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『日の名残り』を読んで省みる、いちばんいい時間

日の名残り/カズオイシグロ(土屋政雄訳)/分類933イ』を図書館で借りて4,5日で読み終えた。面白かった。


◇感想のようなもの、品格って何だろう?

紳士口調の語り手Mrスティーブンスは、品格ある英国の偉大な執事らしい。
過去に仕えていた雇い主のダーリントン卿を崇拝?敬愛しながら仕事していた。そして人生を旅から省みるみたい。

プロローグ
       一九五六年七月
         ダーリントン・ホールにて

【日の名残り 9頁より】

と、はじまる。

執事としての栄光の時代を心の中で語りながら旅をする。正しいか正しくないか、そういうことではない。ご主人様に対してただただ忠誠を尽す。滑稽なほど頑なな感じに見えてくる。

どんな偉大な執事であろうと、いずれはその職務を完璧にこなせなくなる日が来る。Mrスティーブンスの父もまた執事。老いた父からいい父だったか?いい父ではなかっただろう、みたいなやり取りに私は自分の亡き父を重ねていた。自分の中にある理想であろうとする姿って悲しいんだよ。

Mrスティーブンスは部下である女中頭missケントンとの過去の淡い恋心さえも、偉大だという職務で覆いかぶしている。年月が経ち、旅の目的地として彼女と再会する。そして楽しく美しい思い出にすり替えた。些細なこととして扱った思い出は、大切で重要な人生の支えだった。今さら悔いた涙は取り戻せない時間なのだ。なんだか鈍感なフリをしていただけじゃん。むなしさも品格に取り込んで、で結局、品格って何だったの?
持っているか持っていないか。性格?雰囲気か?見た目か、内面か。訓練的な努力か?人によって感じ方がちがうような?曖昧なのかも。

◇いちばんいい時間

旅先で出会った人に、Mrスティーブンスは言われる。

「人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。夕方がいちばんいい。わしはそう思う。みんなにも尋ねてごらんよ。夕方が一日でいちばんいい時間だって言うよ。」

【日の名残り 350頁より】

旅を終えてMrスティーブンスは、新たな気持ちで職務に臨もうと決意したようだ。今の雇い主ファラディ様は、米国から来た人だ。心から笑い合えるようになれるといいね。偉大じゃなくていいよ。
人生の夕方をのびのび楽しもうよ。

夕方が一日でいちばんいい時間なんだ
私もその時間がいい、その時間が好き。
夕日や夕焼けを見ると、ほっとする。

◇私についた日の名残り

「日の名残り」を読み終えてからの出来事。
十数年ぶりと思う、友だちといい年こいて海ではしゃいでいた。
海風が心地よすぎて日よけの下でうたた寝してしまった。
日よけからはみ出していた私の短い脚が真っ赤か、、、
急激な日焼けとなる。

これも日の名残りなのかもしれない。
悔いはないよ。

ではまた。

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