新年度に注意、ブラック部活動

導入

この記事を読んでいる人で部活動を知らないという人は、いないと思います。
しかし、学生時代に部活動や習い事を経験しないまま、子供の親になる人も少なくありません。
また、子供のスポーツ(習い事)離れが進む現代では、小学生以下の子供たちにおいても、学習塾以外の経験がないまま、中学校に入学してしまうことが当たり前になってきました。
そこで気を付けたいのが、ブラック部活動です。部活動の経験がない大人や子供達は、漫画やアニメのような輝かしい部活動に期待を弾ませてしまいがちです。
そんな幻想を抱いているそこのあなたに、単刀直入に申し上げます。
そのように楽しい部活動は、ほぼ存在しません
練習は当然キツイですし、人間関係に悩まない人など存在しません。
どんなに部活のメンバーと仲が良好でも、顧問の先生や指導者の先生と関係が良好とは限りません。
まぁ、そういった壁を乗り越えていくことに部活動の意義があることは確かなのですが、この世には当人の努力では、どうあがいても上手くいかない部活動があります。
それが、ブラック部活動です。

そもそも、ブラック部活動とは?

それでは、ブラック部活動について簡単に説明させて頂きます。
分かりやすい例として、以下の事情がみられる場合、晴れてブラック部活動認定です。
(例外として、以下の事情がみられたとしても、単なる強豪校の場合もあるので注意です。また、強豪校であっても生徒を第一に考え、適正な運営が行われている部活動も多く存在します。)

初級レベル
・早朝から朝練
・学校が閉まる直前ギリギリまで練習
・テスト期間も学校の部活動禁止命令を無視して当然練習
・顧問や先輩からの暴言が当たり前
・とにかく毎週末、遠征、練習試合、大会の三拍子

上級レベル
・顧問や先輩からの体罰(暴力)当たり前
(昔はざらでしたが、今の時代法的にも道徳的にも大問題です)
・部内いじめが横行
・理由をこじつけたり、強迫したりして、部活動をやめさせない
・ボランティアやイベントに強制参加させる
・部活動中以外でも、生徒をこき使う

極悪レベル
・生徒達をマインドコントロール下に置く
・過去に、所属生徒が部活動中に死亡、又は部活動が原因で自殺している
・生徒を精神的に追い詰め、部活動を辞めた後に、退学に追い込む

ブラック部活動を事前に見分ける方法

上記のようなブラック部活動に入りたい人なんて、ドMさんくらいだと思います。ブラック部活動に入らない方法としては、そもそも部活動に入らないのが一番の得策ですが、それでは見も蓋もないので、しっかりとした対策を紹介します。

ステップ1:とにかく情報を集めよう

部活動に入ろうとするときは、候補の部活動について、とにかく情報を集めよう。中学(高校)入学と同時に、部活動入部を考えてる場合は、春休みから情報収集に移りましょう。

ここで有効打となる情報源は、既に部活動に所属している同級生や友達に直接話を聞くことです。特に、力の入っている部活動では、小学生のときから中学生たちの練習に混ざったり、合同練習が当たり前みたいな部も多くあるので、より正確で新鮮な情報を手に入れやすいです。直接的に聞きにくいという場合は、「A君って、~やってるよね。最近どう?楽しい?」など、それとなく聞きましょう。
仮にA君が、その部活動をしんどい、やめたいと思っていれば、質問の答えに困ることは明白です。逆に楽しめている場合は、ベラベラと楽しそうに部活動について話してくれるでしょう。

この情報収集方法は、子対子だけではなく、親対親でも非常に有効です。
子供の親であれば、PTAや学校の行事で、クラスメイトの親御さんや他学年の親御さん達と会う機会も少なからず、あると思います。
その際に、聞いてみましょう。別に、その親御さんと仲が良い必要はありません。相手のお子さんを褒めつつ探りを入れるんです。
「A君って、この前の試合でも活躍されていたみたいで凄いですね。試合の応援とかも行かれるんですか?」とか、「野球部、毎日練習頑張ってますね。洗濯物とかどうやってます」とか、
相手の親御さんが話したくなるような内容で、気軽に話しかけましょう。
このときに、あくまで純粋な感じで軽く聞くことが重要です。
間違っても重たい感じで聞かないようにしましょう。
重い感じで聞いてしまうと、相手も何か勘ぐられていると感じ、本当のことを話してくれなくなる可能性が高いです。
最初の掴みが成功すれば、相手の親御さんからどんどん情報を引き出しましょう。お母さん(女性の親御さん)達は、人間関係のことに不満を持っていれば簡単に愚痴ってくれるので(個人の見解)顧問の人間性や部内の保護者間の関係性などについて、聞き出せると尚更ベリーグッドです。

