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茶ノ湯の掛物;008 鶴宿千年松

鶴宿千年松
つるはせんねんのまつにやどる

「鶴」は長寿・吉祥のモチーフとしてしばしば用いられます。
古代中国では仙界に棲むといわれており、実際に他の鳥よりも寿命が長いようです。

日本でも特別な存在であります。
昔話や折り紙、千円札、某航空会社のシンボル等々、、、
馴染みの深い鳥です。

体長は約102~147cm程度
翼長は約64~67cm程度
翼開長は約240cmにも及びます。
日本で最大級の鳥類といわれています。

特質すべきは、あのゆったりとした美しいシルエット、、、
スッと伸びた姿勢と、視線は明日をしっかりと見据えているような高貴さが漂います。。

羽や足などの色彩も至ってシンプル、
配色のバランスなどは抜群に美しいものです。

鳴き声は・・・
聴いたことはありませんが、、
「鶴の一声」という慣用句があるように、
辺りを静まりかえせるほどの迫力を孕んだ
大きく、遠くまで響き渡る見事な声だと推察されます。

利休さんがしばしば用いていたと伝わる
古銅花入「鶴一声」が思い出されます。
花を入れずに水だけを入れたという逸話の残るそれです。
※花入「鶴一声」については、別の機会にまとめたいと思います。

さて、随分遠回りになっていましました。。。

「鶴宿千年松」

似たものに
「鶴宿松」
「白鶴宿老松」
「鶴栖千年樹」
「鶴棲君子樹」
などがあります。

今回の「鶴宿千年松」は「廬山記」の「廬山に籠る隠者」からの引用です。

風鳴雲外鐘
鶴宿千年松
相思杳不見
月出山重重

鶴は千年の老松に宿る
その辺の木ではありません。
松の、しかも、千年という月日を経た老松、、

その枯れかじけたその松に、
ピンっと背筋を伸ばした、
白い白い鶴が宿っています。

千年の寿命を持つ鶴は、
千年の樹齢の老い松に宿る。

千年の松に宿るべきは、
千年の寿命を持つ鶴である。


今、私がいる場所が、
自分に相応しい場所であるか。

今、私がいる場所に、
自分は相応しい人物であるか。


宿りたい場所があるのならば、
目指すべき場所があるならば、

いつか
千年の松を宿り木とするに相応しい、
鶴になれるように、

背筋を伸ばし、
一日一日、一瞬一瞬を
直向きに前を見て、
歩んでいくしかないのかも知れません。

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