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日本的な評価制度の中、リモート環境でどう人事評価するか?

先日、とある社員の方から「リモートワークになって人事評価のやり方は変わったか?」という質問をいただきました。セミナーなどでもお客さんから質問もあるようで、リモートならではのやり方、ポイントがあれば、ということだったようです。

で、私の答えは「いや、、、特に変わりません、、、」

お客さんに提案できる何かを期待していた社員の方の方にはネタが無くて大変申し訳なかったのですが、私的には特には変わってません。

その方によると、リモートワークになって意図的にプロセスを確認する仕組みや、成果を管理する仕組みを取り入れていたら、何か記事のネタになったようで。。。

リモートワークになって一般的に言われることとして

・社員の活動の様子が見えなくなった
・見えないものが増えてどう評価していいかわからない

などがあります。

サイボウズでも上記のような状況に対して、私たちなりの対応をしてきましたが、今日はそのあたりについて書いてみます。

リアル出社環境ではどのように評価してたのか?

そもそも人事評価をどうしていたのか、というところですが、大きく言えばサイボウズも比較的多くの日本企業と同様な評価をしていると思います。(そういうと、人事の方に怒られそうですが(^-^;)

日本の一般的な評価方法としては「職務能力による評価」というところと思います。ざっくり言うと

・業績+人物評価(能力、潜在力を見る)
・職務でお給料を決めているわけではない

という形かと思います。具体的には

・業務の遂行能力
・コミュニケーション
・チームへの貢献度

などを見ているのではないかと。(このあたり詳細は各社違うと思いますが)

これに加えて、目標管理だったり、業績など数字で測れるものも組み合わせて、最後は「総合的に判断する」というところになります。

この記事では相当に簡略化して書いてますが、日本的な人事制度や評価方式とは何ぞや、というのはいろいろ深い考えや経緯があり、これらをもっとよく知るには、このあたりの本が分かりやすくて良いと思います。(さらに人事の方向けの専門書などもあると思いますが)

日本企業の場合は職務に対して値段を付けているのではなくて、一部歩合制の職種などを除くと人物に対して値段を付けるというやり方が一般的だと思いますので、多くの日本企業ではどこまで行っても定性情報、特に仕事のプロセスだったり、職場内の定性情報を元に評価をすることになると思います。

人物に対する評価になると、ある意味「印象」もそれなりのウエイトを占めることになります。そうすると「たまたま視界に入る」「たまたま耳に入る」情報だったり、チーム活動に積極的に関わるなどの「がんばり」なども、評価するうえでそれなりの意味を持つことになります。

「リモートワークなることによって社員の動きが見えなくなる」ということになると、特に日本企業の場合は評価はもちろんのこと、そもそも日常の業務活動にも支障が出てくるはずです。

リモート環境で見えなくなったもの

リモート環境だとどういう状況が発生するのか?リモートワークになって最初に実感するのは「用があるときだけコミュニケーションが発生する」という環境です。

リモートワークの進展に伴って、ビデオ会議が急速に普及したり、メールでのやりとりが増えた方も多いでしょうし、業務関連のSaaSの普及も大きく進みました。

しかし、よくよく考えるとこうしたツールでの業務・コミュニケーションは「用があるときだけ(会議含む)」がメインになると思います。さすがに用がないのにビデオ会議したり、メールしたり、というのはあまりないですよね。

すると先に述べたような「たまたま視界に入る、聞こえてくる会話」だったり「直接自分に関わるわけではないちょっとしたチーム業務の状況」みたいな情報は入手しづらくなります。

このような情報は、無駄な情報かもしれないし、知っていれば何かできたはず、という情報ですね。こうした情報は「用があるときだけ」コミュニケーションしていると全く入らなくなる、見えなくなります。

見えない情報が増えたときにどうするか?

では、どうするか?というところなのですが、グラデーションはありながらも以下のような方法になるのではないでしょうか?