ただし、この情報収集も汎用性が高い訳ではありません。他の都道府県の学校に、進学する場合や私立の部活強豪校に進学する場合などは、そもそも同じ学校から進学する同級生が少ないですし、なんなら一人もいない可能性もあります。
全国大会常連で名前の通る学校であれば、ネットやSNSで検索するだけで、簡単に情報を集めることが出来るので、積極的に情報を集めましょう。
特に強豪校の場合、普通に自殺者が出ているところもあるので、しっかりと調べましょう。

名前も通らないし、地方で知名度も低い学校の場合は、情報収集に関しては、諦めた方が良いでしょう。
学校のホームページやパンフレットで情報収集する方法もありますが、実態や都合の悪いことは載っていないので信用に値しません。

ステップ2:部活動紹介や体験入部で実態を探ろう

ステップ1で十分に情報を集められなくても落ち込むのは、まだ早いです。
仕事もバイトも部活動も、入る前まではお客さんです。どういうことかというと、部活動に入る前ならいくら見学しても、いろいろ聞いても、何の問題もないということです。

多くの学校では、新入生が入学してから1週間以内に、全体オリエンテーションがあり、その中で部活動紹介があります。よくあるパターンとしては、各部活動の2、3年生が、各部活動のユニフォーム等を着て、舞台で模擬練習をしつつ、その前で部長や副部長が、その部活動について紹介します。
(各部活動、所要時間は3分くらいが相場、最後はだいたい吹奏楽部)

ここで、特に注目してほしいのが、部活動紹介をしている先輩方の表情や行動です。当然、全体オリエンテーション中は、各部活の顧問の目もありますので、先輩方がキビキビ動き、真面目に部活動紹介をしていれば、一瞬で
「あー、顧問が厳しいんだな」と分かります。特に、運動部だと分かりやすいです。

ただ、稀に部活動紹介だけ、おふざけモードで新入生達を楽しませて、部員を獲得しようとする場合もあるので注意が必要です。この事例で多いのは、サッカー部やバスケ部など、いかにも男子が憧れて、安易に入部してしまう部活動等です。だいたい、顧問に一芸を仕込まれています。

また、部活動紹介中は、誰がどの部活の顧問なのかを把握できているのであれば、各顧問の様子を見るのも有効です。(だいたい、オリエンテーションの先生紹介等で、各先生方が自己紹介するので覚えておくとグッドです。)

例えば、野球部の部活動紹介中に、顧問の先生が目で指示を出していたり、厳しい顔をしていたりしたら、ブラック部活動の可能性があるので要注意です。

良い顧問であれば、にこやかに部活動紹介を鑑賞していたり、自分が顧問の部活動の紹介時には、カメラを回していたりします。部活の3年生のお別れ会でその映像を流したりします。(良い先生は思い出づくりも忘れません)


はい、ここまで、部活動紹介での情報収集を紹介してきましたが、部活動紹介を注意深く見たけど、イマイチぴんと来ない、或いは、全部良さそうな部活動に見えたという場合も多いにありえると思います。

そんなときに、安易に入部を決めてしまってはダメです。まだ、段階を踏みましょう。本当に、入部して大丈夫かを見極めるには、体験入部が非常に有効です。

体験入部と聞くと、「それって、本入部する流れになるやつじゃん」と思われる方もいるでしょう、実際にないとは言いきれませんが、もしそうなってしまいそうなときは、担任の先生や偉い先生に相談しましょう。
(そんな事例ほぼ、ないですけど、、、、というのも、部活動体験入部の際は多くの新入生が各々、いろいろな部活動を体験するため、一人一人の生徒に気をとめる暇もありません。顧問も、部長にまかせっきりなんてことも多々あります。体験入部といっても、少し練習に参加させてもらうだけですから、身構える必要はありません。)

