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フランス人に教わった気取らない手作りピザのある暮らし

ピザを生地から作るのは手間暇かかり、特別なことだと思っていた。
その先入観が覆されたのは、スウェーデン留学でシェアハウスに住んでいた時、フランス人のハウスメイトが日常的にピザを食べているのを見てからだ。

そのハウスメイト、クラーラは週に2、3回のペースでピザを食べていた。最初は市販に既成のピザ生地を使っているのかと思っていたら、よくよく見ると生地の形が毎回違うし、ちょっと歪だし、手作りだということが分かった。
そして、それが毎度とても美味しそう!
その時々で、トマトベースにナスを乗っけたり、リークというヨーロッパの長ネギを乗っけたり、ベーコンを乗っけたり、あるいは色んなチーズやオリーブやマッシュルームを乗っけたり。
「今日は何のピザ食べてるの?」と聞くと、「んー、冷蔵庫の残り物全部乗っけた〜」なんて時もあった。
まるで日本人が、残り物で丼ものを作るときのように、ピザを作っていた。しかし、クラーラがピザ生地をいつ作っているのかが謎だった。イタリアンシェフのようにピザ生地を叩いたり、伸ばしたりしているシーンを見たことがない。気づくと、ピザ生地はできていて、あとは広げて具材を乗っけるだけ、という状態になっていた。
クラーラは料理上手だし、よほど手際よくチャチャッと生地を作っているのかと思っていたが、どうやって作っているのかが気になってある日とうとう本人に聞いてみた。
「ピザ生地っていつも自分で作っているの?とても美味しそう…。」と聞くと、クラーラは「そうよ。すごーく簡単だから、次作る時教えてあげようか?」と提案してくれた。

その次の時はすぐにやってきた。確か翌日か翌々日に、私が部屋にいるとクラーラが部屋のドアをノックしてきた。「今からピザ生地作るけど、見る?」と。
いそいそと部屋を出て、見学させてもらった。
必要なものは、強力粉、イースト、塩、オリーブオイル、ぬるま湯だけだ。
これを順番に混ぜる。均一に混ぜる必要はなく、ざっくりと混ぜれば良いらしい。作業を始めて終わるまでにものの5分もかからない。
あとは、濡れ布巾をかけて室温で1時間くらい置いて発酵させておくだけだ。
これで完成。
何とも呆気ない。
1時間後、その日使う分だけ取り分けて、丸めて、好きな形に伸ばす。クラーラはいつも四角いピザを作っていた。そして、そこに具材を乗せて、焼くだけだ。
残った生地は何個かに分けて、冷凍しておくらしい。次に食べる時には解凍して、成形すればすぐに作れる。

こんなに簡単なのに、焼き上がったピザ生地は外側がカリカリサクサクして、中はフワフワしてて美味しい!もちろんイタリアンレストランの石窯で焼いたモチモチのピザ生地みたいにはならないけど、市販の既成のピザ生地よりは(手作りへの愛着も相まって)断然美味しい!
普通に料理するよりも時短で手軽に食べられるので、クラーラに教えてもらってから、ピザは私の定番レシピになった。特に試験中の忙しい時に、ピザはピッタリだった。5分もすれば生地をつくる作業は終了だし、1時間発酵させている間に勉強ができる。一度にたくさん作って冷凍しておけば次の日以降は解凍して、成形して具材を乗っけて焼くだけだ。片手で食べれるので、食べながら勉強もできる。
何より、焼きたてのピザは格別に美味しい。熱々トロトロのチーズ、お好みの具材、カリカリの生地。これを気軽に家で食べれるなんて。具材に野菜も肉も乗っけられるので、一品で栄養を全部取れる点も含めて最高だ。
私もピザをしょっちゅう食べるようになったのを見て、ハウスメイトたちもクラーラにレシピを聞きに行った。まもなくクラーラのピザ生地レシピは、シェアハウスの共同冷蔵庫にメモ書きで貼り付けられた。
みんなピザをしょっちゅう作るようになって、色々な味付けのピザをシェアするようになった。何でもない日に、各自が作ったピザを交換しながら、他愛無い話をした夜もあった。
一度私が照り焼きチキンピザを作ったら、皆興味津々で覗き込んできたので、全員に一切れずつ配って、私の分がほとんどなくなったこともある。でも、皆照り焼きチキンピザを気に入っていたので、あげた甲斐があった。
そういえば、私はピザ生地の耳の部分が好きなので、成型のときにあえて端っこを丸めて耳を作る。これがクラーラにとって目から鱗だったらしく、程なくしてクラーラのピザにも耳が付くようになり、他のハウスメイトにもピザ耳は布教されていった。かくして食の異文化交流は進むのだ。

日本に帰国後も私はクラーラ直伝のピザをしょっちゅう作る。特に週末のご飯を作る気力がない時、このレシピは大活躍だ。
簡単なので旦那もしょっちゅう作ってくれる。
父親にも教えたら、父親も実家でちょくちょく作るようになったらしい。これはもうピザ革命と言っても過言ではない。
忙しい我々現代人の日常に寄り添う普段使いのピザ。
それがクラーラ直伝の手作りピザなのだ。

冷蔵庫の残り物で作ったピザ
レポート書きながら食べたピザ
何人かでシェアしたピザ
とうもろこしと食べたピザ
海老とドライトマトとバジルのピザ
ハーフ&ハーフ。これもみんな真似していた。



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