柴田犬人

酒飲んで、煙草吸って、詩書いて、小説書いて、逃避する人。そんだけ。

柴田犬人

酒飲んで、煙草吸って、詩書いて、小説書いて、逃避する人。そんだけ。

最近の記事

きょんしーじゃあるまいし

あんたの頭の中の 半分も理解できない オレンジュース色のネコみたいな爪 枕カバーはアイツの匂い 硝煙とおが屑と血の香り 気難しい揺り椅子に座って 頭が狂うのを待つか 太陽が臍に落ちて 火膨れを起こすまえに モーターを停止させるか 中途半端なまま 氷河が溶けたのを見て 目をまん丸にした 石たちが叫ぶ やっぱり! 注射針が 羅針盤で レール音が 天使の手招きで 橋の上で 喝采を そしてあんたは デカいゴミ箱を漁って 黄色の脂肪を取り出し おれのおでこに貼り付ける きょん

    • 明日になっても同じ

      天使たちはきっと 寝不足で 金欠で 神経症気味で おまえの勝利など願っていないけど 他人事のように 応援している サンキュー

      • 鼓動

        窒息死しそうなほど窮屈な場所で彼は目覚めた。真っ暗で何も見えない。どのくらいその場所にいたのかわからない。辛うじて身動きがとれる程度だった。 彼は本能的に外へ出なければいけないと感じていた。だが同時に、外へ出たらマズいという考えもあった。このまま徒手空拳で外へ出ればきっとよからぬことが起きる。外から聞こえる物音や人の声から察することができた。 それは破壊的な音だった。悲鳴だった。苦しみから逃れるための祈りだった。本来なら彼にはなんの関係もないはずの音だった。しかし、外に出てし

        • 焼鳥になった臆病者

          彼女がハンドルを右に切ると 左から戦車がやって来る 親父が眉間に皺を寄せると 雷槌を握りしめたゼウスが現れる 街には 目玉を刳り貫かれた トンボたちが突っ立っていて 四角のダイヤを 眼底に捩じ込む ドライブ中の男は子どもつれておきながら 警備員を轢き殺そうとする 殺しの英才教育だ 助手席に座る神経症のおれは 心臓がはち切れそうになっている おれの死と 彼らの死は 等しく価値なし おれの生と 彼らの生は 等しく交わらない 串刺しに 一杯

        きょんしーじゃあるまいし

          逆さに降る雨

           酷い雨だ。老人はそう思った。アスファルトから吸い上げられるように雨が降っていた。曇天の空に向かってツーンツーンと音もなく昇って行く。一匹の黒いドーベルマンが後ろ向きに走っていた。道行く人々も後ろへ歩いている。老人の後ろでサングラスをした男が喚いていた。男は日に焼けた黒い腕で、黒いラブラドールを連れて後ろへ下がって行く。 「!がめーぼろどのこ」  老人には男がなんと言っているのかわからない。 疲れきった青年たちが息を吐いて休んでいる。みるみる青年たちの汗が乾き、アスファル

          逆さに降る雨

          おれは炎を愛している

          その怒り 腕にしがみつく蚊 ステージの下から聞こえる ため息や 悲鳴 おれは炎を愛している

          おれは炎を愛している

          退屈な考え

          おれはこう思った おれの弟は善人だが 変人嫌い いつも彼らの目を気にしている 亡霊のような彼ら おれや ゲイ、躁うつ病患者、発達障害者、精神病患者 は彼らに認められていない人間 弟は変人に間違われるのが苦痛で仕方ない と言った 弟はおれに 「どうしてそんな目でおれを見るんだよ?おれを軽蔑してるのか?」 と尋ねた 「その通りだ。つまらねえやつだ」 そのとき 弟が目の前を飛ぶ蚊を殺そうと パチン!パチン!と手を叩いた おれは「蚊を殺すんじゃねえ!