ただ、それども心配だよという人は、複数人で同じ日に体験入部にいく、他にも気になってる部活動があると明確に意思表示する等の対策を講じましょう。

体験入部の際には、部活動の実際の雰囲気や、顧問の指導、先輩後輩の上下関係等の実態を間近でじっくり観察することが重要です。

また、実際に練習に参加して、体力的についていけそうか判断することも、非常に重要です。体験入部の際の練習についていけないなら、速やかに入部候補から外しましょう。

ステップ3:最終手段、しばらく様子を見よう

ステップ1とステップ2を踏んでも、又は踏めなかったとしても、焦る必要はありません。まだ最終手段が残っています。

とりあえず部活動に入らないで、様子を見るのです。最終手段というだけあって、この手法は非常に有効です。

新入部員が、部活動に入って馴染みはじめるのは、入部してからだいたい1~2カ月です。新入部員が、部活についていけなかったり、馴染めなかったりして、ドロップアウトするのは、だいたいこの期間内です。

つまり、入学から1~2カ月様子見をすることで、自然とブラック部活動が炙り出されるという寸法です。

ブラック部活動であれば、新入部員達は一気に冷めて、雪崩のようにやめていきます。

仮に、新入部員がやめていなくても、当該部活動に入ったクラスメイトが体調を崩していたり、授業中に多く居眠りをしていたりすれば、その部活動はブラック部活動の可能性が高いので、赤信号です。

他方、当該部活動に入ったクラスメイトが、絶好調な感じであれば、その部活動は良い部活動の可能性が高いということです。(個人差はあるので注意)

最後は飛び込んでみる覚悟も重要

ここまで、ブラック部活動を事前に見分ける方法を紹介してきましたが、気になる部活動を外野から、いくら調べたり、様子を見たりしても、実際に入ってみないと分からないことは沢山あります。

ブラック部活動を見分ける方法を実践して、それでも、この部活動に入ってみたいという気持ちが強いなら、覚悟を決めて入部することも重要です。

実際に自分で決断して入部してみることは、人生上マイナスになることはないので、極度に緊張し過ぎる必要はありません。

心配していた出来事が、実際に起こったら、大したことなかったり、予想していたり簡単だったなんてことは、沢山あります。ただ、その逆もしかりなので、初めから簡単そうだと高を括るのはやめましょうね。

もし、ブラック部活動に入部してしまったら(ココ一番重要)

ここからは、最悪の事態、もしもブラック部活動に入部してしまったときの対処法について紹介していきます。本人はもちろんのこと、保護者の方についても重要な項目になります。

ケース1:一番平和なケース

まず、一番平和なケースとしては、顧問にやめる意思を伝え、退部届を提出してやめることが、できるケースです。ほとんどの場合は、ここで決着が付きます。

ケース2:校内で収まるケース

ケース1で決着しない場合は、顧問が退部を認めずに渋るケースがほとんどです。このような場合は、まず、担任の先生に相談して、それでもだめなら、学年主任、教頭、校長と、徐々に上の役職の教師に相談するようにしましょう。

ほとんどのケースでは、教頭まで話がいくと、大事になってくるため、顧問が退部を認めます。

この際に、保護者の方は、子どもの問題なのに、出しゃばってモンスターペアレントだと思われたらどうしようと考えることもあるかと思いますが、気にする必要は全くありません。

中学生や高校生は、まだまだ子供ですし、民法が未成年者に取消権を認める趣旨や少年法が20歳以下の者を保護する趣旨に鑑みれば、保護者である親等が、子供を守ることは当然のことです。

学校や教師に対して、クレーマーのように詰める必要はありませんが、学校側の対応が不適切だと思う場合は、強気にでても問題ありません。ただ、意味のない罵倒などは、逆に威力業務妨害罪に問われる場合があるので、あくまで冷静さは保つようにしましょう。

ケース3:校内で収まらないケース

ケース1、2までなら良いのですが、学校が大きかったりすると、学校側が頑なに退部を認めなかったり、退部申請に対して適当な対応をしなかったり(不作為)すると非常に厄介です。

