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手術がうまくなるための27の方法(26個まで無料公開)

はじめに

このNoteに興味を持っていただいてありがとうございます。

これを読んでいるということは、あなたは今よりもっと手術がうまくなりたいという向上心にあふれた方だと思います。

そんなあなたのために、このNoteでは、
手術がうまいとはどういうことか?
手術がうまくなるために必要な能力は何か?
それらの能力を向上させるために有効な日々の行動は何か?
を順を追って解説しています。

多忙を極める皆さんですから、全てを完璧に実施するのは困難かもしれません。
しかし、全て達成できなくても構いません。これらの行動はバンドルとしての提案であるため、できる範囲、興味がある行動からだけでも少しずつ始めてもらえれば、「手術がうまい外科医」に着実に近づくことができるはずです。

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出典:弱虫ペダル

なるべく多くの方のお役に立ちたいと思うため、無料部分だけでも、相当な効果が出るよう、相当な量の内容を盛り込みました。

さらに、「真に手術が上手くなりたい、何かを極めたい、高みを目指したい」のであれば、ぜひ有料部分まで読んでいただきたいと思います。

有料部分には、目標達成における心理的・脳科学的な合理的かつ効率的な『からくり』が仕込んであります。
手術の上手い下手は外科医にとって死活問題です。そこで優位性を発揮できるというメリットを考えれば、このNoteの購入は十分リーズナブルな自己投資になると自負しています。

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出典:鋼の錬金術師

このNoteが有望な皆さんの未来の診療に役立つことをお祈りしています。



手術がうまいとは

そもそも、「手術がうまい」とはどういうことでしょう?

人によってこの定義は異なると思います。
例えば、神の手と呼ばれるような、誰にも真似してできない超絶技巧を持った状態のことかもしれません。
ブラックジャックや医龍に代表されるような、目にも止まらぬ早技で難しい手術を軽々とやってみせるイメージが一般的かと思います。
確かにこれも手術がうまいというひとつの定義になりますし、最終的にはその域に達することができれば理想的だと思います。

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出典:BLACK JACK

ただ、この記事の読者は、まだまだ自分には足りないところがあると自覚していて、今よりもワンランク上の手術ができるようになりたいと思っている人が大多数だと思います。
そのため、ここでは手術がうまいということを次のように定義してみたいと思います。

『手術がうまいとは、普通の手術を普通に行うことができる状態である』

さらに具体的にすると、

「手術がうまい」とは、「安全に、確実に、滞りなく、定型的な手術を自力でコントロールして完遂できる状態である」

 上位20%に入れば一流の仲間入り?

目指す目標「手術がうまくなる」が、「安全に、確実に、滞りなく、定型的な手術を自力でコントロールして完遂できる状態になる」というように、より明確で具体的になってきました。

こう聞くと、何だか物足りなく感じるかもしれません。
しかし、ここで思い出してみてください。少し専門的な知識・技術を持ったあなたから見て、世の中のどれくらいの外科医が普通の手術を普通にこなせているでしょうか?

さてここで、内視鏡外科学会の技術認定医制度というものを例に挙げてみましょう。
この制度は、内視鏡外科手術の指導医として取るに足る存在であるかを判定する制度です。
簡単に言えば、「人に教えられる程度の手術ができているかどうかを判定する」制度ということです。
そして、その認定の合否は、「安全かつ円滑に手術を進められているか」という視点から、複数の項目が減点法で評価されます。つまり、「普通の手術が普通にできているか」が判定ポイントであるということです。

このような内視鏡外科学会の技術認定医制度ですが、果たしてその合格率はどれくらいか知っている方でしょうか?

なんと、消化器・一般外科領域では、ここ数年間はたったの20〜30%程しかありません。

多少は腕に覚えのある人たちが、ある程度自信のある手術ビデオを選択して提出しても、2〜3割の合格率なのです。

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[技術認定審査結果|日本内視鏡外科学会]より(http://www.jses.or.jp/member/gijutsuninteisinsakekka.html)


全ての外科医がこの試験を受けるわけではないですし、同じ外科医でも、パフォーマンスの波があることを考えると、世の中で行われている腹部一般外科領域の内視鏡手術の8割くらいは「安全かつ円滑に」進んでいないということが言えるのではないでしょうか?

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出典:SLAM DANK

誰でも手術がうまくなれる

上記のことから、ひとつの目安として、上位20%以内に入れば、十分に手術がうまい外科医の仲間入りができることがわかりました。
上位20%で良ければ何だかできるような気がしてきませんか?
5人に1人の逸材。偏差値で言うと大体59以上。
学生にとっての学力で例えれば、多少要領が悪い人でも、普通に授業の予習と復習をこなしていればちゃんと達成できるレベルです。
外科医にとっての手術でも一緒です。
当たり前の努力の積み重ねを欠かさずやり続ければ、十分に達成可能なレベルだと言えるでしょう。

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出典:弱虫ペダル

手術がうまくなるのに必要な能力

地道な努力の積み重ねが大切なことがわかりましたが、もう一つ重要なことがあります。
それはどんな目標に向かって努力していくかということです。
努力は裏切らないとはよく言われる言葉ですが、これは不正確です。「適切で十分な」努力をしなければ、望む結果は得られません(ちなみにこれは私の尊敬する人物の一人である林修先生の名言です)。

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林修 先生


手術がうまい外科医(普通の手術を普通にできる外科医)に必要なのは主に下記の項目です。

* 基本手技の技術
* 的確な判断力

手術は基本的な手技を積み重ねた集合体なので、ひとつひとつの基本手技をそつなくこなせる必要があります。
また、要所要所でどのような手技を適応するのかは、術中に臨機応変に判断する必要があります。
的確な判断のためには、その判断材料となる、

