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琵琶湖キャンプでご当地グルメに溺れる大男が2人。

久々の友人とのキャンプだ。
私はフリーランス、友人は休職中であり、世間一般の社会人像に比べると自由な雰囲気はあるものの、それでもやはり小忙しく、予定というものはなかなか合わないものだ。「ここで出かけてしまうと後が大変だ」と一抹の不安は持ち合わせていたものの、そんなこと言っていては永久にその時は訪れまいと重い腰を上げ、もう闇箱と化したガレージの豆電にあかりを灯し、支度をはじめた。


朝、目が覚めると同時に、耳にしとしとと微かな連続音が入ってくる。どうやら小雨が降っているようだ。天気予報を見ると、私の住む地域より北側は降るらしい。今日のキャンプ地は琵琶湖の南あたりなのでひと安心し、少し残っていた記事執筆の仕事を片付けてしまう。支度の仕上げに発泡酒とジンの瓶をクーラーボックスに放り込む。ガララっと戸を開け放ち、雨に巨体が濡れぬよう我が身と同じ幅くらいの庇伝いにガレージに行く。

車に乗り込み、ダッシュボードに装着したスタンドにスマホをセットし、Google mapに目的地を入力する。「よし、行くか」とバックでガレージから車を出そうと「R」に入れたレバーが引き金だったのか、スタンドの吸盤がヌチャアと音を立てて剥がれ、スマホもろとも車床に叩きつけられた。吸盤に貼り付く埃や謎の木屑群を見て、そっと「D」に入れたくなるが、そのまま「R」でガレージから車を出し、いくばくか口をへの字に曲げて出発する。


ぶいーんと車を高速に乗せ、琵琶湖を目指す。すいすいと進んでいるものの車が多く、気づけばトラックに四方を囲まれている。それでも快調に進んでいたが、かなりトイレットな気分になってきて、桂川SAに入る。
しかし、駐車場がパンパンで停めることができず、あえなく退散。パンパン膀胱を携えたまま仕方なく京都南で高速を降り、ラブホ街手前のローソンでトイレを借りる。

トイレを借りたんだから何か買わないとという言い訳のもとちょっとしたお礼史上最もハイカロリーなLチキを購入。突発的に沸いたはんなり欲により抹茶ラテも買ってしまった。駐車場でパクパクと頬張っては、衣と身の隙間から滲み出る脂をじっと眺めた。


滋賀に入り、買い出しを開始する。
ひとつ目に立ち寄ったスーパーは現金かその店専用のプリペイドカードしか使えないというパターンだったので、財布にある現金2,500円の範囲内で買い物をする羽目に。巨大な図体のスーパーだったので鷹を括っていたのがダメだった。

トマト、アボカド、鶏もも肉、秋鮭、しめじ、えのきなどをかごに放り込んでいく。もちろんこれだけでは足りず、結局イオンに行き、酒やら追加の食材を買い出した。これでキャンプ地に行ける。

アウトドアショップにも立ち寄り、しゃれた皿を数点購入した。

14時半くらいにキャンプ地に着いた。ここは琵琶湖に面しているだけでなく、対岸の夜景も綺麗だから良いのだ。
Lチキしか食べていなかったので、取り急ぎイオンで購入したカツ丼を取り出し、椅子とテーブルを設営し、遅めのランチとした。ぼーっと琵琶湖を見つめながらゆっくり食べたかったのだが、上空を幾羽もの猛禽類が旋回している。鴨川沿いに腰掛けてピクニック気分で有名なクリームパンを食べて綻ばせていた顔がその数秒後には涙目になった経験から猛禽には人一倍注意を払っている。
仕方なく立ち上がり、カツと卵とじと米のバランスを整え、上空を見上げ、その整えた1セットをノールックで口に運ぶ。私もぐるぐると旋回しながら睨みつけてやったので諦めたらしい。少し落ち着いて食べてはヒョロロローという嫌な声が上空から聴こえるたびに立ち上がりカツ丼とダンスを踊った。

ナイスロケーションだが、落ち着いては食べられず。

ほどなくして友人が到着し、テントやテーブルなどの設営に取り掛かる。
大強風で苦戦するものの私は早々に設営を終え、テント設営2回目の友人を微笑ましく見守る。手こずっていれば手こずっているほど、説明書を読んでいれば読んでいるほど嬉しくなる。前回よりも早く立てられたようだ。

まだ夕食には早かったので、何をするでもなく椅子に座って琵琶湖を眺める。雲ひとつない晴天とはいかないものの、それでも外でゆっくりするのは本当に気持ちが良い。名古屋からやってきた友人が買ってきてくれた知立市名物のあんまきを頬張る。意識的に脇や股の設置面を減らし、体に風を通しながら遠い目で「ええなぁ」と呟いた。

斜陽の琵琶湖。風も心地良い。

17時ごろになり、薄暗くなりはじめたので、料理の準備に取り掛かる。料理はすべて私が担当するので、焚き火の準備は友人に丸投げした。

一品目はもう定番で、友人からもリクエストのあった「トマトとアボカドのはちみつサラダ」だ。トマトをくし型にカットし、種を取り外したアボカドを半月にスライスしていく。基本極小なまな板とナイフしか持って行かないので種の取り外しには苦労する。トマトとアボカドを皿に盛って、オリーブオイル、はちみつ、ハーブソルトをかけたら完成だ。
キャンプでは手がネッチョリでなかなか盛り付けにはこだわれないが、シンプルでとってもうまい。友人おみやげのチーズ入りはんぺんとともにジョッキ生をプシュッとあけて、キャンプの夜をはじめた。

