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ニヒルな旅をしようじゃないか【ディズニーシーレポ①】

今度、ディズニーシーに行くことになりました。折角なので旅のブログを書いてみようかなと思い立ったわけです。

それでもただ書くのは面白くないので、これは便宜上「たみふるD流の最強ディズニーシーガイド」みたいな感じにしたいと思っています。それも、具体的なイメージとしては「ディズニー映画・キャラクターに疎い一介のサブカルオタクがおもしろがりながら一人で遊ぶディズニーシー」というイメージです。
そういうわけで、全3回でお贈りする「ディズニーシーレポ」。第1回は「心の準備編」です。

ディズニーシーってなあに?

まず、ディズニーシーとはどういうところなんでしょうか。

海にまつわる物語、伝説からインスピレーションを得たこのパークには、冒険とイマジネーションにあふれる個性豊かな7つのテーマポートがあります。
それぞれのテーマポートにはテーマに合わせた様々なアトラクションやレストランなどがあり、歩くたびに時間や空間を超える体験は世界中のディズニーテーマパークで、ここでしかできないものです。
『【公式】7つのテーマポート | 東京ディズニーリゾート』

なんかすごいことが書いてありますね。

2001年にオープンした東京ディズニーシーは、千葉県浦安市の舞浜エリアにそびえたつテーマパークです。1983年にできた東京ディズニーランドの弟分といった具合でしょうか。

ディズニーシーをどう捉えるか問題

そういうわけで、「ディズニーシーってなあに?」と聞かれてもこれはもう答えられません。ポケモンの数だけの夢があり、ポケモンの数だけの出会いがあるわけですから、人の数だけディズニーシーがあります。たみふるDは、東京ディズニーシーをどう読んだらおもしろいと思ってるんでしょうか。だいたい、こんな感じです。

ひょっとしたら、「ディズニーランドではない方のディズニー」という認識の方もいるかもしれませんね。いわゆる「じゃない方」ですね。それはある意味で正しくて、東京ディズニーシーは東京ディズニーランドと大きく違うと言っても過言ではありません。

まず、東京ディズニーシーはどうやら「テーマパーク」らしいです。テーマパークというのは「主題テーマを持った公園パーク」ということ。遊園地でありながら、それぞれの遊具には物語がついているという仕組みです。そして、物語についているそれぞれのテーマごとに施設がまとめられているわけです。例えば、東京ディズニーランドのトゥモローランドは「未来」がテーマ、ウエスタンランドは「西部劇」がテーマのアトラクションやレストランやお店が集められたエリア。

ところが、これが曲者です。東京ディズニーランドと東京ディズニーシーは、この「テーマ」に対する解釈が根本的に食い違っています。やれ、困ったぞ。

東京ディズニーランドはテーマに「概念」や「思想」を持ってきます。テーマランド=土地なわけです。なぜなら、東京ディズニーランドのモデルは1955年にオープンしたカリフォルニアのディズニーランドで、これはウォルト・ディズニーというディズニーブランドの開祖が作ったからです。例えば、トゥモローランドのテーマは未来だと言いましたが、これはつまりウォルトおじさんが思い描く未来です。
そのため、「アトラクションを先に作って、それがどのエリアに属するか」ということがしばしば起こります。マジックキングダムというディズニーランド本気版みたいなパークが、フロリダに1971年にオープンしました。ここにはリバティ・スクエアというエリアがあって、東京ディズニーランドのウエスタンランドとワールドバザールを足して2で割ったようなエリアです。それで、みなさんご存知の「ホーンテッドマンション」は実はリバティ・スクエアのアトラクションなんですね。テーマランドというのは「映画ジャンル」みたいなものです。アクション映画の中にもラブストーリーがあったりしますよね。そういうハッシュタグ制なのがディズニーランドです。

では、東京ディズニーシーってのはなんなんでしょう? これはテーマに「物語」を持ってきます。ウォルトおじさんの死後に作られたテーマパークです。例えばアメリカンウォーターフロントは「船乗り同士、アメリカ東海岸、1912年。何も起きないはずがなく…」というテーマです。だから、アトラクションを作るときは「1912年のニューヨーク」という設定に合わせてストーリーを作ります。
つまり、物語の舞台に合わせて集めているんですね。テーマエリアのことを東京ディズニーシーではテーマポート=港と呼んでいて、それぞれの土地には成り立ちの物語があり、今の姿があり、有名人がいる。我々はアトラクションやレストランを通してその世界での出来事を体験する。これが東京ディズニーシーと言えるんじゃなかろうかと。

ディズニーシーを旅する

そういうわけで、ディズニーシーの一番の醍醐味は、「遊ぶ」ことというよりもむしろ「旅する」ことでしょう。七つのテーマポートは、それぞれがひとつの街として、観光地として成立しているわけです。それは、東京観光とか京都観光と同じような感覚で、東京ディズニーシーは歩けるということです。

