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SF小説-民営自衛隊㈱ #7:民営化にあたっての市場状況

Chapter7:民営化にあたっての市場状況

 自衛隊を民営化する中で、もうひとつ問題になったのが、他社競合状況である。
 世界には「PMCs(Private Military Companies)」と呼ばれる軍事サービスを委託された企業群が存在する。
 2005年現在、調査報道者国際協会(International Consortium Investigative Journalists)の調べによれば、世界110カ国で、少なくとも90の民間軍事サービス企業(PMC)が活動している、といわれる。(補注:ロシアのワグネルは2014年創立)
 特に有名なのは、アメリカの「ケロコーン社」(コーンフレークのケロッグとは関係ない)。米国首脳とのコネクションで、イラクでの受注が目立ち頭角を現してきた。また、1975年創業のイギリスの老舗「コントローリング社」は、世界130カ国で5,300以上のクライアントを抱えている最大手企業である。

 自衛隊が民営化し、海外進出する場合、こうしたPMC企業がライバルとなる。もちろん超音速戦闘機やイージス艦まで持つ自衛隊は、主要装備の質量レベルでは、圧倒的にアドバンテージがある。しかし、世界的な人的コネクションや、現場レベルでの習熟度(語学力を含む)などは弱い。
 早急に海外営業力の強化を図る必要がある。JDAWはワシントンに支社を置くことにしている。支社長には、(まだ本人には内緒だが)現防衛庁長官を予定している。

 日本国内に海外企業が進出してくる可能性もないではない。が、これはあまり脅威にはならないだろう(日本語の語学力も含めて)。日本市場は海外の民間軍事企業にとって、さほど魅力的ではない。逆に、自衛隊社員の転職リクルーティング(引き抜き)には注意を要する。
 また国内企業が新規参入を図ることも予想される。総合警備会社などである。大規模な業務は無理としても、小回りが利き実績と営業力はある。自衛隊㈱としてはライバルではなく、共存共栄を図るパートナー企業として接することになるだろう。

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※この記事は2005年5月20日にブログ『tanpopost』に掲載したものです。
内容はフィクション(SF)であり、実在の団体・人物等とはまったく関係ありません。

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