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【365日のわたしたち。】 2022年4月29日( 金)

さよならの代わりに、あの百恵ちゃんは歌を歌った。

じゃあ、私は?



目の前ですがってくるこの男に、私は何を置いていけるだろう。

足蹴りだろうか。

罵声だろうか。


後ろのベットに腰掛けている女が、携帯をいじりながら、気にしていないようなふりをしてこちらの様子を伺っている。


サプライズで家訪問してみたら、まさかの逆サプライズが用意されていたなんて。

一瞬で、恋心の温度が氷点下200℃まで下がったよね。

側から見れば、これは修羅場なのだろうけれど、当の本人である私は、かなり冷静だった。


さよならの代わりに…。





「これっきりです」


私はそう言って、彼の体から自分の足を引き剥がし、玄関を出て行った。

突然舞台を用意されても、やっぱりうまくはできないもんだぁと、道を歩きながらしみじみと思った。


次は事前に用意しておこう。


帰り道は、春にしては強すぎるほどの日差しだった。

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