例えばメディテレーニアンハーバーというのは、1901年南欧が舞台となっています。まず、土地を所有するザンビーニ・ファミリーというのがいます。いわゆるメディチ家みたいなノリ。そして、国の王様であるダニエラ姫がおり、彼女の冒険譚から引用して、港にはポルト・パラディーゾと名付けられています。また、スペイン王から譲渡された要塞には探検家・冒険家学会ことS.E.A.のメンバーが集います。
時系列を追って見てみましょう。まず、ザンビーニの先祖はここでワインとオリーブオイルの製造を開始したために、この地へ商人が次から次へとやってきます。また、要塞にやってくる科学者や旅人のために、彼らの別荘であった「ホテルミラコスタ」を貸し出します。要塞には、フェルディナンド・マゼランの名を冠した「マゼランズ」という隠れ家があります。また、ザンビーニの家はファンタスティック・フライト・ミュージアム建設のために土地を貸しております。ファルコ・ファミリーが運営しているこの博物館には「ソアリン:ファンタスティック・フライト」のアトラクションで入れます。この博物館は現在、S.E.A.が運営を引き継いでいます。そして、ザンビーニ・ファミリーの出発点となったワイナリーは改装され、ザンビーニ三兄弟によって「ザンビーニ・ブラザーズ・リストランテ」が運営されています。

そういうふうに建物は増築と改築を繰り返し、歴史が積み重なっているんですね。東京ディズニーランドと違って、東京ディズニーシーは階段やスロープが沢山あります。そして、メインになる大通りと側道があって、そこにはレストランがひっそりと営業していたりします。そういう、見知らぬ土地を観光にやってくる楽しみがあるのが東京ディズニーシーってなわけです。

もちろん、ビーチに向かって駆けていくような遊び方ももちろん東京ディズニーシーではできます。ディズニーのテーマパークとしてはいちおう作られていますからね。でもでも、たまにはドリンク片手に浜辺で寛ぎたいものです。ディズニーシーをおもしろがる基本スタンスはこれが良いと個人的には思います。ディズニーシーでは旅をしたい。遊ぼうとはあんまり思わない。もうはしゃぐような元気はないので、ゆっくりさせてください。へい。東京ディズニーシーというのはそういう感じです。

ディズニーシーは何が言いたいのか?

さて、東京ディズニーシーはそういうわけでより現実世界に即していると言った方が良いでしょう。「夢の国」なんてことは言ってられないわけです。さっきアメリカンウォーターフロントの舞台は1912年と言いましたが、これは言い換えれば2年後に第一次世界大戦が始まるということです。そして、植民地支配の思想が随所に見られて、アトラクションはだいたいバッドエンドを迎えます。うん、こう書くと結構酷いですね。

例えば「タワー・オブ・テラー」なんてのは東京ディズニーシーの暗さの代表例でしょう。ホテル・ハイタワーのオーナーであるハリソン・ハイタワー三世は、アフリカの秘境で手に入れた呪いの偶像を馬鹿にした罰として、永遠に恐怖を繰り返す運命になった……。暗い、あまりにも暗い。ハイタワー三世は傲慢で邪智暴虐な人物として描かれていつつ、そのことはあまり表には出てきません。
この「タワー・オブ・テラー」に限らず、「インディ・ジョーンズ®︎・アドベンチャー:クリスタルスカルの魔宮」も「センター・オブ・ジ・アース」も「海底2万マイル」も、あの「マジックランプシアター」でさえ、人間は目先の利益や科学の進歩にあぐらをかいて自然や超常現象の餌食となって散っていくわけです。東京ディズニーシーの物語はどう考えても狂っている。いや、狂ってるってのは言い過ぎでしょうが、冷静に考えても明るく楽しいファミリーのためのファンタジーじゃあないでしょう。

ニヒルな旅をしようじゃないか

つまり、東京ディズニーシーの旅はニヒリズムとの戦いと言えるのです。

圧倒的な自然の力──特に海の力──の前に人間は無力である。跪き給へ。君死に給へ。そういう圧力をめちゃくちゃ背中に感じる場所です。
そして、東京ディズニーシーの旅では、そうした圧力をどうやり過ごすかが鍵となるわけで、そこに人の個性が出るのです。

例えば、「圧力に屈しない!」という道。先ほども紹介した通り、東京ディズニーシーには架空の学会であるS.E.A.があります。プトレマイオスからレオナルド・ダ・ヴィンチまで、名だたる学者が名誉会員となっております。そして、このS.E.A.とはSociety of Explorers and Adventurers「探検家・冒険家学会」の略称で、冒険家もいる。クリストファー・コロンブス、フェルディナンド・マゼランなど、悪名高き侵略者たちが東京ディズニーシーで英雄とされるのはつまり、「冒険」したからでしょう。侵略は良くない、それは事実として、「航海に出よう」という勇気くらいは認めてやろうぜというのが東京ディズニーシーの方針です。

