沖田修一

せたペイは、全部、俺が仕切ってます。還元したりしなかったり、ごめんよ。

沖田修一

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  • 制作の途中

    日記のようなもの、2006~2020 http://konosubarasikieiga.seesaa.net/ これから、こっちにまとめておきます。 運動したり、本を読んだり、映画を観たり、休んだり。

  • 映画「子供はわかってあげない」プロダクションノート

    カントク沖田の妄想プロダクションノート 全部嘘です。嘘じゃないかもよ。

  • 連載小説『意外と知らない父のこと』

    好きで書いてみたもの。

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最近の記事

バイバイ レンタルビデオ

ドラマの撮影が終わり、仕上げ作業をしている。 いいドラマにしたい。 今、新しく、レンタルビデオ屋さんを、開業したら、どうだろうか。 やっぱり、ダメなんだろうか。 個人営業の範囲で。 並ぶジャケットの中から、知らない映画と出会いたい。 半日くらいかけて、店中を歩き回り、借りる作品に悩んで、疲れたい。 3本1000円だったからこそ、必死で探したのだ。 返さないといけなかったから、必死で観たのだ。 返すから、また借りたのだ。 高い延滞金を払う時の、あのどうしようもない怒りを。 自

    • 心配だ

      ヤクルトレディーが心配だ。 ヤクルトレディーは、今、一番、この世界がおかしいことに気づいている。 ヤクルトレディーは知っている。 なぜ、飲むとストレスを緩和するという、ヤクルト1000がバカ売れしているのか。 世の中は、ヤクルト1000ばかりを求めている。 ストレスまみれの世の中だ。 安眠できない人ばかりの世の中だ。 ヤクルト1000は、この日本に住む人たちの、悲痛な叫びだ。 それを、毎日、そばで聞いているのが、ヤクルトレディーというわけだ。 よって、ヤクルトレディーは、イ

      • さかなのこ、について最初に書いたこと

        さかなクンの映画を、という企画書を読みまして、面白そうだと思い、自分から手を挙げました。どうしてこんなに、みんながさかなクンを好きなのか、気になっていました。自分もそうですが、何かが好きで、毎日そのことだけを考えてしまったり、そればかり執着した時の気持ちは、一番強くて、その力が原動力となって、何か思いがけず、生き方を見つけたり、進む道になっていたりするように思います。そんな気持ちを、さかなクンの映画を通して、痛快に描けたら、面白いなと思いました。さかなクンは、ある意味で、ヒー

        • 映画『さかなのこ』 によせて

          早い。もう9月だ。 撮影していたのは、去年の5月くらいだったから、いつの間にか、映画はできて、気がつけば、今日公開した。 映画撮影の苦労は、実は、あまり映らないらしい。 できたものが面白ければ、それでいい。 過程は知らない。 むしろ知りたくない。 でも、「さかなのこ」は、かつて自分が関わった作品の中でも、一番を争うほど、大変だったと思う。 ずっと海にいるような感覚だった。 体は重く、泳いでも泳いでも、前に進まない感覚。 溺れかけたことも、強い波にさらわれたこともあったし、ま

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          映画 「おーい!どんちゃん」 公開によせて

          映画「さかなのこ」の公開をよそに、もう一つの監督映画が公開されようとしています。それは、「おーい!どんちゃん」という映画です。完全に沖田が個人で制作した自主映画ですので、ここに、どんな映画かわかるように書いておきます。いわばパンフレットのようなものです。 ■イントロダクション 「おーい!どんちゃん」のなりたち 「おーい!どんちゃん」は、極めて個人的な映画です。なぜなら、自分の娘が出演しているからです。ちょうどワークショップで出会った俳優たちと一緒に、何か短いドラマのような

          沖田修一監督特集上映決定

          ○8月12日〜18日 ヒューマントラストシネマ渋谷にて 『南極料理人』『キツツキと雨』『滝を見にいく』 ○8月19日〜25日 シネ・リーブル池袋にて 『モリのいる場所』『おらおらでひとりいぐも』『子供はわかってあげない』 ○8月26日〜31日 テアトル新宿にて 『横道世之介』『おーい!どんちゃん』 上映時間など、詳細は、テアトルのHPをご覧ください。 もう一度、スクリーンで観たい映画も、観る機会を逃していた映画も。ぜひ、今回の機会に、劇場へ足を運んでいただけると幸いで

          映画「さかなのこ」

          監督した映画が今年公開になります。 「さかなのこ」という映画です。 日本人なら、おそらくほとんどの方が知っている、さかなクンにまつわる映画です。 さかなクンの半生を、オリジナルストーリーとごちゃまぜにしながら進む、不思議なストーリーです。 この映画を通して、たくさんの、おさかなさんに出会いました。 今まで水族館で見てきた、あれやこれやが、新鮮に思えました。 いつも食べていたあの魚たちが、違って見えました。 9月1日公開です。 よろしければぜひ。お見知りおきを。 映画「さ

