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谷郁雄の詩のノート42

ある日、高円寺の裏通りで見つけた真っ赤なステッカー。えっ、パンクロッカーのための労働組合があんの? しばし、その場で感動。証拠写真を撮っとかないと。でも、あとからネット検索したら、パンクバンドの名前だと判明。かなり過激なバンドらしく、おもに高円寺を拠点に活動中とか。いかにも高円寺らしいステッカーでした。最近は、花粉症で頭がぼんやりして詩が書けずにいましたが、なんとか2つ絞り出しました。高円寺の詩もあります。instagramのアカウントも作りましたが、たぶん、何もしないと思います。だったらアカウント作るなよ!(詩集「詩を読みたくなる日」他、好評発売中)


「東京」

曲がりくねった
道を歩き
ゴミを浮かべた
川をのぞき

ときどき
立ち止まって
空を見上げる

空のきれいな
小さな田舎に
ぼくは生まれた

なのにいまは
ここがふるさと
田舎を出てきた
人々が暮らす
大きな田舎

みんなの東京



「やのぐち荘(高円寺)」

ほんとはね
ここだけの話
この街には
うんと昔
暮らしたことがある
ほんの少しの間だけ
二人で
狭い部屋に
お風呂は
歩いて
近くの銭湯に行った
隣の部屋には
早稲田の
男子学生が住んでいた
まだ
ケータイなんか
なかったし
なくても
それなりに生きていた
人と人は
心でつながり合って
愛のようなものがあると
どこかで信じていた
小さな部屋への
道順は
ぼんやり憶えているけれど
もう
あのボロアパートは
存在しない
あの頃のぼくに言いたいのは
いまも二人で
元気にやっているよということ
いまも
この街が好きだということ

©Ikuo  Tani  2024


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