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SF小説-民営自衛隊㈱ #3:やはり分割か?民営化案の方向

Chapter3:やはり分割か?民営化案の方向

 現状の自衛隊は内閣総理大臣・防衛庁長官をヘッドとして、総合幕僚会議(実質的な意思決定機関)が置かれ、その下に陸海空の3自衛隊がぶら下がっている。参考に20XX年現在の組織図(下図)を掲げておく。
 組織図内の「米軍コモン会議」は、米軍との情報交換や協同作戦を実施する場合の調整機関。「コモン」はcommon=共有の意味である。「顧問」ではない。尚、(今まで書き忘れていたが)、「自衛隊」というのは「自主防衛隊」の略称である。

自衛隊(自主防衛隊)の組織


 自衛隊民営化に当たっては、組織をどうするかも大きな問題である。現状のまま民営化すると、企業として巨大すぎる。到底、効率的な経営がなされるとは思えない。まさに一大天下り会社を作るだけになる。また、国の防衛事業を1つの民間企業が独占するのはまずい。やはり国鉄や電電公社などと同じように分割せざるを得ない。
 当初、『自衛隊の民営化に関する調査委員会』(略称:自民調)の中で、分割案として候補に上がったのは『機能別カンパニー』と、いわゆる『JR方式』の2方向である。

 『機能別カンパニー』案とは、すなわち、陸上カンパニー、海上カンパニー、航空カンパニーの3社体制。もちろんそのままだと動きがばらばらになるので、3社の上に統括組織=ホールディングカンパニーを置く。まあいえば、現状の自衛隊組織に近い。横文字になっただけか、新味がない、などと自民調内部でも支持者は少ない。また、陸海空連携での総合業務に支障をきたす恐れもある。

 一方『JR方式』とは、エリア分割案である。例えば日本を5ブロックに分け、北海道SDF(セルフ・ディフェンス・フォースの略)、東北関東SDF、中部SDF、関西SDF(中四国を含む)、九州SDF(沖縄を含む)とする。各ブロックは陸海空をセットにして事業展開することで効率化を図る。
 現状の自衛隊は陸海空が各々の装備を持っている。その結果例えば、空自のE-2C早期警戒機と海自のP-3C哨戒機は、言ってみれば同じ偵察機なのに別々に運用されている。ヘリにしても陸海空がそれぞれ持っている。
 『JR方式』では、エリアカンパニーごとに陸海空をディビジョンとして一元化し、装備・人員の重複を解消する。これにより効率的な運用ができる。さらにエリア単位できめ細かく総合展開が図れるので、災害派遣など地域に密着した活動に小回りが利くメリットもある。反面、全国統一での業務展開が難しいのはデメリットである。やはり上部統括組織(SDFホールディングス)が必要となろう。組織図(下図)を参照。

JR方式の民営化案


 いずれにしても最終的には(有事には)、総理大臣が総ヘッドとなるが、それは民間企業の組織図の一番上に「株主」が置かれるような、概念的・名目上のものである。実質的な決裁権は自衛隊各カンパニー社長が持つことになる。

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※この記事は2005年5月17日にブログ『tanpopost』に掲載したものです。
内容はフィクション(SF)であり、実在の団体・人物等とはまったく関係ありません。



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