* 解剖学的知識
* 各手術術式の原理と原則
* 各症例ごとの特有のポイントへの理解
* 文献などから得られる知識
* 経験

も重要になってきます。
また、

* コミュニケーションスキル

も欠かせない要素のひとつです。手術は決してひとりではできません。特に近年主流になってきている腹腔鏡手術ではその傾向が顕著です。
術者・助手・器械出し看護師・外回り看護師・麻酔科医・監督する指導医などから構成される手術チーム全体のパフォーマンスを最大化させるのも、術者にとって欠かせないスキルです。
これらの項目ごとの能力値を伸ばしていけば、自ずと手術がうまくなっていくはずです。

手術がうまくなるために必要な要素

* 基本手技の技術
* 的確な判断力
* 解剖学的知識
* 各手術術式の原理と原則
* 各症例ごとの特有のポイントへの理解
* 文献などから得られる知識
* 経験
* コミュニケーションスキル

 手術がうまくなるための日常生活

これまでの内容で、手術がうまくなるために成長させるべき能力がわかりました。
ここからは、実際にどのようにすればそれらの能力を成長させることができるかについて述べていきたいと思います。

* 術前
* 術中
* 術後
* 日常生活

の4つに分けてまとめてみました。

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出典:GIANT KILLING


 術前に行うべきこと

術前に行うべきことは、

* 脳内リハーサル(イメージトレーニング)
* 不明点の予習
* 過去の関連事項の復習
* 指導医との打ち合わせ

です。


 脳内リハーサル(イメージトレーニング)

必ず毎回、手術の前にはイメージトレーニングを行います。
頭の中(可能であればスケッチも併用)で、予定されている手術を最初から最後までシュミレーションするのです。
この脳内リハーサルですが、最初は断片的になってしまってあまりうまくできないと思います。
しかし、自身の成長に伴って、徐々に手順や進行だけでなく、組織の重さや硬さなどの詳細な部分まで、リアルにイメージできるようになってくると思います。
この脳内リハーサルにおいて、途中で行き詰まるところがあれば、そこは実際の手術でもうまくいかないところです。
ちょうど良い学習のチャンスになるので、即座に関連事項を調べましょう。

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出典:NARUTO


 予習

調べるのは同僚や先輩に質問するか、インターネットを利用するのが早くて便利です。
インターネットでは、ざっと検索トップで表示されるところを眺めて概略を掴みましょう。
要点が掴めたら、さらに教科書などのテキストや文献などのしっかりとした基盤のあるリソースに当たって知識を深めましょう。
『分からないところ+1』の意識で学習していくと、量として無理もないし、知識の必要性の緊急度も高いので、記憶にも定着しやすいです。得られた知識は、自身のトレーニングノート(紙ベースでも良いし、Evernoteなどのメモアプリも便利です)にまとめておきましょう。


 過去の要点の復習

さらに、トレーニングノートの該当箇所をざっと復習して、これまで同様の手術で学んだ要点を、長期記憶として定着させましょう。

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出典:SNOOPY


 指導医との打ち合わせ

特に経験の浅いトレーニーの場合は、手術開始までに一度指導医に手術プランを聞いてもらって添削してもらうのもお勧めです。
どうしても独力でのイメージトレーニングでは、的外れになってしまうこともあるので、軌道修正してもらいましょう。指導医と綿密にコミュニケーションをとっておくと、術中に指導医も指導しやすくなります。また、単純接触効果(ザイオンス効果)により、日常業務にも良いこと(執刀のチャンスが増える可能性があるなど)が起こりやすいのもメリットです。

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出典:DEATH NOTE


 術中に行うべきこと

術中に行うべきことは、
* 執刀前ショートサマリー
* 意識化(自身の手術の実況・解説)
* チームワークを意識したコミュニケーション(挨拶、議論、指示出し)
姿勢を正す
* 精神を安定させる
* 質問する
です。


 執刀前ショートサマリー

執刀前には、毎回タイムアウトを行うと思います。
タイムアウトの際に、患者氏名などの基本的な確認事項だけでなく、症例ごとのポイントや手術プランに至るまで、自身のアセスメントとプランを簡潔に述べましょう。
例えば、「今回は、腫瘍の腹壁への浸潤が疑われるため、普段と手順を変えて、その部分の剥離は授動の最後に行います」、などといった具合です。
この執刀前ショートサマリーには、医療安全対策チームメンバーの目的意識の統一を図るという意味があります。
さらにそれに加えて、言語化し、自分自身でそれを聞くことによって、自分自身の思考を明確化するという意味もあります(細胞間の情報伝達に例えて、パラクラインとオートクラインと呼ばれます)。

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出典:新世紀エヴァンゲリオン


 意識化

実際に手術が始まったら、細部に至るまで徹底的にこだわりましょう。針の持ち方、針を入れる深さや角度、組織の緊張の程度、左手の把持の幅・強さ・牽引方向などなど挙げればキリがありません。
ともすれば無意識に進んでいくところばかりですが、とにかくなるべく意識して行うことが大切です。
なぜなら意識できないところには改善のきっかけができないからです。逆に言うと、意識すれば、問題点や課題が明らかとなるため、それを克服するための工夫が考えつくようになります。

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出典: [暗殺教室]


そこで、意識するためにお勧めなのが、『自分の手術の実況・解説』です。
自分の動きを逐一実況・解説しながら手術してみましょう。
最初は断片的な単語しか出てこないと思いますが、なるべく詳細に思考を言語化しながら操作する練習をしてください。
例えば、「左手で動脈周囲の神経だけを把持し、手前に少し浮かせる。動脈周囲の神経を超音波凝固切開装置の先端で一瞬焼き、外膜と血管鞘の間に隙間を作る。その隙間にティッシュパッドを滑り込ませ、血管鞘を全周性に外膜から剥いていく」、などといった具合です。

