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昔ながらのナポリタン

昔ながらのナポリタン。

クラシルのレシピを確認していると
ふとある事が気になり始めた。

昔ながら、って何だろう。

何となく、昔よく食べた味とか
分かるんだけど、ぼやっとしていて。

昔ながらについて考えていても
僕のお腹の鳴りは止まらない。

黙って、作りましょう。

日本のような苦味の効いた
ピーマンは残念ながら売っていないのだ。

だから緑色のパプリカで代用。

種を取って、ザクザクザク。

玉ねぎも細切りにザクザクザク。

ソーセージも薄い方が好みだ。

ソースが絡みつきやすくなる。

ニンニクは包丁の腹で
体重を掛けてミシっと!

皮が格段に剥きやすくなる。

フライパンが熱くなってきたところで
玉ねぎとソーセージのダンスから
ショーは開演されるのだ。

パチパチと音を立てながら
玉ねぎはしおらしくなっていく。

ソーセージの水分と相まって
艶やかな玉ねぎにまた姿を変える。

パプリカを投入。

これは生でもいける。

ただ、甘味が感じられるぐらいに炒めたい。
緑色がフライパンを彩り、ショーを盛り上げる。

ブイヨンを入れる。

フライパンに満たされた
野菜の水分とソーセージの
肉汁で焦げないように溶かす。

すると聞こえる、チン!の音。

電子レンジの中で
パスタが茹で上がった。

炒めることを想定して
少しだけ時間は短く。

さあ、主役の一人が登場。

フライパンの脇に食材を寄せて寄せて
黒色の肌に直接ケチャップとニンニクを投入。

焦げすぎない程度にケチャップに熱を入れる。

芳しい香りが徐々に劇場を包み込む。

すると、食材と合流させて、
味が馴染むようにダンスを再開。

最後の主役。パスタ。

水を切ったパスタと
ケチャップの香ばしさに包まれ
食材達が踊り続ける。

トングでガサガサ。
パンの上をピョン。

ファンファーレも終了。

お皿に盛り付けられて
ショーはお終いである。

パスタをくるくると
フォークでひねり上げ
一口を食べる。

美味しい。

甘い玉ねぎ。

パプリカはフレッシュ。

少々のニンニクと
ブイヨンの奥深さ。

また口の中で広がる
ケチャップのほんのり焦げ味。

ソーセージの中には
チーズが入っているのだ。

焦げ味とまろやかな甘味が
食欲を無限に駆り立てくる。

*昔ながら*への疑問なんて
頭からとっくの昔に消えていた。

一皿を完食後、3時間が経過。

フライパンの中にいる作り過ぎた
冷たいナポリタンと目が合ってしまった。

ダメだよなあ、ダメだよなあ。
せめて、あっためないとなあ。
お皿に移してやんないとなあ。

と色々考えた。

が、気づいたらフォークを
フライパンに差し込んで食べていた。

美味しい。

何か視界が広がったような。

昔ながらのナポリタン。

それは誰しも口にしたこの味。

冷えても温めてもこの味。

少しパサパサぐらいが丁度良い。

家庭環境なんて関係ない。

皆が生きてきた歴史の中に
ひっそりと側にいてくれた
昔ながらのナポリタン。

時に主役として、時に脇役として。

時に冷たく、温かく。

主役も張れる名バイプレーヤー。

また、味だけが昔ながらではない。

皆、どこかで見たことがあるのだ。

時に弁当の端、時にフライの下。

昔ながらの味。

人の記憶が詰まったノスタルジーな味。

詰まった記憶は人それぞれ違う味。

フライパンはすっからかんになっていた。


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