三島 こうこ

ものを書く人。未亡人。 悪性褐色細胞腫・先尖性肥大型心筋症・卵巣奇形嚢腫・PTSD・皮…

三島 こうこ

ものを書く人。未亡人。 悪性褐色細胞腫・先尖性肥大型心筋症・卵巣奇形嚢腫・PTSD・皮膚由来悪性リンパ腫など、7つの病気を抱えています。現在MABG治験中。

マガジン

  • お題エッセイ・小説

    ブログの読者にお題を一言いただき、24時間以内にインスピレーションで書いたエッセイや小説。 「とりあえず速く書く」ということに挑戦していた時期の名残。 プロットもテーマも描写も中途半端なところが多いので今読み返すと穴だらけ。 でも確かにあの時期、文章を書くことの大きなトレーニングにはなった。

  • オススメ書籍

    読んでオススメしたい書籍をここに残します。

  • 褐色細胞腫 闘病記

    日本でも稀少とされている褐色細胞腫の闘病記。オペ経験6回。7回目の再発でCVD治療をしました。現在ターミナルケアに向けて終活中。

  • 日常

    後家の日常の一部です。

最近の記事

『週刊金曜日10/20号』【なぜ、性暴力被害者が加害者と対話し続けるのか】byにのみやさをり&斉藤章佳

「近々、週刊金曜日に対談も含めて記事を載せてもらえることになったよ」 いつものようにLINEでにのみやさをりさんと雑談をしている最中、唐突に報告があった。彼女は他人の言葉にはよく耳を傾けてくれるが、自分のことはいつも「何かのついでに」という体で話す。それは彼女独特の「照れ」と「謙虚さ」と、ほんの少しの「懼れ」からなのだろうと思う。根掘り葉掘り聞きたいのをこらえて「そうなの、よかったね、楽しみにしてるよ」とだけ伝えた。や、しかし本当は違う。実は私はそのとき、飛び上がりたいほど

    • 羽生結弦『GIFT』鑑賞記 ⑤翼と両腕

      【① ② ③  ④】 発車時刻をスマホで調べる。うまいことに15分後に発車するやつがありそうだ。しかし、新幹線乗り場がみつからない。 構内をウロウロしていたら、白ボアブルゾンの団体が6人ほどたむろしているのが見える。中国語が飛び交うのがここまで聞こえる。今日はやたら中国人と会うな。中国には熱狂的ファンが多いのを実証しているなあ。 あ、あそこにもブルゾン着てる人が。あ、あそこにも。あ、あっちにも。 でもなぜかお互いすれ違っても目を合わせない。なんか会場外で見知らぬ人とおんな

      • 羽生結弦『GIFT』鑑賞記 ④丸ノ内線Conversation

        【① ② ③】 さあ、夢の時間は終わった。 これからはるばる帰路につかなければならない。 東京ドームを出てから、私は後楽園駅に向かった。いや、正確に言えばひたすら白ボアブルゾンの道案内についていっただけだ。が、とりあえず着いた。 しかし、後楽園駅から先は自力でなんとかしないといけない。まず東京まで出よう。丸の内線か。それにしても混んでいる。駅にいるのはほぼ羽生結弦の余韻に浸っている人ばかりのように見える。 行き先を間違えないよう何度も確認して電車に乗る。車内も混んでいる。

        • 羽生結弦『GIFT』鑑賞記 ③between K and C

          【① ②】 自分の席に座り、何気なく両隣がどんな人かを探る。どうやら二人とも私と同じ「おひとりさま」のようだ。スマホを熱心にいじっている。見るともなしに右隣の人のスマホを見ると、中国語でLINEをしている。おお、中国の方か。まだ若い。20代前半だな。ピンクのセーター、ふわふわで可愛い。なんか親しみやすそうな子だな。でも私、「你好」と「謝謝」くらいしか喋れんぞ。ああ、残念だわ。 左側の彼女のスマホには韓国語が並んでいる。ちょっと羽田美智子に似ているな。美人だ。おっきなプーさん

        『週刊金曜日10/20号』【なぜ、性暴力被害者が加害者と対話し続けるのか】byにのみやさをり&斉藤章佳

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          羽生結弦『GIFT』鑑賞記 ②開演40分前の危機