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出典:ベイビーステップ


言語化しながら操作すると、脳がフル回転するのを実感できるはずです。
言語化することで、指導者や後輩にも自分の意思が伝わり、円滑な手術の進行につながることもメリットです。
指導医も指導が行いやすくなりますし、訳もわからず傍観者になりがちな研修医も手術に参加しやすくなります。

 チームワークを意識したコミュニケーション

手術は決して独りではできません。
手術の最中だけでも、術野形成をしてくれる助手、器械出し看護師、外回り看護師、麻酔科医などの複数のメンバーが関与しています。
メンバーが複数いる場合、それぞれのメンバーが力を十分に発揮して、チームとしてのパフォーマンスを最大化することが重要になってきます。
そのためにチームワークを大切にしましょう。


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出典:SLAM DANK

手術チームのメンバーへの挨拶は必ずしましょう。
日常的な挨拶、ありがとうという感謝の言葉は、円滑なコミュニケーションのための潤滑油となります。

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出典:土竜の唄

コミュニケーションのポイントは、頭ごなしに否定することは絶対にしないことです。まず聴く。相手の主張の理解に努めます。異議があれば質問し、お互いの意識の統一を図りましょう。
あとは笑顔。語るほどでもないほど当然ですが、笑顔の威力は絶大です。

外科医同士で活発に議論しながら手術を進めましょう。
手術中はしばしば、外科医同士で意見が食い違うことがあります。そしてそういう時、どうしても指導医の鶴の一声で全てが決まりがちです。確かに、指導医の豊富な経験と知識に基づく判断は、適切なことが多いので、こうなるのもある程度は仕方ありません。しかし、なるべく自分が判断した根拠を(たとえそれが誤っていたとしても!)提案してみましょう。議論を行い、相互理解の元に最適な解決方法を見つけることがチームワークを高めるのに重要です。
絶対服従するのでも、我を押し通すのでもない、アサーティブなコミュニケーションを心がけて下さい。

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指示出しも重要な術者の仕事です。
器械出し看護師、外回り看護師、麻酔科医らは、術野を常に詳細に観察できるわけではないため、なるべく次の展開を予想して、早め早めの指示出しを心がけましょう。

姿勢を正す

猫背だったり首を傾げて手術する人に達人はいないのは直感的に分かっていただけるのではないでしょうか。
姿勢を正すとは、体幹と四肢をなるべく自然な位置に保つという意味があります。
不自然な姿勢、例えば、体を捻って
人間工学的に、自然な姿勢であれば、脳が無駄な深部感覚を補正する必要がなくなるため、スムーズに感覚と運動を行うことができるようになります。

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出典:鬼滅の刃


 精神を安定させる

意外とできていない人が多いですが、術中はとにかく焦らない・怒らないことです。
焦りや怒りなどの負の感情は、余分な緊張を生み、実力を半減させます。
何より、周囲の誰も良い気持ちになりません。
焦ったり怒ったりするのは自分に余裕がない証拠と考えて改めましょう(筆者も4〜5年くらい経ってから、うまく手術が進行しなくてイライラしている時でも、それを冷静にもう一人の自分の視点で見ることができる余裕が出てきました)。
困ったら深呼吸して、今の自分を空から傍観するイメージで客観視すると、冷静さを取り戻すことができると思います。

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出典:ROOKIES

感情のコントロールはエモーショナルインテリジェンス(EI)と呼ばれており(EQや心の知性とも呼ばれます)、生まれつきの才能よりも成功に影響する要素だと言われています。
EQはIQ(知能指数)とは異なり、トレーニングによって後天的に高めることができるとされ、注目が集まっています。


 他人の手術ではどんどん質問する

他人の手術であっても、自分が術者としてやっているつもりで参加しましょう。
そして、一挙手一投足真似るような意気込みでいると、自然と「自分と違う」ところにたくさん気が付くはずです。
剥離の方法、左手の引き方や持つ位置、道具の使い方など、**細かい違いを見つけたら、学びのチャンス**です。その違いについて生じた疑問をぜひ積極的に質問してみましょう。

ここで、良い質問のコツを覚えておきましょう。
単なる知識の確認では良い質問になりづらいです。
良い質問とは、今この瞬間におけることに関連した、本質的で具体的な内容への問いです(逆に枝葉末節のことであったり、漠然とした答えようのないことであったり、今の状況と全然関係ないことに関する質問はNGです)。
さらに、調べれば分かることよりも、オリジナルな内容を聞き出すことこそ質問の醍醐味です。自分の意見や体験を時折交えつつ、相手の意見や体験を聞くように心がけると良いでしょう。
例えば、「自分はここで電気メスで剥離をしていて、よく出血してしまいます。指導医先生は主に超音波凝固切開装置を使われています。超音波凝固切開装置を使うと剥離層が癒合してしまう気がして敬遠していたのですが、実際のところはどうですか?」などと言った具合です。
良い質問をするには、自分が理解できている所とそうでない所の境界が認識できていることが必要なため、ある程度の基礎知識が必要ですが、どんどん質問していくことで質問力も磨かれると思います。

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出典:アオアシ


また、後輩が自分に質問してくれた時は、「良い質問だね」などと言って、一度相手を承認してあげてから答えてあげると良いです。
そうすることで、相手は安心し、次からも積極的に質問してくれるようになります。
質問に返答することは、自分の知識の確認にもなるため、どんどん質問してもらえるような雰囲気を醸し出しましょう。