          第八話 「父とお酒を」

          帰りの新幹線に、私は一人でいた。新神戸の駅で雄太とは別れた。雄太は改札で、私に握手を差し出し、私が添えるだけの握手で返すと、なぜかハグしようとしてきたので、やんわりと逃げた。いつまでも手を振る雄太をあとにして、私は、エスカレーターを駆け上がった。  今、私の手元には、一本の日本酒がある。あの幸男さんに出してもらった、古い『神童』である。木の香りのする、あの酒だ。一升瓶をリュックに突っ込んで、持ち帰ろうしたが、その重さでグラつき、リュックから落ちたりしないか心配で、私は仕方なく

          エイを貰う

          唐突に、エイを貰った。 白い発砲スチロールの箱に、巨大なのが一匹と、中くらいのが三匹いた。 水族館で見るやつだ。 こっちに向かって泳いでくると、思わず声をあげてしまうようなあれだ。 肝が超うまいらしい。 私は、計四匹のエイを前にしたまま、しばらくは途方に暮れていたのだ。 が、こうしている間にも、その新鮮さは失われてしまうだろう。聞けば。今朝、地引網で取ってきたのだという。 私は、もはや、茫然と突っ立っているわけにはいかなかった。 私は、急がなくてはいけない。 エイ

          カーシェア

          カーシェアのサービスを利用している。 近所の駐車場にある、青い日産ノートに、よく乗っていた。 いつしか、違う車になり、あの青いノートには、乗れなくなった。 今日、町を歩いていると、向こうから、見覚えのある、青いのノートが通りすぎた。 まさかと思い振り返ると、車の後ろに、カーシェアのシールが貼ってあった。 間違いない。 あいつだ。 あいつ、元気でやってんだな。 俺は歩きだす。 なぜか、元カノにあったような気持ちだった。 元カノが元気でよかった。

          第七話 「彼岸花」

          後日、両家はもめた。それもそのはず、大事な桶一つが、売りものにならなくなったのだ。城戸酒造の損害は思ったよりも大きい。沖田家は、深く謝罪した。そして、その日から、新之助は更に荒れた。沖田の子供たちも、それ以来、あまり家に近づこうとはしなくなった。たまに沖田の家から、新之助のものと思われる怒号が聞こえてきて、幸男はそれを聞くのが、たまらなく嫌だった。  ある日、幸男が学校から帰ると、母の睦美が、神妙な顔で玄関で待っていた。促されるように、居間へ入ると、そこに、あの昌平が立ってい

          手書きの練習

          二度と手書きなんか、やんねえ。

          第六話 「幸男」

          第五話 「城戸酒造の話 その2」

           今、私は手ぬぐいで目隠しをされたまま、五種類の日本酒が入った小さなグラスを、順番に味わっている。あらかじめ味わった酒の味を舌で覚え、それを目隠しをしてランダムに口に含み、どの味かを、それぞれ当てていく。いわゆる利き酒である。が、初心者の私にとってはゲームのようなものである。 「最初が、宮城のもので、次が、京都、あと、三番目が、埼玉のもの?かな、それで、灘のやつがあって、長野のがあって・・最後に神童でしょうか?」  そう言って、私は手ぬぐいを取った。横にいた雄太が、唖然として

          第四話 「城戸酒造の話」

           透き通った水のような、淡い色をした酒を前にして、私はかしこまっている。隣では雄太が、物欲しそうな目で、その酒を見つめていた。中庭に生えている銀杏の葉が風に揺れて、縁側から今にも入ってきそうだ。そのカサカサとした、心地よい音を聞きながら、私は、グラスを持ち上げた。 「いただきます」 『神童』を一口いただく。その透明感のある味の奥底に、ほのかな、独特の香りに気づいた。その苦みが、どこか懐かしいような、そんな気がした、これはなんだろう、そうだ、木の味だ。木の味がする。 「いかがで

          第三話 「神童」

           幸男さんが、ハッピーターンの粉を口につけながら、ボリボリと齧り、そしてゆっくりとお茶を飲む。その姿はさきほどの痴呆老人とは思えぬほど、はっきりとしていた。私の姿を見たショックから、ああなったのだろうか。泣いたら、目が覚めたのだろうか。先とはまったく別人のようである。幸男さんが遠い目をして言った。 「昌ちゃんは、桶の中の、ほんの小さな濁りさえも見抜くほど、まさに天才的な味覚の持ち主でした」  城戸幸男。昭和の時代から、この城戸酒造を守り続けてきた人であるらしい。今は、息子夫婦