一般社団法人officeドーナツトーク代表・田中俊英

一般社団法人officeドーナツトーク代表です。

一般社団法人officeドーナツトーク代表・田中俊英

一般社団法人officeドーナツトーク代表です。

マガジン

  • みかん🍊クラブ vol.1

    • 527本

    共同親権・共同養育・子どもの権利の理解・周知に取り組む同志が集って,あったかい心(親心🍊)で発信していきます RKのエッセイ 共同親権イベントの報告(ネットより) 共同親権裁判の報告(同上) 別居親当事者のみなさんのリレーエッセイ ドーナツトークの田中さん・石井さんの過去記事 同居母の眼差し etc

  • 水滴のすべて

    一般社団法人officeドーナツトーク代表の田中俊英は趣味で小説を書いており、これまで短編集と中編集を1冊ずつ書きました。いずれも本noteに掲載しています(短編集はリアル単行本化も)。 本作は3冊目の作品で、初の長編、実験小説です。

  • 修士論文(コピー)『心的外傷と反復』

    田中の、大阪大学「臨床哲学」修士論文です(03年執筆)。ドゥルーズ、フロイト、ハーマンの外傷論を同時に論じるという、かなりの荒業テキストです。 元データがパソコン買い替え時に消えてしまったので、紙論文をそのままコピーしています。だいぶ読みにくいですが、ご容赦くださいね。「哲学とPTSD」を考えるとき、多少の参考文献にはなると思います。

  • こころの湖

    一般社団法人officeドーナツトーク代表の田中俊英が、2021年の春に書いた短編小説18本をひとつの短めの長編/noteマガジンにまとめました♪ 哲学恋愛小説です😀

  • その2点を線でつなぎなさい〜nineteen Stories

    田中俊英(一般社団法人officeドーナツトーク代表)が、仕事の息抜きに短編小説を書いています。1本の長さは、最短で800字、最長でも4000字です。2020年8月、19storiesとしてようやく完結しました。 紙本としても出版したので(有料)、ご関心ある方は以下をご参照ください😀 https://booth.pm/ja/items/2692535

最近の記事

劣化する支援/NPOのすべて

情熱のポリティカルコレクトネス、その弱点2017-04-07 Yahoo!ニュース個人より ■20 代の編集者時代 あれは僕が 23 才の時、友人の松本くんが「市民目線の医療雑誌をつくろう! 」と燃えて僕も同調し、さいろ社 (当時は別名だったが)という独立系出版社を共につくった。今風に言うと、出版社を「起業」した。 広告を一切載せず読者からの購読料のみで運営したため経営はたいへんだったが、スポンサーを意識せずに好き な特集を組めるため、さいろ社は徐々に評価され始めた。

    • 幽霊の手

      翌朝、ふたりは早く出発したが、昼間、ふたりとも一度は見ておきたかった古い神社に寄ってしまった。 その神社は広く、途中、たくさんの鹿がいる場所もあった。ヒカリはその鹿たちを見てびっくりしてしまい、先輩の腕をとっさにつかんでしまった。 先輩はヒカリの仕草にびっくりしてしまい、笑いながらも飛び上がった。 「鹿って」とヒカリは飛び上がる先輩を笑いながら見て、言った。「すごく大きいんですね」 「目も大きいな」先輩はヒカリの手を握っていった。 ふたりは、身体と目が大きいオス

      • 灯台から探す

         私が中学生になった時、崖の上のあの灯台へ昇るエスカレーターが完成した。  けれどもそのエスカレーターは有料で、私は誰かを誘う気にはなれなかった。  灯台へ行くか考え込んでいるうちに、パパは肝臓を壊して死んでしまった。  私は自分が想像した以上に、パパのお葬式で泣いてしまったんだ。ママは、Vサインするパパの写真を選んでいた。私も泣きながらVサインしたよ。  エスカレーターに乗ってあの灯台に行ったのは、パパが死んで2年後だった。なぜだか怖いくらいの重力が私たちに襲いかかり、恐

