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ライター、文字単価アップのための一大決心【前編】

2020年8月以降、ライティングの新規案件について単価に関わらず「無記名記事」の受注を中止することにした。数多のウェブメディア戦国時代。求人募集を見渡す限り、半分、いや、7~8割近くの募集は無記名記事のような気がしているが、重々承知の上での決心である。

ライターとして単価アップにもがく人、仕事の受注に悩む人にとって、ひとつの参考になればと、今回の決心に至るまでの思いをつづってみようと思う。


原稿の単価を「文字」で計るようになったのはいつからなのだろう。少なくとも、私がテレビマンとして働き始めた2011年のころは「1文字〇円」という表記は見かけなかったように思うが、それはただ私が記名記事だけを引き受けていたから そのような表記に縁がなかったというだけの話かもしれない。

掲載スペースの都合があるため文字数は指定されるものの、文字数をもとに単価が決まるということはなかったように思う。(もちろん、特集記事など明らかに文字数が多いものに関しては話は別)

なんなら、極端なたとえだが 20,000文字の原稿と200文字の原稿、どちらが大変かというと圧倒的に後者だ。仮に文字単価が1円だとして、後者が200円にしかならないとすれば、それは書くことを生業にする人々をあまりにも侮辱しているように思う。


ウェブメディアの勢いが加速し、Googleの検索上位に表示されることを狙ったサイトがあふれるようになってから、「登録記事を1つでも多く増やすこと」「登録記事を少しでも長く書くこと」を求めるクライアントによって「無記名記事」の発注が加速していく。

無記名記事になった途端、専門家でもない人間がネットで検索しまくること(だけ)を「リサーチ」と称して、コピペだと言われないように適当に情報を組み合わせて記事を納品していく。「いかがでしたか?」と文末に問う謎のテンプレは、内容が薄いサイトの典型的な特徴になった。書いている本人に手ごたえがないから、どこの部分で読者にインパクトを与えられるか書き手自身が迷走しているのだ。イジワルなことを言えば、あなたの文章力の荒が目立って仕方なかったですとつい文章力について意見したい気さえする。


一部の例外はあるものの、書いている本人に責任の所在がない分 無記名記事は記名記事と比べて簡単だ。記名記事からライターの仕事を始めた身としては、無記名記事は書くことそのものに時間がかかったとしても、文責がないぶん脳に汗をかきながら執筆することが限りなく減ったと思う。

そう思っているのが私だけではないからか、記名記事よりも無記名記事のほうが単価が安い。ここ半年ほど無記名記事を書いてみたが、「ひとつのクライアントに対し継続して記事を書いた」「アイキャッチ画像をオリジナルの写真で納品した」「文章のクオリティを評価していただいた」この3点の条件がそろって、ようやく文字単価3.0円だ。これを高いとみるか安いとみるかは各自の判断にお任せしよう。私としては、無記名記事での1文字3.0円ははっきり言ってこれでも安い。


ウェブメディアに限らず、テレビや雑誌において「著名なメディア(番組や誌面)に出演した/掲載されたことが実績になるから」と割安で仕事の発注がなされることは少なくない。

無記名記事で致命的なのは、安いわりに実績にならないことだ。

今回、私が今後のライティングの新規案件について「無記名記事は単価を問わず引き受けない」と大きな決心をしたのは、無記名記事のクライアントからのある一通の“吉報”が引き金だった。

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後編につづく。

2020/08/09 こさいたろ


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