          【前回①はこちらから】 - ショーが始まってからトイレに立つ ― ファンとして、マナーの基本として、やはりこれだけは絶対避けたいものである。入念な排泄計画、これも大事な儀式のひとつだ。 「トイレを我慢するには水分摂取はゼリー飲料で」 Twitterで得た情報。私はそれを信じて3袋のウィダーinゼリーを持ってきていた。早々にトイレを済ませ、コンコースの壁に寄りかかり、ちゅうちゅうと音を立てエネルギー補給する。会場内は予想に反して暑い。本当なら喉を鳴らして水分を一気飲みしたい

          羽生結弦『GIFT』鑑賞記 ②開演40分前の危機

          羽生結弦『GIFT』鑑賞記 ①風見鶏ボアブルゾン

          「死ぬまでに一度でいいから生羽生を観たい」 ソチ落ちしてからずっと私の心にあったこの願い。 私は何度も余命宣告をされてきた難病患者だが、発病時5年生存率0%と言われて以来、なぜか毎年生存率が増加するという不思議な現象を引き起こしてきた。要は、なかなか死なずに生きた。その理由のうちのひとつは冒頭に戻る。 「死ぬまでに一度でいいから生羽生を観たい」・・・これだ。 今回、一発SS席当選のミラクルが私の身に降りかかった。 喜びより先に立ったのは「この願いが叶ったら私は死ぬのでは」

          羽生結弦『GIFT』鑑賞記 ①風見鶏ボアブルゾン

          『盗撮をやめられない男たち』斉藤 章佳

          「ね、あんたの彼氏、さっき警察に連行されてったよ」 煙草をくわえながらその人は私の目を見ずに言い放った。 そこは自動車教習所の受付ロビー。 声をかけたのは軽口を叩き合える気のいい清掃員のおじちゃんだ。 そういえばさっきパトカーが駐車場に停まっていた。あのパトカーに彼は乗っていたのか。 私は膝が震え始めるのを感じながら、その場に立ちすくむ。 初めての恋人は通っていた教習所の教官だった。 私は19歳。本ばかり読んでいる内気な、それでいて自意識過剰で、人に嫌われないように迷惑が

          『盗撮をやめられない男たち』斉藤 章佳

          『鬱くしき人々のうた 実録・閉鎖病棟』卯月妙子

          彼女と知り合ってもう20年以上は経つ。 当時の知人に〈スカトロAV女優という経歴を持つ精神疾患を持った漫画家さんだよ〉という、かなりぶっ飛んだ紹介のされ方をしたのを覚えている。 「えっ…スカトロって…」とかなり引いたのは事実だが、勧められるままに彼女の著作を読んだ。 『実録企画モノ』という漫画。とにかく衝撃だった。 何が衝撃だったかというと、スカトロAV撮影の裏側を描いてあるコテコテの内容にもかかわらず、一切汚らしさを感じなかったばかりか、あまりの痛快さ、面白さにどっぷり

          『鬱くしき人々のうた 実録・閉鎖病棟』卯月妙子

          褐色細胞腫闘病記 第41回「アメリカンブルー」

          え…今更再発って…13年も経って? そうだった。その時の私は、この病気がそういう特徴のある病気だということをすっかり忘れ切っていた。それほど油断していた。 「でも、4カ月前のCTの結果ではなんともなかったですよね」 にわかに信じがたい私は、怒りすら覚えながら目の前の自分の肝臓の画像を見る。そうだなあ。確かに肝臓の一部が白く抜けているなあ。しかもずいぶんハッキリとした影だこと。 レポートには読影医のコメントが添えられている。 【悪性褐色細胞腫の術後。肝臓と大腸を繋ぐ門脈付

          褐色細胞腫闘病記 第41回「アメリカンブルー」

          褐色細胞腫闘病記 第40回「13年ぶりの再発」

          今日は「私のところに来るのは一番最後でいい」という言葉をかけてくださった夫の勤務先の村上先輩の家に行く日だ。 そのご好意に甘えさせていただいていた御礼にと、私はせめてもの心遣いとして、すべての紙幣を新札に替えた。お好きだとうかがっていた和菓子も携えて、きちんと髪を整えた。 「ご無沙汰しております。この度は大変ご迷惑をおかけしました…遅くなってしまって…本当に申し訳ございませんでした」 緊張しながらたどたどしい口調で謝罪を述べると、ご夫婦は「大変ご苦労されましたね」とすかさず