        • もしあなたが雨ならば

          18.もしあなたが雨ならば 死んだあと幽霊になったひかるの父は、そういえば生きていた頃、自分の名前は水星(みずほし)だったことを思い出した。 水星の意識は今は月の裏全体に広がり、そこからなぜか感じてしまう地球の妻と息子の息遣いに身を委ねていた。 そのふたりの息遣いは、時として絶望になることがあった。長く看護していた患者が死んだ時、妻の感情は黒くなり、息も重くなった。そんな時妻は、死んだ自分(水星)を思い出しているようだった。 息子のひかるも、時々、絶望に落ちることがあ

        マガジン

        • みかん🍊クラブ vol.1
          527本
        • 水滴のすべて
          4本
        • 修士論文(コピー)『心的外傷と反復』
          2本
        • こころの湖
          19本
        • その2点を線でつなぎなさい〜nineteen Stories
          19本
        • 家族は「感情のコミュニケーション」〜ファーストプレイスの秘密
          1本

        記事

          渚と雨

          16.水滴の渚 ひかるが音の幽霊である父と出会うことはあまりなかったが〜夜中のトイレ時にわざとらしく廊下の奥で父は「鳴った」〜ひかるの母である光瑠は、それこそ毎日夫が「鳴っている」のを聴いていた。 光瑠は、どんな時に夫の幽霊の音が鳴るのかをこの頃細かく観察していた。 「あの人は」と光瑠は思った。「わたしが仕事で疲れている時なんかに励ましてくれのかしら」 だから光瑠は、病院の夜勤明けの最も疲れている時に夫の音が鳴るのかな、と期待した。 けれども、夫の幽霊の音は早朝にはなかなか

          NPOで金持ちになってどうする?

          □ずっと貧乏 僕は23才で友人の松本君と出版社「さいろ社」を起業した。当時は起業なんていうカッコいい言葉はなかったので、出版社をつくった。 最初は超極貧、松本君とはケンカばかりだった。けれども、出版社をつくるとはそんなもの、僕も彼も季刊で医療問題の雑誌を作りつつ時々単行本も作り、息抜きに「温泉同好会」や「淡水魚研究会」などをつくって楽しんだ。 2年くらいたった頃だろうか、東京の大手出版社から編集プロダクションの仕事が舞い込み、やっと我々は食べていけるようになったが、その

          バナナブレッドをさがして

          2020年6月1日 09:14 ネットで情報をカナタが集めていると、大島弓子というマンガ家が描いた『バナナブレッドのプディング』という作品をどうしても読みたくなった。カナタはネタバレ情報など気にしないため、ネットでその作品の物語を全部読み、その作品のテーマも知ることができた。が、カナタは勝手に、『バナナブレッドのプディング』をカナタ風に解釈して読んだ。特に、主人公が自分の髪で自分の顔を隠すひとつのコマに魅せられた。 大学1年生の5月の日曜、カナタは自分の大学のある街の繁華街

          その2本の線の間を塗りなさい

          2020年5月24日 10:46 カナタが初めてブランコに乗ったのは3才の頃だったかしら、とアキラは思い出してみた。はしゃぎながらブランコに座るカナタを見てアキラは、その勢いで後ろに倒れて頭を打つのでは、とハラハラした。 だがカナタははしゃいではいるけれども慎重で、母のアキラがブランコに座るカナタの背中を押して初めて、それを前後に揺らし始めた。そのわりにはキャッキャッとはしゃぐので、アキラはその慎重な娘がやはり後ろに倒れるような気がしていた。 カナタは母からそうしたこと

          迷彩と月光のオーバーオール

          迷彩と月光のオーバーオール 2020年7月18日 15:06 迷彩のオーバーオールで先輩がその本屋の入り口に現れ、それから1時間先輩のパリの話を聞き続けながらカナタは、「これで結婚に踏み切れる」と思っていた。 先輩はパリでポルトガル人の女との間に可愛らしい子どもをもうけ、カナタはその写真をずっと見つめていた。子どもは口を尖らせたりブランコに乗っていた。その一枚一枚の写真を先輩は解説し、解説しながら喫茶店で頼んだオムライスのチキンライスのチキンを皿の端っこによけていた。