術後に行うべきこと

術後に行うべきことは、

* 指導医からフィードバックをもらう
* 手術記録をすぐ書き始める
* 復習する

です。


 指導医からフィードバックをもらう(Review)

閉腹中や手を下ろした直後に、今回の手術の自分なりの反省(良かった点、悪かった点)と今後の課題や目標を述べてから、指導者にフィードバックを求めましょう。
術前の脳内イメージリハーサルと、実際の手術の感触との違いが反省点になります。
フィードバックをもらえたら、それをヒントにしつつ、さらに自己学習して知識を広く深くしていきましょう。

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出典:ONE PIECE


 手術記録をすぐ書き始める

手術記録は最低限の要点のみでも良いので、記憶が新鮮なうちに書きましょう。
Ebbinghausの実験によると、記憶は20分も経つと、無くなり始めます。
無意味な内容に対する記憶の場合の忘却曲線によると、たった4時間で、なんと半分もなくなってしまうそうです。
手術のようにストーリーと作業のある内容は、もっと長く記憶が保持されますが、とにかくすぐに急いで書き始める必要があることがお分かりいただけると思います。

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忙しくてきちんと書けない場合は、定型的な部分は省略して、今回の症例に特有のポイントとなる部分を中心に書いておきましょう。
右脳は大量の情報をイメージとしてインプットできるので、これを使わない手はありません。ラフスケッチを残しておくと、短時間で効率よく記憶に留めておけます。
iPadで手術記録を残すのも良いアイデアです。(オペ中さんのNoteもご覧ください)


 自分の手術の復習

自分の手術を録画しておき、それを、当日(遅くても翌日)、1週間後、1ヶ月後の最低3回は見直しましょう。

ちなみに、脳科学的に最適な復習の頻度は、
1日後
1週間後
2週間後
1ヶ月後

ということが分かっています。

具体的な方法としては、ポモドーロテクニック(25分作業+5分休憩を繰り返す)を使う場合、25分で勉強したら、最後に3分ずつくらいを使って、過去の学習内容を復習しましょう。

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脳は生存に必要のない情報はどんどん忘れるようにできています。そのため、手術という生存に不要な情報はすぐに失われてしまいます。
記憶に定着させるためには、脳に繰り返し同じ情報を与えて、必要な情報であると判断させなければなりません。そのために大切なのが復習というわけです。
忘れかけた頃に復習することで、海馬に「これは生存に不可欠な情報だ」と判断させ、長期記憶として定着するのです。
復習の際には、漫然と見直すのではなく、術中に感じていた『感情』も思い出すと、扁桃体が活性化して長期増強が起こりやすくなり、さらに長期記憶として定着しやすくなります。
例えば、『ここが難しかったな〜』『ここはうまくいったな〜』と言った具合です。
ビデオを観ながら気づいた点を、トレーニングノートに記録しておきましょう。紙にメモ書きだけしておいて、後でそれを写真として取り込むのもお勧めです(タイピングするよりも『手で書く』という行為の方が学習効果が高まります)。
術中に生じた疑問は調べておき、コピー&ペーストやスクリーンショットでも良いので、どんどんトレーニングノートに貼っておきましょう。
受け身の学習(ビデオの傍観)では決して記憶に定着しないので、自分の感情を揺さぶるためにあらゆる手段を講じましょう。


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出典:ベイビーステップ

かなりざっくりとしたもので良いので、ビデオは編集しておくと良いです。まとめるという作業は、それ自体が良い復習になりますし、後々の復習時の時間の短縮やパソコンのデータ容量の節約にもなります。
(参考:動画の保存における保管先や容量問題の対策としては、YouTubeに非公開設定で投稿しておくのが容量無制限なのでおすすめです。ネット環境があって、YouTubeが潰れない限り、いつでもどのデバイスからでも鑑賞したりダウンロードすることができます。)


 日常生活ですべきこと

心技体を磨くことを心がけて生活します。
心技体を磨くことは、人間としての格を高め、より良いパフォーマンスを自力で高めていくことができる、自己解決力を持った人材育成の基本要素なのです。

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出典:ハイキュー!!


 技を磨く

 基礎練 基礎技術を維持する

手術は基本的な手技の集合体です。
ということは、基本的な手技が満足にこなせなければなりません。
糸結びや運針などの基本的な技術は、日々の繰り返し行われる基礎練習によって、その質が「維持」されます。
ここで大切なのは、基礎練習は「技術向上」のため行うのではなく、最低限の質を「維持」するために行うということです。
暇な時間があればやるという位置づけでは継続できません。まずは毎日1分からでも良いので、きちんと時間を確保して訓練しましょう。

ぜひやっておきたい基礎練として、

* 開腹での結紮
* 内視鏡での結紮
* 開腹での縫合
* 内視鏡での縫合

があります。

腹腔鏡の鉗子を使って折り鶴を折るといったトレーニングも楽しみながらできて良いですが、トレーニングの特異性としては縫合や結紮には劣ります。

基礎練は単調で退屈になりがちなので、タイムアタックをするなどのゲーム要素を盛り込むこともとても良いアイデアです。
脳は達成できるか否かが五分五分程度の、ちょっと難しい課題が大好きです。
このようなちょっと難しい課題を自分で設定して、達成できた時に、多量のドーパミンが出て、さらなるモチベーションが生まれます。

結紮の練習用として、手術室で使わなくなった糸をもらったり、刺繍糸や釣り糸を買ったりしましょう。
縫合の練習には、鉗子と縫合の対象となる素材が必要です。これらはインターネットで専用品が売られているのでぜひ購入しましょう。
ただ、消耗品を毎回専用品にすると結構高価になるので、使えなくなったガーゼ、ティッシュペーパー、スポンジ、ニトリル製の手袋、軍手などを縫い合わせましょう。