          褐色細胞腫闘病記 第40回「13年ぶりの再発」

          褐色細胞腫闘病記 第39回「新しい出会い」

          私には、夫の葬儀の時の記憶がない。 喪服を母に着せてもらったこと、密葬のため急いで火葬したこと。 焼いた骨を抱いたときの熱さと、野乃子の俯いた白い顔。 それ以外、何も憶えていない。 私は、生きなくてはならなかった。 夫が残した莫大な借金は、皮肉にも弱った私を生かす原動力となった。 しかし、フラッシュバックによる苦しみは変わらず、私はいっそ全てを擲(なげう)ち、遁走していきたくなる衝動をほぼ毎日抑えていた。 私がほかの自死遺族と決定的に違うところがある。 それは、自死した

          褐色細胞腫闘病記 第39回「新しい出会い」

          褐色細胞腫闘病記「第38回 予約送信の遺書」

          あの日のことを書こうか。 何度電話しても、夫と連絡が取れない。 さっき自宅に寄った時、夫の車は車庫になかった。 今日はもしかしたらまたパチンコ屋にでも行っているのか。 私は内心猛烈に怒りながら、野乃子を連れて実家に行って夫を待つことにした。 野乃子は妹の子と一緒に妹の玲衣子のところで遊んでいる。 待てども待てども夫は来ない。 もう夕闇が空を覆い始める。もうみんな、夕食の時間だ。 母が言う。 「もう、今日は来ないよ。まあ、みんなで追い詰めても話せるものも話せないだろう、また

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          褐色細胞腫闘病記「第38回 予約送信の遺書」

          褐色細胞腫闘病記 第37回「夢の中の夢」

          「旦那さんが亡くなってまだ3カ月ですか…あの、失礼ですがもう少し休まれたほうがよろしいのではないですか?」 「いえ、働かないといけないんです。私、ここで働きたいんです。大丈夫です」 そこは、小さな建設会社。 「みしま建設株式会社」と白い看板が立っている。 苗字と同じという理由だけで、私はあてもなくその会社に面談を申し込んだ。 ピアノの仕事にも復帰することに決め、募集のチラシを撒いた。だが、そんなに一気に生徒が集まるわけはない。 それに、姪っ子にと手放したピアノを、今更返して

          褐色細胞腫闘病記 第37回「夢の中の夢」

          褐色細胞腫闘病記 第36回「螺旋階段」

          私は側道に車を停めたまま、昨夜のことを思い起こす。 本当は「なぜ」という言葉の礫(つぶて)を夫の全身に浴びせたかった。 そして私が心底納得のいく答えを発してほしかった。 「それじゃあ仕方がないよね」と私が心から言えるまっとうな理由を、目の前に差し出してほしかった。 ねぇ本当に、なぜ。 女性に貢いでいたの。ずっとパチンコがやめられなかったの。父親が死んで自暴自棄になってたの。 ねぇ本当に、なぜ。 こんなことを何度繰り返しても、私が自分のもとからは絶対に離れていかないという傲

          褐色細胞腫闘病記 第36回「螺旋階段」

          褐色細胞腫闘病記 第35回「溶けかかるアイスクリーム」

          ママ友との交流。 これはどうしても避けて通れない道である。 子供を学校に預けながら、親が親同士の中で孤立するわけにはいかないからだ。 娘が小学校に入ってからすぐ、噂話が嫌いそうな人を血眼になって探し、なんとか合いそうな話し相手を見つけた。 崎森こずえさんという私より3つ上のママは大所帯、子供が4人いる。 線が細く、声も小さく、いつも花影のようにひっそりとほほ笑む、静かな佇まいの人だ。彼女も私のような人を見つけていたらしく、すぐに意気投合した。 義父の葬儀では、私が気が付か

          褐色細胞腫闘病記 第35回「溶けかかるアイスクリーム」

          褐色細胞腫闘病記 第34回「淵の底」

          「野乃ちゃん、ほら、また忘れ物っ!」 昨日は体操服入れを忘れ、今日は絵の具セットを置き忘れ、この子のうっかり屋は本当に私にそっくりだ。 「ママー、プリントのお返事今日までだった!」 「えっやだぁっ! なんなのよぉ」 もうこんなやり取りはすっかり慣れすぎてまったく驚かない。 最後の手術から5年経った。 娘の野乃子は小学6年になった。ずっと誰にも分け隔てなく人に優しく接する女の子に育った。 あれから、棚沢教授も、梶並教授も、みどり先生も転院になり、私の主治医は肝移植を専門とす

          褐色細胞腫闘病記 第34回「淵の底」