映画「子供はわかってあげない」プロダクションノート

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#16 撮影前

ロケハン。聞いたことがある人もいるかもしれない。いわゆる、ロケットハンターの略である。この地球上から飛び立つ、無数のロケットを探し、それを飛び立つ前に食い止める。映画の撮影隊は、まず、これをやることになる。ロケハンはだいたい、撮影の1、2ヶ月前には、始まり、主に制作部と呼ばれる人たちが行う。ロケットがありそうな場所をみつくろい、探し、それを監督やスタッフたちが、大きな車に乗り込み、そして、実際に見

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#14(の裏) 地獄にて1

橋の上で、ドローンを操縦している骸骨がいる。帽子をかぶり、りんごのマークの電子機器に囲まれている。この地獄の風景を、だいぶ高い所から俯瞰で撮影しているようだ。恐る恐る話かけてみた。物静かだが、聡明な感じの人だった。オズさん、という名前らしい。オズさんは、昔、映画の仕事をしていて、生前はかなり低い位置にカメラを据えて撮っていたので、その反動から今はこっちの世界で、すっかり、ドローンにハマってしまった

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#15 もじくんのオーディション

さて、この映画に出てくる、もう一人の若者。それは門司(もじ)くんである。門司くんは、書道部で、絵も上手。繊細だが、内に秘めた力強さも持っている。さて、一体この役を誰がやればいいのか。美波と同じように、こちらもオーディションで選考することにした。美波と同じように、こちらもオーディションで選考することにした。

募集をかけたところ、まず、書類が2万通ほど届いた。そこから、だいたいざっと目を通して、軽く

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#14 オーディション

さて、沖田が死んだなんて冗談はさておき

台本は、書き直しつつ、撮影の準備はしていかなくてはいけない。ここから、主に、キャスティングとスタッフィングをしていくことになる。誰が出て、誰と映画を作るのか。まず、何はなくとも主役である。主人公の美波は、オーディションという形をとった。いろいろな可能性の中から、美波を選びたかった。来てくれる女優さんと直接、話をして、それで決めることができるなら、それが一番

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#13 新しい朝 〜沖田と芸能界〜

ある朝、N氏は思った。そうだ。沖田修一なんて、顔知ってる人、ほとんどいない。
そうだ。映画監督なんて、名前ばかりで、顔なんて、みんな知らないんだから、誰か沖田さんになっちゃえばいいんだ。まさに、青天の霹靂といったところか。N氏はそれから、ベッドから起き上がると、起き抜けに洗面所で自分の顔を見た。

「はじめまして、沖田です」
と、声に出してみた。
いける。いける気がする。
今日から俺は、沖田修一だ

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#12 閻魔

閻魔が、まさか「横道世之介」を観ていたとは思わなかった。
映画が好きらしく、「テネット」も、2回観たという。IMAXレーザーがおすすめらしい。閻魔は、そういうと、私に天国か地獄か、どちらかを選んでいいと言った。普通は、閻魔の独断と偏見で決めるらしいのだが、たまたま「横道世之介」を観ていたらしく、好きに選んでいいと、情をかけてもらう形となった。いい閻魔だった。去り際に、「滝を見にいく」もいいよね。と

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#11 葬儀



沖田が燃えている。

葬儀は、都内の斎場にてしめやかに行われた。誰も彼もが、沖田の死を悼んだ。よほどの人だったのだろう、沖田という男は。全国各地からやってきた参列者は後を絶たず、彼を慕う若者たちや、付き合いのあった若い女たちが、いたるところで涙を流していたのである。さすがは沖田である。しかしながら、沖田を快く思わない者も少なくなかった。撮影現場での度重なる暴力、パワハラ、セクハラと、やりたい放

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#10 親の小言と茄子の花には無駄がない



プロダクションノートとは、なんだろうか。実はよく知らないままに使っている。それも変なので、来週あたりから、もう少し、わかりやすい題名に変えようと思う。
『映画「子供はわかってあげない」ができるまで』にしようと思う。
映画ができるまでを書きます。

さて、田島先生との打ち合わせの帰り道、その出版社の最寄りの駅前に、私の母校があった。これは偶然である。その学校の横には、大きな寺があり、その更に横に

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#9 先生



無事、佐渡から生還したT氏、そして、脚本の国へと渡り、いろいろあった私とN氏。そして、いよいよ人間の心を取り戻した、脚本の国のふじきさん。ようやく4人が揃い、今は、この小さな喫茶店で、せせこましくテーブルを囲み、コーヒーを飲んでいる。集まったのは他でもない、原作者の田島列島先生に会いにいくためである。集合時間よりかなり早めに待ち合わせした我々は、わずか10分で話すことは話し、ほとんど時間を持て

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#8 金の話



さて、今回は少し堅苦しい話になるかもしれない。金の話である。プロデューサー志望の方なら、読んでおいて損はないだろう。現在、日本映画の多くは、製作委員会方式が一般的となっている。いわゆる、出資企業の集合体である。一本の映画に対して複数の企業が事業費(製作費+配給宣伝費)を出資し合い、資金のリスクを分散する仕組みだ。各企業の出資金の額により、出資比率が決まり、映画公開後の収益から出資比率に沿った額

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