①リアルに出社する
②目標管理を徹底する、成果主義的に変える
③行動を監視する(すべての行動のログを追う)
④見えなかったものを見えるようにする

③と④は似ているようですが、③は管理側の観点で見えるようにするのに対して、④は社員の方の自発的な意思で見える化するのがポイントです。

①リアルに出社する、というのが一番元通りでやりやすいのかもしれませんが、特に若い方を中心にリモートを好む人もいるでしょうし、社員の定着を考えると長期的にはあまりうまい方法ではないかもしれません。

②目標管理の徹底、成果主義の導入(歩合制なども含む)などをすでに行っている企業は実はリモートワークの導入は難しくないかもしれません。「計測できるものに対して評価をする」ということですと、リモートであっても無くても評価する内容は変わらないからです。

③はもちろん原理的には可能ですが、全てを管理し、全て目を通すのは、途方もない工数を要すると思います。

④見えるようにする、については後ほど記載します。

いまから評価方法変えるのは難しい

先に述べたように、元々、成果主義、歩合制などを実施している会社がリモートにするのはそれほど難しくないかもしれません。しかしながら、今それをやってない企業、人物評価中心の企業が、厳密な目標管理や成果主義を取り入れる、というのは一大事業になると思われます。また、急激な評価制度の変更は社員の方の反発も予想されます。

たまたま聞いた話からわかる業務のプロセスや進め方、その他一人一人に関する様々な情報を総合的に勘案して評価している企業にとっては、職務や目標を詳細に定義し実施するというのは難易度が高いと思われます。

それよりは、今の評価制度にマッチするようにどうリモートワークを運営するか?を考え実行する方が現実的と言えます。

「今まで評価していたポイント」がリモートワークでも引き続き見えるようにするにはどうすればいいか?ここが考えどころです。

では、「たまたま」を見える化するのはどうだろう?

サイボウズはグループウェアを作っている会社なので、グループウェア上で④「見えるようにする」というアプローチをとっています。もともとそういう文化があったのですが、コロナ禍によるリモートワーク開始以降、さらにコミュニケーションがグループウェア上に移行しました。

私個人としては、コミュニケーションがグループウェア上に上がったことで、実はそれ以前よりもいろいろな情報が見えるようになりました。

結果的には得られる情報が増えたこともあり、コロナの前と後では評価方法が変わったわけではありません。

グループウェアの利点としては

〇 業務上の複雑なやりとり、ちょっとした質問と回答、たわいもない会話、冗談まで、よくも悪くも様々な情報をグループウェア上で見ることができる。
〇 部署ごと、プロジェクトごとの専用の「場」を用意できて、アクセス権をうまく設定すれば、自分が直接かかわっていない関係者間のやりとりも見ることができる(メールと大きく違うのはここです)
〇 どんな会社でも「社内の情報通」みたいな人がいると思いますが、グループウェア上でも、情報処理能力が高く様々な部署やプロジェクトの情報に通じている「情報通」が生まれます。その人にいろいろ教えてもらうのもよいです。

などがあります。

ただ、正直なところ、「見えるようになる」という目的が達成できれば、ツールは何でもいいのかもしれないです。それこそ、自分の部署の人たちについては「全員一日中ビデオ会議つなぎっぱなしで、顔を合わせる」でもいいのかもしれないし、チャットツールでもいいのかもしれません。(ビデオ会議の常時接続は、それはそれでストレスになるかもしれませんが)

重要なことは、その人を知る、その人を評価するために、その人が安心して書く、表現できる環境を作ること。口頭での会話もそうですが、話していいこと悪いことが厳密に決まっている環境、チームだと、いずれにしてもその人を知ることができるような会話は生まれません。

口頭では許されるいろいろなやりとりは、そのまま別の環境(グループウェアなど)でも許されるべきだと思います。職場環境と同様に、「安心して仕事ができる場」を作ることが重要です。

これをいきなり全社展開するのはさすがに難しい、という場合には、まずは自分の部署で始めてみる、問題ないことを確認して起案してみる、ということでもよいと思います。

ちなみに、サイボウズにおけるグループウェアを利用したハイブリッドワークについてのノウハウはこちらにめちゃくちゃ詳しく書いてます。参考になれば幸いです。

おわりに
私的な結論としては、評価制度そのものを変えるのは相当にしんどい、なので、今どんな情報を持って評価しているか、その情報を社員の人が気軽に、進んで出してくれる環境をリモートであっても作ることが重要と思います。

もともと、同じ部屋で机をならべてコミュニケーションしながら仕事をしていた私たちは何かしらの仕事の「場」が必要です。それぞれの会社に合った「場」が作られていけば、リモートワークもそう怖くないかもしれません。

おわります。

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