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ゆるやかに築くもの

子供たちが小さかった頃の思い出。
当時ホームページに書いた文章をnoteに載せてみたくなりました。
※ユースケ1才6か月のお話(北九州(小倉)に住んでいたころ)

=2002.08.25の日記=
「ゆるやかに築くもの」

昨日、芦屋の「砂浜の美術展2002」に出かけた。今年で8回目だが、私たちがこのイベントを初めて訪れたのはおととしのことだった。当時ユースケはまだ生まれておらず、妻のお腹の中にいた。妊娠していたことがわかって間もないときで、つわりもあるし大事を取って涼しい午前中だけ見に行ったのだった(そんなときでも出かける私たちって??)。

去年はユースケが生後6ヶ月だったのでパス。そんなわけで今年はひさびさ見に行けるので楽しみにしていた。今年の砂像もすばらしく、私たちは大満足だった。ユースケも砂浜を歩くのが楽しいのか、元気よくかけ回っていた。

夕方近くになり帰るころ、私たちは砂浜を歩きユースケもその後をついてきていた。「ユースケ、帰るよ」と声をかけると、ユースケは寄り道をしながらも、私たちの後をトコトコとついてくる。最近では呼べばふり返るし、呼んでることがわかるのか、こちらに近づいてくる。少し前なら考えられないことだ。やはり少しずつ成長しているのだろう。

手をつないで歩きたいのだが、歩きにくいのか、あいかわらず嫌がるので、しかたなく後ろをふり返りながら、声をかけ、ついてきているのを確かめながら歩く。

つかずはなれず歩く私たちとユースケ。見えない糸で結ばれてるみたいだ、なんて柄にもなく思ってしまった。不思議なものでこんなに人がいるのに、ユースケは私たちを見つけてついてくる。あたり前のことと思うかもしれないが、それまではできなかったことなのだ。我が子が自分たちの後をついてきて、私たちは我が子をふり返る。親子の関係とはきっとこんなものなのではないか。

初めから親子の絆があるわけではないと思う。子供が生まれた瞬間から親という役割、子という役割がそれぞれに与えられるだけなのだ。我が子を愛しいと思うのは自然な感情で、それに疑問をはさむつもりはない。だけどそれだけで親になれるわけではない。子供が親を認めて後をついてきて、親は後ろをふり返りその子の名前を繰り返し呼ぶ。親子の絆とは、そうやってゆるやかに築いていくものなのだろう。そんなことを考えながら芦屋の海を後にした。

私はこの光景をきっと忘れない。

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