          退屈な考え

          病気よりたちが悪い

          箱 ダンボールでも 鉄製でも 箱であればなんでもいい そん中に みかん を入れて振った 音のような 奴ら

          病気よりたちが悪い

          変な女

          大抵のクソ野郎どもは彼女のことを変な女だ、と言った。彼女のことを忌み嫌う人間はとことん、蔑み、距離を置いた。たぶん彼女の日頃の発言が招いた結果だった。 彼女は「男の身体全部が好き」と新しく出会うすべての人たちに伝えた。爪先から旋毛まで。 彼女の趣味は別段気にならなかった。おれは女の身体全部が好きだった。いい尻。いい胸。彼女はおれとばかり喋るようになった。いい感じ。 みんなおれたちのことを変だと言った。 そして彼女は今、おれを食べている。おれの爪先は彼女の胃の中で眠って

          ほとほと疲れきった。おれは毎日ムショの壁を見つめて思った。この壁を掘って、壊す。壁の向こうに行って真逆の人生を送るべきだ。 それから毎日みんなに隠れて壁を掘った。2週間かかった。最初は小さな穴だったが、今じゃ大人1人が入れるほどの穴が空いた。おれは穴の中に頭を突っ込んだ。穴の向こうから糞をしている囚人が言った。 「ど、どうしたんです看守さん?」 おれは言った。 「交替だ。疲れたんだよ」

          詩にてえな

          南瓜の緑 蚊にぶっさされたケツの穴 コンナコトガアロウトハ 水平線では 女中頭のロボットが 妙な笑顔で 薙刀を振り回していた 鯨の死骸 象の死骸 ヘミングウェイの死骸 薙刀が錆びると 女中頭は愛液でメンテを施す 太陽に焼かれた お手々に 原爆をぶら下げた 赤ん坊が 国道4号線を走っている 兵隊たちが 切符をきろうと やきもきしているところへ 老婆が通りかかり 轢き殺された 老婆以外の全員が 押しなべて 焼きそば好きだった 近く

          詩にてえな

          小便臭えやつらに、1発

          殴るぜ 神も仏もない おれは それしか能がない いつまでたっても 親父も、お袋も、禿げた弟も 戦争が好きだ 親父は、社会の目を気にして 人の情緒を無視して 天才ぶり お袋は間違った断捨離で 記憶を改竄し 自分の恨みが虹のように消える と思い込んでいる 弟は キチガイのふりをして キチガイを牢屋に入れたがっている おれは 頭がおかしい 家族を 人を 愛している奇特なやつらには 到底わからない わかってたまるか 畜生め 第二次世界

          小便臭えやつらに、1発

          ケチンボども

          なあ、おい あのゴリラと1発ヤルまえに おれに一片の 愛をくれよ ほんのちょっと ストロー1滴分の愛を そうかい、そうかい そうかい、そうかい ああ!わかったよ! そんなにお硬い頭してるとな 乳まで硬くなるぜ! なあ、おい 女と酒ばかり飲んでないで おれを殴ってくれよ ためらわずに殺してくれよ 確かにおれは喧嘩は強いが 死にかけの男だ おまえがおれにムカついてることは 知ってる そいつにとどめを刺してやるくらいの 優しさはないのかよ?

          ケチンボども

          彼らの歌声

          タバコの箱の中に ゴキブリがいた おれは無職で ソファには洗剤のシミ これが世界地図だぞ 若い女たちは おれを恐れ 年寄りどもは テレビみたいな顔で 批評を始めた おれはすべてをやめたくなる やめたくなるだけ 笑っていた女たちは 消え去った 彼女たちの笑顔を見たいとは思わない 玄関にはオレンジのビーサン 足裏は埃だらけ 静かでいい夜 殺し屋たちの 歌声 おれにはすべてがわかる気がする 気がするだけだ 静かでいい夜

          彼らの歌声

          裸で撃たれる

          なぜだか彼らは 裸の王様ではなく 裸の人外ばかり 撃ちまくる 王様たちは 彼らに言う 「おれたちの言うことを聞け!このノウナシどもめが!」 実際そのとおり 彼らはノウナシだが それより酷いのは なんの怒りもわかず なんの疑問も抱かず なんなためらいもなく 朝飯を喰っていることだ そしてゲップをして 糞をして おれを撃つ おれは何度も 王様を撃ってきた そのたびに 彼らを引き連れて おれを 袋叩きにした おれは生まれたときから チ

          裸で撃たれる

          ノートなんか燃やせ

          殺せ 頭の高い 操縦士を おまえには なに1ついい事はない くたばれ おれに 指図した そこのおまえ

          ノートなんか燃やせ