「やりたいこと」より「関心」の方がその人をよく表している
今までなんとなく使ってきた言葉が、ある時突如重みを持ってくることがあります。今日はそのあたりについて書いてみます。
とある会社での会話にて
先日、サイボウズのマーケティングの小さな勉強会でこんな会話がありました。
「自分の仕事がチームにどう貢献できていると嬉しいか」
同じマーケティングの部署にいても何が嬉しいのか、意外に違っていました。
・数字が上がると、自分の仕事が貢献できたように感じる。
・依頼者から「ありがとう」と言われると嬉しい。
・社会的インパクトをどれだけ与えられたか?
などなど。
「何がやりたい?」という質問をすると「認知を増やすための〇〇の施策をやりたい」「売上につながる、少し販売に近い仕事をやりたい」とか、マーケティングをやっているとそれほど大きく違わない回答が返ってくるかもしれません。
が、「何が嬉しいのか?」「何に喜びますか?」という質問だと、同じ目標を達成するにしても、人によって様々な「喜びポイント」があるのだな、と思いました。
最近「関心」について考えています。
私、最近、EMS(エッセンシャル・マネジメント・スクール)というところで学んでまして、その中で「関心」とは?ということをこの3か月くらい考えてきました。
エッセンシャル・マネジメント・スクールとは、早稲田大学のMBAの講師などもされ、「ふんばろう東日本プロジェクト」などを設立された、西條剛央先生が開講したスクールです。(サイボウズの青野さんや、さくらインターネットの田中さん、eumo 新井さんなどが理事をされてます)
このスクールで学ぶものの中で、「価値の原理」という言葉に出会いました。
西條先生によると
「価値は欲望、目的、関心に相関的に(応じて)立ち現れる」
ものであり、例えば、普段目にする水たまりは邪魔なもの、避けたいものであるが、震災時などの非常時は貴重な水源となる、つまりその時々の状況・関心に従って価値は変わっていく、という考え方です。
「価値の原理」も「関心」も最初は「ふーん」という感じで、確かにそうなのだが、当たり前すぎてどう適用するといいのか?自分の日常の中でどう生かしていけばいいのか、イマイチ理解できずにいましたが、少しずつ自分のなかで「あ、なるほど」と思うことが増えてきました。
なぜ「関心」に着目するのか?
日常的に他人と会話したり、それこそテレビなどで流されるニュースを見るたび、およそロジカルに考えるとそういう行動はしない、そういう結論には至らないだろう、というものを見ることがあります。
それがいいか悪いかとは別に、また瞬間的な感情とも違い、人を動かす原理は思考とは別のところにあるのではないか?とボヤっと思っていたことがあります。(そのこと自体もこれまであまり言語化できておりませんでした。)
自分なりには、そうした「考えても理解できないこと、行動」を説明するものとして、あるとき「関心」という言葉に行きつきました。
関心とは何か?
「関心」について、西條先生の解説では
「自然にできるもの。お金を払ってでもやりたいもの。長く続けることができる事というのは、それを続ける能力もあるが、関心高いことが一番の理由」
そういうことが言われていました。
もう少し、自分の解釈も付け加えると
・自分が先天的にか、後天的にかわからないが、方向づけられるもの
・いい悪いではない、ただそこにある(その人が持っている)
・お金をもらわなくても、自分を動かす駆動力
・時間を忘れて没頭し続けられる
そういう性質のものなのだろう、と思います。
「やりたいこと」とは違うのか?
「やりたいこと」と「関心」はちょっと違うように思います。「やりたいこと」と言うと、「やりたいこと(will)」「できること(can)」「すべきこと(must)」などで表現されて、人と仕事のマッチングや成長支援に際して使われるフレームですが、どうもこのフレームで表現できない領域に思います。
似ているようでちょっと違う、そんな感じです。
自分のなかで考えていることとしては、
「やりたいこと」
→関心あるもののなかで、社会的に受け入れられていて、達成したいこと・達成するための手段がセットになったもの
「関心」
→善悪はなく、ただ心が持つ方向性、嬉しいもの。本能ではないものの自分でも理由が説明できない志向性
そのように思います。
「やりたいこと」だとチームや社会にとって有意義な方向性が前提になるように思いますが、「関心」の方は、もう少し社会や他人の役に立たない、害をなすような、もっといろいろな「関心」があるように思います。
「関心」が重要な理由
仕事をする上で、メンバーの方に「何がやりたい?」と聞くことがありますが、実のところこれを即答で綺麗に回答できる人はそれほど多くないように思っています。自分もあまりそこはうまく言えません。
もしかすると、「関心あること」「達成できると嬉しい事」「お金をもらわなくてもやりたいこと」「時間を忘れてできること」「普段気が付くとやっていること」「こんな種類の情報を集めてます」など、いろいろな質問の仕方で「関心」を探ると、その人のことがより理解できそうに思います。
「関心」と「やりたいこと」の関係で言うと、「関心」の方がより広くて、「やりたいこと」はもしかしたら「関心」のなかで、社会、会社、チームの方向性と比較的マッチしているもの、という関係性かもしれません。
「関心」を聞いた方が、その人の「目に見える動きの背景」をより的確に理解できそうに思います。これを言語化して、公開するかどうかはともかく、その人の「関心」についてお互い握っておけると、どんな仕事をお願いできるのか、どんな仕事は興味無さそうなのか(^-^;、そうしたことがわかるように思います。
ただ、「関心と仕事のマッチング」ということで言うと、結構難易度は高いかもしれません。
チームとして解決したい課題と仕事のマッチングだと、チーム的には役に立つものですが、個人の関心とは必ずしもマッチングしない可能性がある。個人の「関心」をベースに仕事のアサインを考えると、どうもチームの課題解決まで行かないかもしれない。
もしかしたら、個人の「関心」を満たす活動は、会社の枠組みの中だけで解決できるものでもないかもしれない。人によってはそちらの割合が多いかもしれない。なかなかバランスが難しいところです。
ただ、日常的に自分が、他人が、どんなものに関心を持って反応するのか、例えば数字に反応する人なのか、定性情報に反応する人なのか、などをお互いに知り合うと、その人が「なぜそう考えるのか?」ということが理解しやすくなる、スムーズにコミュニケーションが取れる、まずはこの部分だけでも重要と思います。
身近な人が何に関心を持っているのか、どんなことなら時間を忘れて没頭できるのか、探っていくといろいろ新しい発見があるかもしれません。
おわります。
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