焼鳥になった臆病者

彼女がハンドルを右に切ると

左から戦車がやって来る

親父が眉間に皺を寄せると

雷槌を握りしめたゼウスが現れる

街には

目玉を刳り貫かれた

トンボたちが突っ立っていて

四角のダイヤを

眼底に捩じ込む

ドライブ中の男は子どもつれておきながら

警備員を轢き殺そうとする

殺しの英才教育だ

助手席に座る神経症のおれは

心臓がはち切れそうになっている

おれの死と

彼らの死は

等しく価値なし

おれの生と

彼らの生は

等しく交わらない

串刺しに

一杯ひっかけながら

串刺しにしてやりたい気分だ



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