やめられない期間が長引き、退部できない本人はもちろんのこと、保護者も精神的にも肉体的にも疲弊してしまいます。

このような場合は、弁護士や行政書士などの専門家が非常に頼りになります。

司法書士でも良いのですが、司法書士に依頼するくらいなら職域が広い弁護士に依頼する方が良いですし、自宅近くに内容証明代理業務を積極的に取り扱っている行政書士がいるなら、そちらに依頼した方が良いです。なぜなら、司法書士が登記や簡裁代理を独占専門業務とするのに対し、行政書士は官公庁に提出する書類の代理を独占専門業務としているため、内容証明なら行政書士に頼む方が良いでしょう。ただ、内容証明代理自体が行政書士の独占業務という訳ではありません。また、司法書士の場合、検察庁に対しての告訴ができますが、警察署に対する告訴はできない(行政書士は逆に検察庁に対する告訴ができません、学校での刑事事件はもっぱら警察署に告訴することとなります)というデメリットもあるので、弁護士や行政書士に相談するのが無難です。詳細はケース4で後述します。

弁護士や行政書士は、法律の専門家ですから、相談すれば、依頼者と学校の間に割って入ってくれるため、大変心強いです。

だいたいの流れとしては、弁護士や行政書士が、学校と直接話をつけたり、学校側に対して、適当な対応をするよう求める旨、適当な対応をしない場合は法的手段も辞さない旨を記載した内容証明郵便を送付したりします。

一生徒と一保護者に対しては、強気に出ていた学校が、弁護士や行政書士が出てくると手のひらを返したように大人しくなります。(そりゃそうです。弁護士や行政書士は法律の専門家なので、無視すれば大事になるのは明白です。)

弁職務の領域が広がっている今の時代、いじめなどの学校でのトラブルを得意とする弁護士や行政書士も多くなっています。ですから、学校トラブルを得意とする弁護士や行政書士に依頼するのがオススメです。

近くに、学校トラブルを得意とする弁護士や行政書士がいない場合や、そもそも、近くに弁護士はおろか、行政書士もいない場合は、名前の通る全国展開している大手事務所に相談しましょう。

実際に、学校トラブルに介入することとなれば、当然、料金は発生しますが、ほとんどの弁護士・行政書士事務所では、無料相談を行っているため、まずは電話で相談してみましょう。背に腹は代えられません。

ケース4:警察が介入することとなるケース

みなさんも、ニュースで強豪校の顧問が、部内暴力で逮捕されたのを見たことがあるのでは、ないでしょうか。

他人事のように感じますが、自分や自分の子どもが巻き込まれない保証は一切ありません。

もしも、そういったことに発展した場合は、速やかに弁護士と所轄の警察署に相談しましょう。理想としては、まず弁護士に相談して、警察署に弁護士に同行してもらい、助言をもらいながら警察官と話すのが良いです。助言をもらえるだけでも、非常に心強いですし、本人にとっても安心材料になります。また、警察官としても、弁護士が同行していれば、テキトーな対応はできなくなります。仮に、テキトーな対応をしても、すぐに告訴等の法的手段に出られることは明白です。
(暴力が絡むケースでは、裁判所で行う手続きや訴訟に発展する場合もあるので、司法書士や行政書士ではなく、はじめから弁護士に相談しましょう。)

被害届や告訴状が受理されれば、警察署は捜査をすることとなるため、結果的にニュースで見るような顧問が逮捕みたいな状況になります。

その後の賠償請求についても、弁護士が詳しく教えて、一連の対応を行ってくれるため安心です。

最後に

ここまで、なかなかに仰々しいことばかり書いてきましたが、ほとんどの場合は、平和に部活動を楽しめることでしょう。

ただ、備えあれば憂いなしです。

ここで、みなさんの肝を冷やすべく、非常にタイムリーな、事例を紹介します。

沖縄県で、2021年、県立高校の運動部でキャプテンを務めていた当時17歳の男子生徒が自ら命を絶った問題で、生徒の遺族が2023年2月9日、元顧問によるパワーハラスメントが原因だったとして県に対しおよそ1億4千万円の損害賠償を求め提訴しています。

事件自体は、もう2年前になりますが、亡くなられた当人が戻ってこないことはもちろん、遺族や友達たちの心の傷が完全に治ることはありません。

この事例では、当該顧問は懲戒免職処分に付されていますが、正直、だから何といった感じですね。

やってること自体は、傍から見たら単なる殺人に変わりありません。これ以上いうと法律の議論になるので、留めておきますが、本当に許されない行為であることには相違ありません。

もしも、子供がブラック部活動に入ってしまったら、沖縄の事例のようになってしまう前に、然るべき対応をするということを頭の片隅に置いていただければ幸いです。最後に子供の味方になってあげられるのは、保護者だけです。













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