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子どもと生き延びるための防災

私は2年前までローカル局で番組を製作していた。数年前に起こった九州北部豪雨をきっかけに、雨の多い時期になると各局軒並み揃って防災についての特集を放送している。当時情報番組を担当していた私も、防災士などの専門家の意見を交えて防災バッグや日頃から意識できる防災術などを番組で紹介していた。

ところが、直に話を聞いて発信しておきながら、残念なことに私自身が防災バッグを購入することはなかった。災害が酷ければ酷いほど、あらかじめ会社に泊まりこんで被災地へと赴いたため、「災害時に家にいることがないから」と購入を渋ったことが1番の理由だが、買い物の優先順位になかなか上がってこなかったというのが正直な理由かもしれない。デスクに置いてある会社支給の防災ヘルメット(中継でリポーターが被っているアレ)だけが私の唯一の防災用品だった。

そんな私が、昨年娘ができたことを機に本気で防災について考えるようになった。「親」になったことで防災を真剣に考えるようになった人は少なくないと思う。いま住んでいる場所は 海辺でも山辺でも川辺でもないのだが、なにも心構えをしないまま被災するのとある程度シミュレーションして被災するのとでは雲泥の差があるように思う。用心に越したことは無い。


昨日、九州の西側を台風9号が通り過ぎた。暴風域に入っているときの風の強さはなかなかのもので、窓ガラスが割れてしまわないかヒヤヒヤしながら夫と娘と猫と、皆で眠れない夜を過ごした。皮肉にも今週末にはさらに強い台風10号が訪れる。「百年に一度の規模」という言葉がメディアで飛び交うが、日本を震撼させた2019年の台風19号のたった翌年に再び「百年に一度…」と言われると、オオカミ少年の理論でつい油断しそうになってしまう自分もいる。ただし、オオカミは人々の関心が薄れたときに現れるということも肝に銘じておきたい。


台風10号に向けて、わが家の防災グッズを再び確認した。防災セットが2人分、折りたたみヘルメットが2つ、娘用のおでかけグッズが入ったリュックが1つ。

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防災セットとヘルメットは夫が購入したものだ。写真だけ見ると十分備えているように映りがちだが、実はこれにはマヌケな裏話がある。

というのも、防災用品が家にあるということを私が知ったのは、夫がこれらを購入してから1年も経ったあと…つい先日の引っ越しのときだったのだ。キッチンの上、滅多に開けない収納に佐川急便から夫宛てに届いている段ボールがそのまま入っていた。引っ越しのために次々と荷詰めする中、「摘要欄に「雑貨」とあるけど開けてもいい?」と尋ねると「いいよ、防災グッズだから」と答える夫。つまり、結婚後 新居に同居しはじめて1年、私は家の中に防災グッズがあるということを、引っ越すまで知らなかった。これだと被災しても私は防災品の存在を知らずに避難していただろうし、届いたままの状態で開封もせず戸棚に放り込まれているところを見るに夫さえも防災グッズの存在を忘れていたことだろう。反省を活かして、今の住まいではいつでも取り出せる場所に収納している。


ただ、これでは終わらない。
念のため、と開けてみるとたしかに「大人が」1~2日間生き延びることができるセットになっていた。繰り返すが、あくまで大人は、の話だ。防災セットを購入したのは娘を授かる前、つまり子ども用の防災用品は入っていない。この中で娘と共有できそうなものは水しかなかった。

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生後9か月、娘は市販のロールパンなどをかじれるようになってきた。とはいえ、防災セットのカンパンを食べるのはまだ厳しいだろう。そこで、常温で食べられるベビーフードを大量に購入した。避難用のみならず、停電して作り置きの離乳食を解凍できないときにもきっと役立ってくれるだろう。

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それから、オムツも10枚ほど入れておいた。避難先で仮設トイレが設置されたとしてもサイズの合うオムツが支給されるのはいつになるか分からない。

折りたためる防災ヘルメットは念のため広げて被ってみた。どんなにシンプルな作りでも、パニックになっているときに落ち着いて展開できる自信がなかったためである。

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それから、台風9号で福岡の中心部が停電したこともあり、スマホのモバイルバッテリー2台の充電も満タンに。このモバイルバッテリーだけでスマホ4回分のフル充電ができる。テレビが付かなくなっても、スマホがあれば最新情報を入手できる環境を整えておきたい。

また、当日は早めに風呂を済ませて、浴槽に水をためておこうと思う。ちなみに、昨年他界した東北住まいの祖母は、東日本大震災で家が半壊したことを機に 風呂に入ると次の日に浴槽に湯を張りなおすまで水をためたまま過ごしていた。「いつ地震がくるか分からないからね」と、あの震災から10年経っても祖母にできることを毎日欠かさず実践していたのである。私としては風呂からあがったらすぐに風呂掃除をしたい…のだが、台風が近づいているときくらい、断水に備えて祖母の教えを実践しようと思う。

あとは車のガソリン。昨年の台風19号が接近しているとき、関東圏のガソリンスタンドでは車の行列ができていたと聞く。暴風の程度によっては車に乗り込むことさえも難しい可能性があるが、クーラーがつかないときは車の冷房をつけてこもるのもひとつのアイディアだと知った。ただし、娘がじっとしていられないであろうことを考慮するとできるだけ家のなかで涼しく過ごす方法を模索したい。


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あと、わが家に至っては猫。いざ避難するとなれば娘同然、置いてはいけない。避難所がペット禁止の可能性は大いにあるし、ペットケージに入れるとしても猫が何時間も大人しくしていられるとは限らない。万が一家にいられない状況の被害を受けた場合は車が猫と共に過ごせる個室の代わりになるかもしれないと思った。

それから、猫はとても偏食なのでカリカリのキャットフードか魅惑のおやつ「チャオちゅ~る」しか口にしない。未開封のチャオちゅ~るもペットケージに常に入れておくようにしている。いざ避難するとなったとき、どんなに冷静でいようとしても娘のことで手一杯になるのが見えているため、猫に関しては「忘れずにケージに入れて連れていく」一点だけ厳守できればなんとかなるようにしておきたい。


ちなみに、こんな風にシミュレーションができているのは少し前にマンションでボヤ騒ぎがあり火災報知機に追われるように一時避難したことがきっかけでもある。その話は長くなりそうなのでまたの機会に。

ひとまず、台風10号を最小限の被害でとどめるために、わが家でできる対策をすべてやりつくしたい。九州のみなさん、共にがんばりましょう。

2020/09/03 こさい たろ

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