料理写真はなかなか撮る余裕がない。無念。


次に「よだれ鶏」を作る。
耐熱性のあるアイラップに鶏もも1枚と塩、生姜スライスを投入。料理酒はないので、ワンカップから少量拝借した。これを熱湯に入れて放置しておくと20〜25分くらいでプルプルで良い感じに仕上がるのだが、強風過ぎて鍋が冷えてうまくいかない。やはり風防が必要だなと改めて感じる。
結局弱火でちょっと煮込んだりして1時間近くかかってしまった。少し硬くなってしまった感はあるが、まずまずの仕上がりだ。

そこに生姜とネギの微塵切り、ニンニクチューブ、砕きカシューナッツ、塩、山椒醤油、酢、はちみつ、水で作ったタレをかける。見た目は中華料理屋のそれと遜色ない。じゅるりと食べれば良い感じ。鍋が汚れないのもキャンプ向きだと思うんだよな。外で作る場合にかかる時間をもう少し考えて、しっかりしたレシピにしよう。タレのバリエーションももっといけるな。


その後、これまた友人が買ってきてくれた岐阜名物の「けいちゃん」を楽しむ。店によって使う肉の部位やタレにかなり違いがあるようだが、今回買ってきてくれたのは胸肉の削ぎ切りっぽい感じのしょうゆと味噌の2種類。
味噌味のものとキャベツ・玉ねぎを一緒に炒めてみた。亀山のホルモン味噌焼き的な濃い味かと思っていたので、そのあっさり加減に拍子抜けしてしまったが、何度か味わっているとこれはこれでいつまでも食べられる感じでなかなかうまい。ご当地メシを味わうのは楽しいものである。

秋鮭ときのこでホイル焼きっぽくしようと思っていたのだが、まぁ順当にホイルを忘れてしまったので、けいちゃん醤油味を使って鍋にすることにした。玉ねぎ、キャベツ、しめじ、エリンギ、えのきにけいちゃんを入れて、上から鮭を2切れのせて蓋をする。ついでによだれ鶏を作った時に出た鶏スープの処理にも困っていたので、投入しておいた。気温はそこまで低くはないのだが、強風過ぎてもこもこしたものを着込まないとかなり寒いレベルだったので、非常に沁みる。良いメインとなった。


メインはパスタを考えていたが、けいちゃんを持ってきてくれたので、食べ切れないなと思ったので、やめておいた。最後にけいちゃん鍋をつつきながら、秋の味覚里芋をメスティンでシンプルに蒸し上げる。蒸し上がれば少し表面を押し潰すように皮を剥き、立ち昇る湯気ごと食べる。やはりシンプルに勝る料理はない。味としてはねっとりしたじゃがいもという感じ。塩を振ったり、バターをのせたりしてもよいが、何もつけなくても全然うまい。これもいいなぁ。

あとはもうダラダラと焚き火を眺めながら飲み続けるだけだ。たいして会話するわけでもないが、星空を見上げるたびに天気の話を何度も繰り返す。キャンプでは天気が目まぐるしく変わる。晴れ、曇り、雨などのおおまかな分類だけでなく、雲の量がとても気になるのだ。雲の切れ間から星がちらっと見える時間帯や、雲ひとつない時間帯が次々訪れる。そんな変化を感じられるのも醍醐味なのだ。そしてさらに謎の花火が対岸で打ち上がった。30発くらいは上がっただろうか。夏が最後の力を振り絞ったかのように儚く可憐な一瞬だった。まだ微妙に感じていた夏の気配が綺麗に消えた。

テントに入ると風がないのでまったく寒くない。もう私のテントは築10年を超えているのでそろそろ結構カビ臭く、ガタがきているが、それでも安心感のある基地だ。少しだけ海外サッカー情報をチェックして眠りについた。


朝は6時に起きた。穴ぐらから出る熊のようにテントからのそのそと抜け出し、朝の空気を体の表面積をマックスに高めて受ける。最高の気分だ。歯磨きをしながら湖を眺め、しばし一人の時間を満喫する。少し曇り気味だが、徐々に晴れてきた。良い具合に湖側の雲はどこかへ行った。

青い。朝のこの一瞬をとても楽しみにしている。

朝飯はカップ麺で済まそうと思っていたが、昨日食べ切れなかったパスタ、シャウエッセン、残り野菜などがあるので、簡単にワンポットパスタを作ることにする。
残り野菜とシャウエッセンを斜め細切りにしたものを塩とニンニクチューブを入れて炒め、そこに水を投入する。早くパスタを入れると前日の夜のようにお湯の温度がなかなか上がず茹で過ぎになりそうだったので、しっかりと沸騰させてから投入した。
最後は強火で水分を飛ばし、山椒醤油を少し回しかける。おニューのエナメル皿に盛り付けると良い感じ。ブラックペッパーとパセリを振りかけて完成だ。なかなか良いんではなかろうか。

残り野菜ペペロン。朝から食事をしっかり楽しむ。

のっそり起きてきた友人に秒でパスタを提供する。普通にはうまくできたので良かった。キウイを切り、朝の要素を補完する。朝の爽やかな空気と相まって脂が浄化されていく心地がする。


日差しが暑いくらいだったので、フェンスにテントや寝袋を干して、しばしなにもせずに過ごす。この後の予定を考え、私が以前から気になっていたスポットに付き合ってもらうことにする。ちょっと長くなってしまったので、そのことは別記事で書くとしよう。

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