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谷郁雄の詩のノート19

遠い国で始まった戦争は、終わる見込みのないまま、まもなく1年目を迎えようとしています。始めるのは簡単でも終わらせるのは至難の業です。その間にも犠牲者は増え続けています。戦争を始める人間もいれば、平和を祈る人間もいます。そんなことを考えながらも、ぼくの暮らしは続いていきます。そして暮らしの中にも小さな危機は訪れます。病気だったり、ケガだったり、老いだったり。生きることは心細いことのくり返しですが、勇気と笑いを武器に生きていきたいと思う、今日この頃です。(最新詩集「詩を読みたくなる日」絶賛発売中)


「戦争ごっこ」

戦争ごっこ
けれど
死体は本物
傷も本物
恐怖も
涙も
寒さも
飢えも
正真正銘
本物の
戦争ごっこ


「祈り」

毎朝
日当たりの悪い
小さな神社で
手を合わせ
空に祈る

どうか
世界が
滅びませんように!

そして
今日も
いじわるな上司のいる
ブラック企業の
アルバイトに出かけていく


「船の上で」

ぼくらは全員
傾きながら
進んでいく船の
乗客

船の上で
夢見たり
恋したり
争ったり

タイタニックは
他人事だと
思い込もうとしても
やっぱり
ぼくらも
海の上にいる

せめて
日々の眺めが
美しくあってほしいと
願うことだけが
許されている

©Ikuo  Tani  2023


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