孫「おばあちゃん、39万円ある?」
「突然電話でそんなことを言うもんだから、思わずオレオレ詐欺かと思ったわ。」
困ったように笑いながら目を細める実母の友人。
6才になった孫娘が犬を飼いたいと言い出し、両親の賛成が得られないからと祖母に協力を求めてきたのだという。
ここで少し驚いたのは、6才の行動力だ。
ペットショップで可愛い犬に一目惚れしたものの、両親はあっさり反対。諦めきれずに「おかあさんを説得して、また来ます」と店員に告げたところ、「次々に売れていくから早くしないとワンちゃん居なくなっちゃうかも」と“アドバイス”されたのだという。
ここで一言断っておきたいのだが、私は店員を頭ごなしに非難するつもりもないし、ペットショップ撲滅運動を訴えたいわけでもない。
話を続けよう。
犬の取り置きができないと知った6才は、学校の帰りにショップに立ち寄り「犬を買うための総資金」を店員に聞いた。
〇 犬の料金 35万円
〇 ショップ立て替えのワクチン代 2万円
〇 リード、ケージ(小屋)、ごはん代 1万5千円
〇 犬の保険(1歳未満で亡くなったら別の犬を割安で譲渡してもらえるもの) 5,000円
ざっと39万円、と見積もりをもらって、改めて両親や祖母に交渉を持ちかけたのだという。
動物と暮らしていた人なら、いや、そうでなくても この見積もりが甘いことにツッコミを抑えきれないだろう。
39万円というのはあくまでも【最低限の初期費用】であって、仮に祖母が39万円を渡して6才が犬を購入してしまうと おおごとだ。(もちろん未成年は保護者の同意がないと飼えない前提があるが、論点はそこではない)
平均寿命10年、小型犬や室内犬だとさらに長く寿命15年。その間ずっと、ごはん代、おやつ代、ワクチン代。病気をすれば無保険・全額自己負担の診察台が上乗せされるし、旅行に行くとなると旅費にペットホテル代が上乗せされる。
お金の問題だけではない。毎日の散歩、ブラッシング、しつけ、家具を破壊したときのアフターケア……など、お金で解決できないお世話も挙げるとキリがない。
感心するのは、6才は説得する際に「YouTubeで犬を自慢したいんじゃなくて、家族の一員として迎えたいの!」と正当化したそうだ。小学生の視点で見ると、SNS映えのためにペットを家族に迎えるということが市民権を得てきていることに少し驚く。皮肉にも最近ではYouTubeで動物との日常を切り売りするからこそ、ペットのケアに人一倍力を入れるという主張もあるそうだ。
動機はともあれ、「39万円が命の値段ではないことを説明するのが大変だった」と、6才の祖母は話した。
私自身、小さい頃からハムスター、金魚、犬、そして現在 猫と暮らしているが、動物との毎日は言葉にできないほど幸せな反面、この幸せはペットが不調をきたした途端に呆気なく崩れ去るということを知っている。
「絶対に大切にするから!」と6才からの説得は続いているそうだ。命を大切にするとはどういうことか……献身、責任、挙げるとキリがない。動物園で可愛い可愛いと動物と触れ合うのと、家族として迎えることの違いを6才に説明することの難しさを一緒になって考えた。
来週9月20日からは年に一度の動物愛護週間がある。この機会に今一度考えてみたい。
今宵も猫様は可愛い。フローリングを引っ掻き、呼んでも冷蔵庫の上から降りてこないが、それでも可愛い。いつだって、可愛い。
2020/09/15 こさい たろ
/好評発売中\
**ペット関連note過去記事