あるいは、「圧力大変だけど、うちらは好きにやろうや」という道。これまで東京ディズニーシーの厳しさに触れてきましたが、もちろん優しさもあります。
東京ディズニーシーはロマンチックを目指しているわけですね。例えば、「イタリアのヴェネツィア、運河に面したテラスで石窯ピザを食べる」とか、「人魚と人間の和解したのち、海の底の世界に遊びに行く」とか、そういうロマンスもやってくれるわけです。そこでは、海の優しさに触れ、感動することでしょう。

ニーチェの言葉で「神は死んだ」というのがあります。「無条件に信頼できるものは最早何もかも存在しない」みたいな意味です。ちょうどS.E.A.は、国境を超えて宗教を超えて文化を超えて、純粋な目で科学をしようという心意気があります。また、ディズニーシーでロマンスをやるにつけ、あれこれ思索にふける中でふと、世界がすべて2001年製のフィクションであることにも気付きます。
こういう瞬間の到来は、日常の中でのそれ以上に際立って、耐え難い喜びがあります。そして、その手前で、科学を信奉していることや現代を信用していることにも気づいて、また嫌になります。そういうどうしようもない絶望にどう抗うか。東京ディズニーシーのおもしろみはそういうところにあると思います。

卑屈で、残酷で、ドラマティックなディズニーシー

さて、そういうわけで東京ディズニーシーの楽しみ方、言い換えれば「心の準備」についてお話ししてきました。東京ディズニーシーはニヒルに楽しむのが乙だと個人的には思っています。あえて強調してますが、“個人的には”、ね。

ディズニーランドは、甘美で牧歌的な夢と魔法の王国です。もちろんそれ一辺倒ではないのですが、守られた世界でアメリカの歴史を讃えています。東京にやってきたにつけ、やや遊び場として整備されている側面もあるので、楽しく遊ぶことがきでます。ディズニーランドは割合に「大人も童心に帰る場所」みたいな言われ方をすることが多いんですね。「すべてのものはピュアである」と素晴らしい理想を──あるいは夢物語という人もいるかもしれませんが──掲げているそれはもう素晴らしい場所です。

親と子供が一緒に楽しめる場所があるべきだ
ディズニーランドの誕生

ウォルト・ディズニーは、毎週末のように幼い2人の娘を連れて動物園や遊園地へ遊びに行っていました。あるとき、娘たちは遊具に乗って楽しんでいるのに、自分はベンチに座ってピーナッツを食べるだけという状況に、おとなと子どもたちが一緒に楽しめる場所を造るべきではないかと考えたのです。ウォルトが考えたディズニーランド計画とその開発には15年という長い年月がかかったといいます。そして、ついに1955年、カリフォルニア州にディズニーランドを完成させたのです。
『【公式】ウォルト・ディズニーの見た夢 | 東京ディズニーリゾート』

ところが東京ディズニーシーというのは、高いメシを食って路地裏をぶらぶらして神殿調査をしてニューヨークの博覧会に出かけるみたいな、そういう口の遊び方ができます。私が東京ディズニーシーに魅力を感じるのは、「大の大人が大人にしかできないやり方でストレス発散している」感じがあるからで、そこには「もう純粋には戻れない」という哀愁が漂うものです。
ひょっとしたら、このnoteは世の中の半分くらいの人には響いてないかもしれません。逆に、もう半分くらいの人にはバッチバチに「その手があったか!」と思ってもらえてると嬉しいです。日常的にマイナス思考になりがちな人、鬱になりがちな人、自己肯定感が低い人にとっては、それをそのまま肯定してくれるのが東京ディズニーシーなわけです。

ところで、私が東京ディズニーシーの魅力をいちばんよく表していると思うのが、2005年に開催された「ドラマティック・ディズニーシー」というイベントです。この記事の内容を完全に忘れても、歌詞が物語っているものが東京ディズニーシーのすべてと言えるんじゃないかって気がします。

All your wishes come true
(すべての願いが叶う)
As we cast a spell on you
(私たちが魔法をかけるとき)
There's a magic, and a power
(魔法があり、力がある)
And a world that's filled with wonder
(驚きに満ちた世界がある)
And this circle of life
(そしてこの命の輪は)
Brings a hope through the night
(夜を超え希望を届ける)
All your wishes come true
(すべての願いが叶う)
Trust your heart and just believe
(心を信頼し、信じよ)

(「BELIEVE!」より 訳は筆者)

次回は、「プランを立てよう編」をお送りします。お楽しみに。TamifuruDでした。

第一回▶︎『ニヒルな旅をしようじゃないか【ディズニーシーレポ①】』
第二回▶︎『ロールプレイをしようじゃないか【ディズニーシーレポ②】』
第三回▶︎『こじつけの美学をこの街で【ディズニーシーレポ③】』

参考になる記事

「競技ディズニー」とでも呼びたくなるような、「なるべく多くのタスクをこなすにはどうするか・すればよかったか」を軸にしたインパレポです。ディズニーシーレポをやろうと思ったのはこの記事の影響。

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こちらはむしろ、「ディズニーランドでどう自分と向き合うか」というもの。そういうことでリンクを掲げて張り出すのはどうかと思いましたが、個人的に今回の旅で目指す方向性はこちらです。

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