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本「荒木飛呂彦の超偏愛! 映画の掟」|おもしろい映画の構造

いわずとしれたジョジョの荒木飛呂彦先生の本を読んだ.

映画が大好きな荒木飛呂彦先生.漫画を書き始める際に,なぜ自分が面白い映画が「面白い」と感じられるのかを構造的に考えたところ,突き詰めるとサスペンスが面白さの鍵であると気づいたそう.恋愛映画だろうが,ハードボイルドな映画だろうが,根っこには先の読めない展開が含まれているサスペンス性が面白さを底上げしているらしい.
そこで,先生自身が傑作と考える映画を題材になぜ面白いのかを詳しく解説してくれるそんな本.いわゆる面白さの秘密みたいな構造的な部分は第1章で話し切っていて,それからはずっとこの映画のここが面白くて大好きなんだ!!!という映画に対する愛が溢れた文章が続いていく本となっている.しかし,本当にその映画が好きなのことが伝わると同時に,クリエイターの方々が作品をどのような視点で観て楽しんでいるのかを垣間見ることができとても勉強になった.

刺さった文章

善悪やルールが現代からずれた世界を描いていくものだから,「えどうなるの!?」と手に汗握るシーンの連続です.つまり,日常から微妙に逸脱することでサスペンスを生み出しているのです.
ここで重要なのは,この「微妙に」ということ.全てが逸脱しているとただのファンタジーになってしまって,「これは別世界の話だな」と見るものに緊張感を与えません.あくまでも日常のリアリティが土台にあって,そこからちょっとずれていくことで見るものを引き込む.優れたサスペンスになるのです.

荒木飛呂彦の超偏愛! 映画の掟
p130

超わかる!!!!面白い映画ほどこの「微妙に」ずらすの加減がとてつもなく上手い.特に,ホラー映画を観ていて怖いと感じるかどうかの決め手は化け物のビジュアルや叫び声の恐ろしさよりも,いかに怖さを登場人物たちと共有できているかで決まる.怖さというのは自分が根源的に恐怖として感じてる部分にどれだけヒットしているかで決まるのだと思う.その根源的な部分に強く触れられた作品というのは共通して,日常がベースとなっている.日常からちょっとずれることで,「ひょっとしたらあるかも?」と思わされる.「これってありえない話でもないな・・・」そう思えた瞬間に怖いと思うのだ.共感が面白さの肝である.読んでてめっっちゃ共感した.

僕は人間とは家族や仲間、友人、恋人のことを何よりも大切にしている存在で、それこそが人生に目的を与えてくれると言っても良いと思っています。しかし、何かとても大切なことを決断する時、あるいは病気になった時、お腹が空いたりした時には結局のところ、人間は「ひとりぼっち」なのです。そして「ひとりぼっち」は、まさにサスペンス映画やホラー映画で描かれる状況そのものです。前書きにも書いたように、サスペンス映画やホラー映画はその寂しさに打ち震える恐怖を癒してくれます。

荒木飛呂彦の超偏愛! 映画の掟
p207

サスペンス映画・ホラー映画の主人公は基本ひとりぼっちである.どこから来るかも分からない恐怖を孤独に耐える構図が基本となっている.だからこそそのような映画を観ることで,「ひとりぼっち」への耐性をつけることができ,さらには孤独と戦う力を与えてくれるのだろう.孤独の怖さをしれるからこそ,今自分の回りにいる家族や友人,恋人のことを大切にしていこうと思えると書かれていた.なんだかこの辺はジョジョ全体に共通するテーマのようなものを感じる.どのような状況でもあきらめずに孤独でも戦い抜く黄金の精神を持つ主人公たちは,荒木飛呂彦先生の根底にある価値観を表現しているのかもしれない.

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