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フグタ社長業務日誌【怒涛の後編】『続・洞爺湖にて』

このシリーズは2007年9月~2008年9月までの1年間にわたる、福田康夫総理の「首相動静」を基にしたフィクション(パロディ)です。
※5月からは後編となり、9月退任までの慌ただしい動静を追いかけます。さてフグタ社長の命運はいかに・・・?。(巻9は自2008年6月1日~至7月31日・2箇月分)

フグタ社長業務日誌(巻9-5):7月8日(火)

※本日も引き続き奥様代筆です(秘書注)。

 「ザ・ウィンザーホテル洞爺」に来ています。世界のトップ企業の社長さんたちを大勢招待しているので、主人は朝から大忙しです。
 ホテルの玄関タイルにモップをかけたり、ハイヤーを呼んだり、お茶を入れたり、お出迎えしたり、一人ずつ握手をしてみたり・・。もし半被(はっぴ)を着ていればまるきり温泉旅館の番頭さんです。

 社長さんたちは一応会議だとか言って、朝からつるんで馬鹿話をしているのですが、一緒に来ている奥さま達は(私も含めて)ヒマなので、どうやって時間をつぶすかが最大の課題です。

 昨日(7日)は、昼食会で顔合わせ。今回いらっしゃっているのは、アメリカのブッシュ社長の奥様をはじめ5人。イギリス・ブラウン社長の奥様は、広告コンサルタント会社の経営者。カナダの社長の奥様はグラフィックデザイナーで、趣味はオートバイだとか。ロシアの何とか(お名前忘れました)さんの奥様は、あまり目立たない方です。
 フランスの社長の奥様は、元スーパーモデルで現役ミュージシャン! なので、ぜひお会いしたかった。サインも欲しかった、のですが欠席です。そのためか、一人で来られたご主人はご機嫌斜めです。イタリアの社長さんの奥様も欠席です。場所がねえ・・、コモ湖の方がまし。ということなのでしょうね。京都だったら来られていたと思います。

 昼食会が終われば夕食会まで何もすることがありません。時間つなぎに十二単の着付けのデモンストレーションやお茶会をしてみました。お茶会で着物に着替えますと、私はまるで温泉旅館の美人女将です。ふふふ。
 そうそう、七夕なので皆さんで短冊も書いて吊りました。主人は「温故創新 人類の英知に学び未来を拓く」と書きました。以前中国に行った時孔子廟で書いたのと同じ文句の使い回しです。

 他の社長さんたちもそれなりに書かれましたが、皆さん「短冊はショートフレーズですよ」と申し上げてもなかなか言うことをお聞きになりません。
 ロシアの社長さんは「織り姫と彦星の間に天の川が流れていても、彼らはお互いを思う不屈の力によって宇宙の中でつながっています。これは地球の人々にとって示唆に富んでいます。われわれも共通の故郷、平和、繁栄、そして母なる大地の未来に対する責任でつながっており、これらを守ることはわれわれの責務です。私は北海道洞爺湖サミットがこの高貴な目標達成に貢献すると確信しています」とお書きになりました。トルストイの長編のあらすじのような短冊でした。

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注:
温泉旅館の番頭さんと間違えられながらも福田首相はよく働いた。3日間で延べ約14時間を越える会議を終始、非常に沈着冷静かつ安定した議長運営で乗り切った。常に気を配り、ときにユーモアを交え、話しかけ場を和ませる場面もあったらしい。この努力に対する、各国首脳の反応はおおむね下記のとおりである。
「素晴らしいおもてなしで日本での滞在を大いに楽しむことができた」米国
「素晴らしい会場で(霧がかかっているが)、非常に快適な環境で仕事が出来ることに感謝したい」ロシア
「昨年のサミットの成果からして、我々は再び大きな成果を達成した」ドイツ
「初めての訪日で北海道という美しい場所を訪問でき、嬉しく思っている」カナダ
「訪日予定が過去3回あったがいずれも実現しなかった。日本は今回が初めてで感激している」イタリア
・・とまあ、当たり障りのないコメントで、これを外交辞令という。
※『フグタ社長業務日誌:続・洞爺湖にて』は、ブログ『tanpopost』に2008年7月10日 付けで掲載したものです。


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