          洗面器で手をつないで

          延々こだまに乗ってきて、名古屋を過ぎた頃、ふたりの間で「もう一泊したいね」という話がわきおこり、じゃあどこで? となった時、「長浜はどう?」と先輩が言った。 こだまは米原に停車する。新幹線をそこで降り、長浜には在来線ですぐそこだ。先輩が示すiPadをふたりは見ながら、 「長浜から島に行ける、行きたい」 ということで一致した。 長浜から船で30分程のその小島には小さな社があった。ヒカリはまだ行ったことがなかった。先輩は対岸の今津から一度行ったことがあるらしいが、長浜からは未

          ふたりのクロール

          その翌日から再びふたりは何でもしゃべることができた。昨日までの沈黙が嘘のように、なにも考えずにふたりは見たこと感じたことを話した。それは、頭でしゃべるというよりは、ハートでしゃべる、みたいな感じだった。 芸術の島を離れる際、ふたりは岡山に戻るか四国に渡るか悩んだが、結局「もう一度境港に行ってみたい」と漏らしたヒカリの言葉が決定打となり、岡山行きのフェリーに乗った。 境港に近づいても、あの牛の島にふたりは行く気にはなれなかった。かといってゲゲゲの鬼太郎とネコ娘に会う気にもな

          人々をつつみこむ雨

          雨2022.7.19. Facebookタイムライン 足もすっかり回復し、この週末も前週末よりはだいぶ楽だったので、のんびりと大阪へ。 「雨のような他者」が人々を濡らし包み込むように癒す、というイメージのもと、僕は趣味である(実験長編)小説を書き進めている。 そのような目で、「雨」という言葉を周辺に探っていくと、詩ほかの作品群や日常会話などにも、メタファー的に雨が使われていることが多いと気づいた。小学生の詩などにも登場する。 だがそのほとんどは「自分(たち)を濡らす

          水滴のすべて chapter four

          18.もしあなたが雨ならば 死んだあと幽霊になったひかるの父は、そういえば生きていた頃、自分の名前は水星(みずほし)だったことを思い出した。 水星の意識は今は月の裏全体に広がり、そこからなぜか感じてしまう地球の妻と息子の息遣いに身を委ねていた。 そのふたりの息遣いは、時として絶望になることがあった。長く看護していた患者が死んだ時、妻の感情は黒くなり、息も重くなった。そんな時妻は、死んだ自分(水星)を思い出しているようだった。 息子のひかるも、時々、絶望に落ちることがあ

          水滴

          雫たち 4人はマキノの夏のゲレンデに出て、夏の草の匂いを嗅いだ。草には夜露が乗っていて、一粒ひとつぶに夏の夜の煌めきが浮かび上がっていた。 普通はそんな小さな草の葉っぱに乗った夜露などに気づくことはないが、その夜の4人は違っていた。 「夜露の一粒ひとつぶが音楽を演奏しているようね」と、カナタさんは夫の手を探しながら言った。 「実際、聞こえてくるな」と、夫はカナタさんの手を見つめて自分の手とつないだ。「一粒ひとつぶは小さい音だけど」 「はい、ゲレンデ全体の草が集まって

          海王星の出来事

          ♯海王星「もしかして、あなた、カホ?」と聞いたのがカナタだった。さっきからカナタは変だ変だと思っていたものの、その女性の何が変なのかが実感できなかった。 でもやっと、わかったのだった。カホ(海王)こそ、カナタが大学生の頃、京都の丸善で大島弓子の本を思わずプレゼントしてしまった女性だった。 「バレました?」カホはアニメのキャラクターのように舌を少し出して自分の頭を撫でた。「ずっとドキドキしていたよ」 カナタとカホは、丸善で出会ってから10年ほど、ずっとメールで交流してきた

          恋は終わらない

          ひかるの母は光瑠という名だった。読みはひかると同じだったので、彼はよく自分の父母に、 「別の名前にしてほしかったなあ」 と愚痴をこぼしていた。そう言われと父は、 「ドリーファンクジュニアみたいでいいだろう?」と、昔全日本プロレスによく来日していたプロレスラーの名前をあげて笑った。 ママの光瑠は、 「あら、わたしは気に入っているのよ」と言って、これまた笑った。「宇多田のファンだし」 そんな父母はいつもオプティミズムとともにあった。それは、父が癌で死んだあとも同じで