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谷郁雄の詩のノート6

昨日、安倍元総理が奈良で演説中に銃撃され亡くなりました。まさか、と思いましたが、ほんとの話でした。政治はきれいごとではないから、恨みを買うこともあるでしょう。でも、その死は突然すぎました。安倍さんはぼくと同年齢だから、家庭環境はまったくちがっていても、同じ時代の空気の中で生きてきたことになります。子供の頃は、テレビで「鉄腕アトム」や「鉄人28号」を見たことでしょう。ちなみに「鉄腕アトム」の主題歌は谷川俊太郎さんが作詞しています。その頃のぼくは、未来の自分が詩人になっているなんて夢にも思わず、アニメのヒーローさながら見えない敵と戦っていました。

「あんぱん」

ポケットの中に
二千円

ランチか
詩集か
心の秤にのせる

詩集のほうに
心が傾き

今日の
ランチは

あんぱん
一個


「夕方」

朝から
パソコンの
画面をのぞきこみ
気が付けば
もう夕方

窓の外の
空を
ハトたちが
旋回飛行している

ぼくは
ただ
世界を楽しむだけの
無能な
魔法使い

人ひとり
救えない


「よっこらしょ」

ぼくが
よっこらしょと言う

妻も
よっこらしょ

二人とも
特に
重い物を
持ち上げたりは
していないのに

日に
何度も
よっこらしょ

よっこらしょが
二人
家にいるみたいだ


「花占い」

花びらを
一枚ずつ
ちぎり

すき
きらい
すき
きらい
すき
きらい

花びらが
足りなくなって

きらいから
始めなかった
あの日の自分を
いまも許せないでいる


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