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元〇〇時間テレビのディレクターがバチェラーの面白さを力説する

【はじめに】
話のキーとなるネタバレはありません。「バチェラー」シリーズのファンの方はもちろん、未視聴の方もどうぞ安心してお読みください。


日本における恋愛リアリティーショーの先駆けともいえる番組「あいのり」や、若い世代を中心に良くも悪くも話題になった「テラスハウス」。そのどちらにも全くハマらなかった私が「バチェラー・ジャパン」に夢中になった。

どのくらい夢中かというと、ちょうど1年前に人生初の陣痛が来たとき、産婦人科のテレビにちゃっかりAmazonスティックを差して痛みを乗り越えながらバチェラー・ジャパンを見ていたくらい、ハマっている。(ちなみにその時はなんとなく気分的にシーズン2だった)


男女逆転版「バチェロレッテ」の配信が始まり興奮さめやらぬままツイッターやフェイスブックではしゃぎ倒した私に対し「テレビマンから見てもそんなに面白いの?」というコメントをいくつかいただいた。

また、昨日更新した「バチェロレッテ・ジャパン」感想note(※こちらはネタバレあり)の閲覧数が、他記事と比べて文字通り桁違いの閲覧数になっていることにも、驚くと同時にその注目度の高さに感心している。

時間がない方のために、ハマりやすい理由を先に箇条書きでご説明しよう。

理由1 CM皆無で視聴ストレスゼロ
理由2 ワイプ(小窓)皆無でストーリーに集中できる
理由3 バブル時代のテレビ局も驚く予算のかけかた
理由4 すべてが映画のように“映え”ている
理由5 テロップは最小限、決して“画”を汚さない

テレビ局で番組を製作していた私から見ると、【番組制作の鉄の掟】のようなものをバチェラーはことごとく裏切ってくる。それはもう、気持ちがいいほどに。

Amazonの回しモノでもなんでもないのだが、上で挙げた5つの理由について、それぞれもう少し詳しく書かせていただこう。(オタクが早口で話しているイメージで、読み飛ばしながらほどほどにどうぞ)


まずは「理由1 CM皆無で視聴ストレスゼロ」。

Amazonプライムで配信されているコンテンツはすべてこのCM無しの仕様だが(※話と話の間のみ15秒CMが1本だけ入る)、日本のテレビ番組ならCMを2回くらいまたぎそうなシーンでも、サラリと視聴できる。バチェラーを実際にご覧いただくと分かると思うが、日本のテレビに慣れ過ぎてしまうと「ここでCM」かなと素人でも予感してしまうシーンが実にたくさんある。それでも、サラリと結論を発表するため、むやみやたらと煽られることがなく視聴する上でのストレスがとても少ない。

続いて「理由2 ワイプ(小窓)皆無でストーリーに集中できる」

登場人物であるバチェラーと、バチェラーを取り合う20名ほどの女性たち。さらに、これらの登場人物についてVTRを見ながら語るタレントがどのシリーズでもスタジオに2~3人いる。

番組におけるワイプのゼヒはテレビ局時代も各クリエイターによって意見が分かれることが多かった。肯定派は「ワイプにアイドルがいると最後まで視聴率を維持できる」「一般人メインのVTRだと絵力が弱いためワイプに大御所を写す」「ワイプにVTRを見ているタレントがいることで、テレビを見ているのは自分ひとりではないと孤独にさせない」など、作り手の数だけワイプを入れる理由も様々だ。

一方で、「VTRを見ていてもワイプのタレントが気になって注意が散漫になる」「ワイプのわざとらしいリアクションが不快」など、否定派も少なくない。実は私も、裏でワイプ芸人と言われる一部のタレントを除いて、ワイプは否定派だった。さらに大御所になってくると、映る側としてもワイプを嫌う出役も少なくない。コロナ禍で一躍シェアを拡大したZOOMで人と話したことがある人にはなんとなく理解できるだろうか。なんらかのリアクションを求められながら20分、30分もVTRを見ているのは実は思ったよりも苦痛を伴う。

