あいして

愛さないで、教えてほしいの。
そう囁いた君の瞳はわずかに赤くなっていた。

君は、学年の中でもひときわ目立っていた。
小さい顔に、すべてを見透かすような大きな瞳。さらに、すらっと伸びた白く、今にも折れそうな腕。
容姿端麗。この言葉は君のために造られたのではないか。そう思うほど。

君との距離が近くなったのは、文化祭の準備期間。
2人で抜け出してコンビニに行ったり、帰りにゲームセンターで遊んだり、休みの日に映画を見に行ったりした。
ぼくたちが付き合うまで時間はかからなかった。

付き合って3か月目の夜、僕たちは公園で悲しい話をした。
君は泣きながら「愛さないでいいから、私に教えて本当の愛を」

それは、容姿が整いすぎたが故、周りから中身ではなく外見で愛されてしまっていた彼女が抱えていた呪いだった。
彼女はいつも不安だった。
本当の自分が知られたら、嫌われてしまうのではないか。と。

ぼくには、その呪いの解き方がわからなかった。
だから、ただ彼女をその呪いごと抱きしめるしかなかった。

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