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出典:SLAM DANK


 優れた手術動画をたくさん観る 経験値を上げる

今や世界中の優れた手術動画を、簡単にインターネットを介して観ることができる時代です。これを使わない手はありません。

いくつかお勧めのサイトのリンクを掲載しておきます。

[がん@魅せ技|手術手技を中心とした集学的がん治療情報サイト](https://www.misewaza.jp)

[WebSurg, the online university of IRCAD](https://websurg.com/en/)

[SAGES TV: Laparoscopy and Endoscopy Surgery Videos](https://www.sages.org/video/)

玉石混交ですが、YouTubeにも多数の手術やレクチャーの動画がUPされています(経験上、YouTubeは自分の娯楽のための動画に脱線して行きやすいのが難点)。

手術動画を観る時は、ただぼんやり眺めるのではもったいないです。
2つのウインドウを画面上で並べて、エキスパートと自分の手術動画と比較しながら観るのはかなりお勧めの方法です。

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君はただ眼で見るだけで、観察ということをしない。見るのと観察するのでは大違いなんだ。By シャーロック・ホームズ


もし練習用の鉗子やドライボックスを持っているなら、実際に手を動かしながら画面を観ると、手と視覚との協調性が高まるらしいです。
これはミラーニューロンという神経細胞の働きを利用した方法です。
上手い人の真似をすることで、実際にできるようになるというのは誰しも経験があると思います。ぜひお試しください。

学ぶとは、まずは「真似ぶ」ことから始まります。

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出典:ドラゴン桜

また、あくまで私的利用に限りますが、画面をスクリーンショットして、Evernoteなどに作ったトレーニングノートに貼っておくのも役立ちます。

少しでもたくさんの脳の領域を活性化させながらビデオを観ることで、学習効果は段違いに高まっていきます。


 他人に教える 知識を磨く

教えるという行為は、実は記憶の定着にとても良い行動のひとつです。
実は、人に教えるというのは、ただ講義を聞いたり、グループワークをしたり、ビデオ教材を見たりというような学習法よりも、知識の定着率が高いことがわかっています。なんと実際に教えなくても、後で教えてもらいます、と言われていただけでテストの成績が向上したというデータもあります。
誰かに教えるためには、当然のことながら自分が理解している必要があります。
教えている途中で、自身の理解が曖昧なところが明らかになることも多々あります。
また、頭の中でまとめながら話すことで、自身の知識も洗練されていきます

ぜひ積極的に誰かに教えてあげましょう。



教科書を読む

これだけインターネットが発達した現代ですが、やはりぜひ教科書は読んでおきたいものです。それもぜひ「古典」と呼ばれる教科書を読みましょう。
外科学で言えば、
Sabiston Textbook of Surgery: The Biological Basis of Modern Surgical Practice
Schwartz’s Principles of Surgery
辺りが鉄板です。

なぜ教科書なのか?ということについても少し触れておきます。
古典と呼ばれる教科書というのは、過去の研究内容が集まって、改訂に改訂を重ねて編纂されたものです。このようにして作られた**教科書に書いてある内容は、その道のプロが現時点で当然知っておくべき基本的な共通認識である**と言えます。
基礎となる共通認識を知らずして、最新の知見の解釈などできるはずがありません。

軽視されたり敬遠されがちな教科書ですが、実は学習のためには非常に適したツールです。
教科書には、その分野の専門家が選んだ知っておくべき内容が、整理された状態で記載されています。概略に始まり、ポイントがまとめられ、参考文献までまとまっています。索引も充実しています。
このように、教科書は、それ自体で完結しているため、他に余分なテキストを参照する必要がないのも強みです。

教科書を読むコツは、全部読もうと考えないことです(もちろん端から端まで読むのはとても良いことです)。
* ふとした時の調べ物に該当箇所のみ熟読する
* 一般論を知るためにざっとスキミングする
* 深く学ぶために章末の参考文献を紐解いてみる
これらが教科書の必要十分な快適な使い方だと思います。

ポイントは何度も何度も読むこと。
実践書や入門書は最初に読むには良いですが、そればかり読んでいては、タイトルだけ違う似たような本を無駄に買い漁ることになりかねません。
良書をひたすら繰り返し読むのが結局のところ時間的にも金銭的にも最も合理的です。

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出典:ハイキュー!!


ちなみに、洗脳まがいの方法ですが、分厚い教科書を電子書籍で購入して、画面読み上げ機能などを使ってオーディオブック化し、時間が有る限り聴き続けるという荒業もあります。


最新の知見でトレンドを捉える 興味を広げる

医師たるもの、生涯勉強に努めることは欠かせません。貪欲に最新の知識のアップデートに努めましょう。
病院が契約している文献ライブラリー、UpToDate、消化器外科系の雑誌などを使っていくと近年話題になっているフレッシュな知識・技術に触れる機会が増えてきます。
新しい知見に触れるのは大変楽しいものです。興味関心を深めていきましょう。

さらに、心が揺り動かされるような知見があれば、直接専門家を訪ねてみるのも素晴らしい選択肢です。
知り合いの医師、売り込みに来ているMRさんなどを活用して連絡先を教えてもらったり、学会で直接アタックするという方法があります。
人によっては、SNSのアカウントを実名で運営している人もいるので、ダイレクトメールを送ってみても良いでしょう。

