思ふ

着道楽だった我が母は

当事、裕福だったこともあり

馴染みの呉服屋から定期的に和服を購入

部屋中に広がった色彩の洪水に

子ども心に胸ときめかしたことを

覚えております

桐の箱に(多分)入った着物や帯を

美貌の母は目を細め乙女のような嬌声あげて

テーブルいっぱいに広げられたそれらを手に取り

見惚れておりました

幼稚園、年長の6歳ーわたしの数えで七つのお祝いに

母が選んだものは

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