バチェラーに登場するのはいずれも【ほぼ一般人】でありながら、ワイプは一切入らない。スタジオの「えー!」などといった歓声に自分の感想を横取りされることもない。それでいて、本編のVTRとはしっかり切り離した状態でコメント慣れしたスタジオのタレントの意見を聴けるため、今の日本のテレビに辟易している人には特に見やすいのではないかと察する。


どんどんいこう。「理由3 バブル時代のテレビ局もびっくりの予算のかけかた」

実際に予算を見聞きしたわけではないのだが、私が経験したことがないほどの予算がかかっていると画面から容易に想像できる。どんな部分を見ているかと言うと、ざっくり「ロケ地」「衣装やメイク」「カメラ台数」の3つだ。

番組予算が減れば減るほど海外ロケ番組は減少し続け、ディレクターがハンディカメラを手に単独でロケをするような低予算海外ロケ番組が増えてきている中、バチェラーはいとも簡単に海外に飛んでしまう。出演者はもちろん、スタッフは総勢何名になるだろうか。現地スタッフがいるとしても相当数になっていることが映像から見て取れる。さらに有名な水族館を貸し切り、プライベートビーチ、リムジン貸し切り、ここまでは序の口。プライベートジェットやオリジナルの花火大会など、ロケに伴うお金のかけ方は尋常ではないだろう。

さらに各話で見どころのひとつである出演者の衣装やヘアメイク。次項でも解説しようと思うがどのドレスや衣装も見ていてとても美しい。ローズセレモニーと呼ばれる薔薇の受け渡しイベントのときはとくに、出演者の愛憎はともかくまるでファッションショーのような美しささえある。

そしてなんといってもカメラ台数。出演者以外のスタッフがその服の端切れ1つさえも映りこまないという徹底ぶりにまるで映画のようなこだわりさえ感じているが、ドローンはもちろん、一体何台カメラがあるのかと画面を見ながら数えてしまう。パーティーひとつをとっても天井から全体を写すカメラ、バチェラーのまわりを写すカメラ、バチェラー以外の女性陣のトークを写すカメラ、さらにはバチェラーの一人語りインタビュー、各女性のひとり語りインタビュー…と、相当のカメラが回っていることが想像できる。カメラの台数が多いということはつまり、それだけ編集も手間がかかるということだ。


できるだけかいつまんで話そうとしてもついつい長くなってしまう。次。「理由4 すべてが映画のように“映え”ている」

ドローンの絵にうっとりとするだけではない、ワンシーンワンシーンがまるでインスタグラマーの投稿のように、絶景のロケーションをとても美しく撮影してある。入浴シーンひとつをとっても、薔薇の花びらを湯舟いっぱいに浮かべていたり、クルーズ船を貸し切りにしてパーティを開いたり、そこにはまるで少女漫画のような世界が広がっている。さらに、このこだわりの画を汚さない要素として重要なのが「テロップがほとんど入らないということ」だ。次項に参ろう。


理由5 テロップは最小限、決して“画”を汚さない」

下世話なテロップが無いことも、バチェラーを見やすくしている重要なポイントだ。日本のテレビなら、コメントフォローのテロップ・番組名や企画名のテロップ、さらにはうるさすぎるほどの効果音・エフェクト、と実にお金と時間をかけた編集が入るところ、バチェラーはスローモーションや一時停止などの基本的な編集さえ入らない。すべてお金をかけた場面転換(全体のパーティの様子に1人しゃべりのインタビューを織り交ぜるなど)で決してテンポを失速させることなくきれいな絵を見せ続けていく。ローズセレモニーに至っては、民放なら「ラスト1本は誰だ!?」と言いながら対象者の顔を順に写しに写してCM、という演出にするであろうことが容易に想像できる。日本のバラエティー番組に疲れた人には特におすすめしてみたい。


「バチェロレッテ・ジャパン」シーズン1のエピソード5・6の配信まであと1週間。続きが待ち遠しくて、本国アメリカのバチェラーを視聴しようかどうか迷っている私だった。

今日もここまでお読みいただいたあなたに感謝を。運命の薔薇を、受け取っていただけますか?(おわり)

2020/10/10 こさい たろ


**バチェロレッテの感想noteはコチラ





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