医学に全然関係ないと思われる分野の知識を得る

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出典: 暗殺教室

知は力なり。何かを極めるためにはよろずに通じることは助けになります。
定期的に書店に行って立ち読みするだけでも良いので、全く興味がなかった分野の本も読むようにしましょう。
時間がない!という人は、Flierという多彩な本の要約サイトがあるので、ぜひ活用してみてください。
audibleなどのオーディオブックを利用するのもおすすめです。

アートに触れる

医療は、不安定で不確実で複雑で曖昧な状況での判断を日々迫られます。そのような正解のない問題に対して、自分なりの答えをもって行動しなければなりません。
例えば、たとえ手術適応の癌だとしても、社会的背景などを理由に手術しないことが「正解」となることさえあります。科学的な根拠だけでは、目の前の患者さんに最適解が導けるとは限りません。
そのような時の価値判断の礎となるのがアートです。
アートに触れることで、直感・感性や道徳観・倫理観が磨かれます。
アートは人の心を動かします。心が動くということは、直感的な奥深いところが善いとか悪いと判断していることになります。
そのような感性を磨くことは、人格を深め、人間らしい行動や判断を行うために不可欠な要素だと言えるでしょう。

アートから感じることは人それぞれであり、価値観に多様性があるということも学べます。
文学、音楽、美術、哲学など色々な分野がありますし、日本には漫画などのサブカルチャーにも良いものはたくさんあります。


 体のケア(運動、栄養、休養) 体を鍛える

 早く寝る

睡眠はパフォーマンスにとって大変重要な要素です。
睡眠不足の状態とたっぷり睡眠をとった状態とを比較すると、睡眠をとった方が、フリースローの成功率やスプリントのタイムの短縮などのパフォーマンス向上が見られたという実験もあります。当然手術のパフォーマンスも例外ではありません。
また、睡眠は記憶の整理整頓を行う上でも重要な役割を担っています。せっかく勉強した内容が睡眠不足のせいで無駄になったら虚しいですよね。
何より睡眠不足は体にも心にも良くないです。記憶力を低下させ、判断力を鈍らせ、不安を高め、怒りを助長し、食欲を暴走させ、筋肉を減らし、内臓脂肪を増やし、免疫系を抑制し、遺伝子の修復を阻害します。当然寿命だって縮みます。

良質な睡眠を得るためのガイドラインとして、
* 起床後、日光を浴びる
* 朝に軽く運動する
* 昼に10〜20分の仮眠をとる
* 午後にカフェインを摂取しない
* 夕に心拍数を高める運動をする
* 飲酒はごく少量にとどめる
* 就寝2時間前に入浴する
* 就寝前3時間以降は食べない
* 就寝前2時間以降は体温を上げない
* 就寝前2時間以降はブルーライトをカットする
* 寝室では寝る以外の行為をしない
* 寝室は真っ暗にする
* カーテンは開けて寝て、朝日で目覚められるようにする

などが挙げられます
これらを守るだけでも睡眠の質はかなり高まります。

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出典:ジョジョの奇妙な冒険

そうは言っても、当直や深夜の緊急手術など、常に十分な睡眠が保証されているわけではないのが我々外科医の辛いところです。
このような夜の勤務についても可能な限りダメージを少なくする方法があるので参考にしてください。
* 無理なシフトを組まない。中にはお金が欲しいからと言う理由で当直を入れまくる人もいますが、これは自殺行為に等しいので止めましょう。夜勤は連続するとサーカディアンリズムが大きくズレてしまい、修正に時間がかかるようになります。
* 夜勤明けの通勤には要注意。夜勤明けの注意力は飲酒後に等しいほど低下していると言うデータがあります。実際に私の友人も事故を起こしました。帰宅前に仮眠をとるようにしてください。
* 光をコントロールする。夜勤中は職場を明るくして覚醒を促しましょう。夜勤明けの帰宅中にはサングラスを使用します。夜勤明けの昼寝の際には、遮光カーテンやアイマスクを使用し、完全に光をシャットアウトしましょう。昼寝の後の起床時には、なるべく明るい光を浴びるようにしましょう。
* サーカディアンリズムを元に戻す。夜勤明けの日の昼寝はほどほどに止め、夜は通常通りの時間に眠り、サーカディアンリズムを速やかに元に戻すよう意識しましょう。もちろんその翌朝は通常の時間に目覚めましょう。
* カフェイン上手く利用する。夜勤の前にコーヒーを一杯飲むことは、夜勤中の覚醒を促進するのに役立ちます。カフェインは、摂取後30分ほどで最高血中濃度に到達し、半減期が4〜5時間ほどとされています。
* 身体に優しい食事を心がける。夜勤明けは、コルチゾールが増えたり、インスリン感受性が低下するなど内分泌環境が混乱した状態です。強いストレスを感じた脳はいわゆるジャンクな食べ物の味を強く求めます。これに流されるとさらに身体や精神に悪影響を及ぼすので、意識的に健康的な食事を摂るように心がけましょう。意思の力では太刀打ちできないほどの衝動が生まれることもあるので、夜勤明けの日の食事は決めておくというのも有効です(If-Then Planning)
* 場合によっては睡眠薬を使う。睡眠薬は必須アイテムではありませんが、上手に使うと強い味方になってくれます。臨床の勉強も兼ねて自身の状況に合ったものを利用してみるのも良いでしょう。
* アルコールは避ける。飲酒は寝つきは良くなりますが、睡眠が浅くなったり、耐性や依存の問題があるため、とくに夜勤明けの睡眠導入剤としての利用は避けるべきです。


 テレビは観ない。スマホとは節度を持ってお付き合いする。

乱暴な言い方ですが、テレビは今や時代遅れのアイテムです。

* そもそも有益な情報が得られる機会が少ない
* 必要な情報が出てくるまで遅い
* CMが多い

など、時間対効果が低すぎます
テレビの試聴時間と年収は反比例するというデータもあります。
テレビと新聞とラジオだけが主要な情報源だった過去ならいざ知らず、今でははっきり言ってテレビは一切観る必要はないでしょう。


そして、現代、テレビに変わって人生を浪費させる原因となっているのがスマホです。
スマホは今や無くてはならない存在になってきています。
あらゆる論文などの学術的専門的知識に、いつでもどこからでもアクセスできるようになったのは、まさに知識のルネッサンスと言えるでしょう。
しかし、スマートフォンには時間を浪費させるような誘惑も多数潜んでいるのも見逃せない事実です。
ちなみに、スマホ(やテレビなど)から一方的に与えられるだけの娯楽には、認知機能低下・睡眠の質の低下・気分障害などの多数のデメリットがあることが分かっています。
また、スマホで簡単に欲求が満たされるという快楽は人間の報酬系に作用し、依存を形成します。
スマホを娯楽に使うのは、1日1時間以内に制限しましょう。
人生は有限です。私もあなたもいつかは必ず死にます。テレビやスマホでのゲームやSNSやネットサーフィンなどで、人生の限りある大切な時間を浪費しないようにして下さい。
例えば、1日30分だけでもこのような無意味な時間を減らせば、30日間で15時間もの有意義な時間が生まれます。

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出典:弱虫ペダル


 運動する

健康管理のためだけと思われがちな運動ですが、実は、勉強の効果を高めるためにも大切です。
実際に、認知症の予防に運動が良いというデータは溢れるほど存在しています。
概略をまとめると、
運動には、
ドーパミンなどのモノアミンの向上により、気分を爽快にし、注意力が向上し、やる気が向上する
ストレス発散に繋がり、コルチゾールが減少する
脳由来神経栄養因子により、ニューロン同士の結合を促進する
筋肉が刺激され、インスリン様成長因子が増加する
結果として、海馬の幹細胞から新しいニューロンが成長するのを促す
と言った学習への効果があります。
始めは好きな運動、やりやすい運動など、なんでも良いので、週に2〜3回、1回当たり10〜30分間ほどを目安に継続してみてください。
海馬への影響に限れば、全くしんどくない程度の楽な運動が最適です。
一定のリズムの動作を反復する有酸素運動は脳の活性化につながるので、できれば毎朝軽く行いたいものです。
ジョギング、サイクリング、ウォーキング、サーキットトレーニング、縄跳びなどが手軽で人気です。
ちなみに有酸素運動を脂肪を減らすために長時間する人が多いですが、有酸素運動で痩せないことは多数の実験で示されている科学的事実です。
逆に、しんどくなるまで継続するとコルチゾールが増えて、筋肉が増えない、海馬が萎縮するなどの悪影響が増えてしまうので注意しましょう。
有酸素運動の目的はあくまで気分のリフレッシュと脳の活性化と呼吸循環器系のメンテナンスです。
本気でマラソンなどの競技として打ち込むのでなければ、最大心拍数の70〜80%程度で、20〜30分間もやれば十分です。
ただ、これだけでは、筋肉や循環器系への負荷が足りないのも事実です。
週に2〜3回は、20〜30秒間の全力ダッシュと5分休憩を4〜6本行うのもお勧めです。(高強度インターバルトレーニング)
とても気分爽快になりますが、大人になってから坂道を全力ダッシュするのは結構恥ずかしいです(笑)。ひっそりした良い場所がなければ、屋内でバーピージャンプをするのがお勧めです。

筋トレも生物として絶対に実施したい運動です。

高閾値モーターユニットに支配される筋線維に高いトルクをかけて筋肥大を誘発できるのは筋トレ(筋力トレーニング)しかありません。
筋トレは将来のサルコペニアや骨粗鬆症の抑制にも有意義です。
また、計画性向上、時間管理力向上、目標達成時の自己効力感や自己肯定感の向上、気分の高揚、マインドフルネスなど、高みを目指す人には嬉しい効果が満載です。世界のエグゼクティブ達が、高いお金を払って、貴重な時間を割いてでも筋トレをしているのは、そこに確かな効果があるからです。

筋トレのポイントは追い込みすぎないことです。実はその方が効果が高いです。
適当にやりつつ、やめずに継続する、というぐらいのスタンスでやっていると段々その効果や良さが実感できるはずです。そこまでいくと、あとは続けるだけです。

近頃は反復不能になるまで追い込むよりも、その1〜2回前にセットを終えた方が、中枢神経疲労を制限できて、筋肥大にも有効なことが分かっています。
また、1回のワークアウトで多数のセットをこなして追い込んでも、各セットを分散させても、1週間あたりでのセット数がほぼ同じであれば効果も同等であることも分かっています。
初心者は1部位あたり6〜10セット/週、慣れてきたら10〜20セット/週を目標にしましょう。
というわけで、とにかくちょこちょこ隙間時間を見つけては運動しましょう。

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出典:ドラゴンボール


 食事に気を配る

ここ数年の食事関連の書籍のトピックの流れとしては、
奇天烈なダイエットの否定→カロリー収支の最適化→3大栄養素(PFC)バランスの最適化→酸化・糖化の抑制
です。

たくさんの食事に関する情報が溢れていますが、信頼性のある情報をまとめると、守るべきポイントは比較的シンプルです。
* 幸せを感じながら味わって食べる(マインドフルイーティング)
↑最も重要!!!10秒黙祷しながら「いただきます」と「ごちそうさま」を言ってみると良いです。
* 食事とは別に、良質な水を毎日2〜6L飲む
* よく噛む
* 砂糖は極力避ける(調味料や原材料として含まれる隠れ砂糖に注意)
* 加工肉や精製された炭水化物は極力避ける
* 1食で、緑黄色野菜+淡色野菜+海藻+きのこを両手一杯ほど摂る
* 1食で、良質なタンパク源を手拳大ほど摂る
* 1食で、良質な炭水化物を手拳大ほど摂る
* 夜21時〜翌朝6時の間はエネルギーのあるものは摂取しない
* 週に1〜2日ほど1〜2食抜く
* 毎日12時間以上の絶食時間を設ける(可能なら男性16時間、女性14時間に延長)
* 飲酒は必要ではないが、少量の摂取ならば悪くはない

先進的な人々の間ではすでに、「ファスティング」、「炭水化物を減らし良い脂質を増やす」というような食事法が一般化しつつあります。
糖化や酸化は、手術の技能向上などに最も重要な臓器である「脳」(正確には全身の細胞)をジワジワと破滅に導きます。
科学的な食事法の分野では、すでにパラダイムシフトが起こりつつあります。旧来の、「3食欠かさず食べるべきである、炭水化物は主食である、脂質は悪である」というイデオロギーを早く捨て去りましょう。

ちなみに、摂取エネルギーだけを制限しても長期的な体重減少につながらないことは明確な科学的事実なので、細かいカロリー計算は、意味がありません(体型改善は、食事・運動・睡眠の総合的な改善が必要です)。
食事は娯楽としての要素を持つことも否定はできませんが、楽しむ食事と身体を整える食事は分けて考え、普段の食事は身体のケアのために質の良いものにしましょう。

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出典:トリコ 


禁煙

医師は喫煙者が少ない職業と言われますが、中には愛煙家もいます。
ただ、残念なことに、喫煙はメリットが何ひとつない、世にも珍しい娯楽です。
記憶にも悪影響があるので、勉強した内容が定着しづらくなる恐れがあります。
合理的に判断した場合、止める以外の選択肢は存在しません(とはいえ、依存のために非常に困難なのは事実です)。
ぜひ、10分後の一時的な快楽だけでなく、10ヶ月後、10年後の幸せまで考えてみてください。
禁煙は意思の力だけではほぼ不可能です。素直にチャンピックスやニコチンパッチを使いましょう。
自身を客観的に省みることができるように行動記録などのデータをとっておくことも必要です。

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出典:ROOKIES

瞑想

瞑想は、あれこれと思考することを止め、ただひたすら、今この瞬間に起こっていることに感覚を研ぎ澄ませて感じる行為です。
インターネットとスマホの普及・発展により、情報の洪水とも呼ばれる環境に我々は日夜晒されています。
これは脳にとってはオーバーワークを強いられる状態です。
そんな中で、目を閉じて、姿勢を正し、深く大きい呼吸を続けて、身体の感覚に集中して意識を傾けます。そうすることで、脳をリフレッシュさせるのが瞑想の目的です。
私はあまりその効果を信じていませんでしたが、試しに1日5分だけ1ヶ月ほど続けてみると、思考がものすごくクリアになるのを感じました(信じられないと思いますが『明らかに』変わりました)。
思考がクリアになると、課題設定能力や問題解決能力など、何かを極めるために必要なメタ認知能力が高まります。そして、ひいては手術がうまくなることにつながるのです。
時間も場所も選ばずできるので、まずは1日1分から始めてみてください。
ちょっとした待ち時間に、マインドフルな深呼吸を行うのもおすすめです。

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出典:鬼滅の刃


 心 心構えを改革する

ここから先は、最も大切な『心構え』すなわち『マインドセット』のお話です。
『心が変われば行動が変わる、行動が変われば習慣が変わる、習慣が変われば人格が変わる、人格が変われば運命が変わる』という有名な言葉が示す通り、実は心構えは人生の根幹を成すものです。

ここまで、実施すべき行動をたくさん挙げてきました。
おそらく、どれも有効であることは直感的に理解できる内容だったかと思います。

しかし、読者の皆さんの中で、今から(遅くても明日から)実際に行動に移す人はほとんどいないのではないでしょうか?
もし今からすぐにここまで書いてきた行動が全部できるという人には、ここから先の有料部分の内容はおそらく必要ありません。
逆に、「今すぐこれらを行動に移せますか?」と聞かれて、少しでもためらった場合には、ここから先の内容は非常に有意義になると思います。
人は「正しい、役立つ、有意義である」と頭で分かっているだけでは行動を起こせない生き物です。
これは、現状維持こそが最も効率よく命を落とさずに済む方法だからです。
何か変化を起こす場合には常にリスクがつきまといます。
リスクを避けるのは生物として当然備わっている防御反応なのです。

ここから先の有料部分では、将来の人生を素晴らしいものへと変えていくために、行動を好ましいものへと変化させ、それを継続していくことができるような内容になっています。
ちなみに、世にある自己啓発書の類に書いてあることの根底にある考え方は、これから以下で解説する仕組みによって、きっとその根底にある考え方が理解できます。
さらに、パフォーマンスアップのための仕組みを理解するだけでなく、実際に自発的に試行錯誤し、自己研鑽に励めるようなノウハウが理解できます。

何かを追い求め励むことはとても悦びに満ちた素晴らしいことです。

「子曰く、これを知るものはこれを好むものに如かず。これを好むものはこれを楽しむ者に如かず」
かの有名な論語の一説の通り、人生を楽しめる者こそが最高のパフォーマンスを発揮します。

これから先は人生を楽しむためのエッセンスが詰まっています。
さあぜひご覧ください!

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出典:ダイヤのエース

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